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松本いちかのデビュー作をいまさら見る

まえがき

十年をひと昔というならば、わたしがアダルトビデオを見始めたのは、今からふた昔半もまえのことになる。
何千、何万の女性を見てきた。どうしてこんなに見なければならなかったのか。

つねに新しいものを見続ける必要があったのか。あるいはこれだけあればよい、というものを探し続けていたのだろうか。

かつて、カラオケが若者文化の真ん中らへんにあった時代、最新曲を覚えるために、ことさら好きでなくてもシングルCDを買ったり借りたりして、曲を覚える習俗があった。
そんなふうにアダルトビデオを見てきたのだろうか。しかし、AVはカラオケとは違い、楽しみを他人と共有するタイプの娯楽ではない。

わたしのある友人は小説を読まない。しかし「金閣寺」だけは持っていて、それだけを何度も読み返しているそうだ。
金閣寺がなければ、いまも読むべき小説を探し続けていたかもしれない。

わたしのAVもそうなのだろうか。わたしにも間違いなく歴代最高傑作と信じられるAVがあるが、その作品と出会ったのは1997年だ。
それではそれからの24年、さまよい続けたこの荒野は一体なんだったのか。

わからないまま、25年が経った。
そしてようやく、桂木ゆみからはじまったこの道は、松本いちかにたどり着くためのものだったのではないかと思うようになった。

松本いちか

気がつけば、松本いちかは圧倒的な存在だった。
これだけの人数がいれば、外れ値となる圧倒的な存在は生まれない気もするが、松本いちかは圧倒的だ。

松本いちかはどんなランキングを見ても、巨乳や熟女の部門を除いて、だいたい上位にいるから、すでに多くのひとがその魅力をわかっているはず。
だから、どこかがいいとかは言わない。

影響力でいえば、わたしが他の女優に関心をもつことをなくしてしまった。わたしは特定の好きな女優がいた時期でも、その時代のほとんどの女優に興味を持って、幅広く見てきたAV博士タイプだ。
それが松本いちか以外への興味をほぼなくしてしまった。少なくともわたしにとっては、それくらい圧倒的だ。

ある夜、わたしはお気に入りの女優が出ているAVを選んだ。その女優と松本いちかが共演しているものだ。松本いちかは目当てでなかった。むしろそのお気に入りの女優の出演部分が減るので邪魔だと思っていた。
しかし、予想外に松本いちかはとてもかわいくて、輝いてみえた。

とてもよかったので、いくつか単体作品を買ってみた。いじめられている役柄が多い。泣き顔が真に迫っていて、とてもよかった。松本いちかは泣き顔の女優だと思った。しかし、わたしは女の子が泣くようなものはあまり好きでない。

つぎにVR作品を見た。松本いちかは楽しく笑っていた。わたしに笑いかけてきた。驚くほどかわいくて絶句した。
驚くほどかわいいく、作品はそのかわいさを汲み取って主題にしようとしていた。しかし、それでもなお、そのかわいさは十分に表現しきれていなかった。ケタ外れのかわいさだった。

それから新作を見るようにした。過去作もさかのぼった。
デビュー作も買ったが、それにはなかなか手が伸びなかった。なんとない気まずさを感じていた。

なぜデビュー作を見ていなかったのか

わたしはデビュー時に松本いちかを無視した。
デビューをリアルタイムで追えていなかった後悔が、デビュー作の視聴からわたしを遠ざけていた。

なぜ無視したのか。AV博士であったわたしが松本いちかのデビューを知らなかったはずはない。知っていたし、サンプル動画も確認したはずだ。

松本いちかはソフトオンデマンドの青春時代レベールでデビューした。わたしはSODが嫌いだ。

森下くるみ以降、女優の売り方も企画のノリも好きでない。一度ウケただけのマジックミラー号、時間停止、女子社員を何度も何年も続けるセンスの悪さが深刻だ。AVをつまらなくする元凶の30%はSODにある。
SODデビューだと興味関心が自動的に50ポイント落ちるのだ。

青春時代は、いまでこそ人気キカタン女優の登竜門、ステップアップコースになっている感があるが、当時は位置づけがよくわからなかった。よい女優もいたが、ハテナマークが付く人もいた。SOD STARの二軍にも見えた。わたしは西野希がよいと思っていたのだけれど、パッとしないまま放出されて、寂しい感じで終わってしまった。

だから青春時代デビュー女優への期待は低かった。NFLドラフトでいえば3日目の前半クラスだ。松本いちかだけを指したものではないが、量産型青春時代女優なる失礼すぎるワードが頭をよぎったこともある

かくしてわたしは松本いちかを無視した。それからも新作のサンプル動画は確認していたはずだが、魅力を感じることはなかった。

青春時代から4作品をリリースした後、松本いちかはキカタンに転じた。青春時代からのリリースが終われば、そこまでの存在だろうと思っていたので、意外に感じた。

そしてわたしは松本いちかと出会った。

その気まずいデビュー作を見ようと思う。今日はデビュー2周年だから。

レビュー:この可愛さクセになるっ!!! 松本いちか SOD専属 AVデビュー 松本いちか

商品発売日: 2019/09/26
収録時間: 167分
出演者: 松本いちか

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カメラが足元を捉えて、靴から少しずつ視線を上げていく。

細い脚を見ているだけで胸が詰まりそうになる。デビュー作の撮影は誰だって不安だろう。その不安をこの細い足で支えて立っている。

視点は上昇し、上半身を写す。この細い身体に、その後、鬼の住処・キカタンワンダーランドでトップを取るポテンシャルと胆力が備わっているとはまったく信じられない。

そして顔が映る。パッケージの丸顔の女の子はどこに!?笑
メイクや写す角度、顔の見せ方なのか、松本いちかのかわいいところとは少しずれていると思う。もしかしたら不安が顔に出過ぎているのかもしれない。

それでも、鉄棒で前回りをして笑うところ、カメラやラーメンの話をするところはかわいい。楽しく笑っている。松本いちかの一番すごいところはここだ。

普通のひとは楽しそうに笑う。このひとは笑っているから、楽しいんだろうなと判断できる。楽しさを表現するために笑っているようにも見える。表現をする一呼吸が挟まっているように見える。松本いちかのそれは違う。楽しい、嬉しいと笑うが直結してみえるのだ。

松本いちかが笑うのを見ているだけで、なぜ自分もこんなに嬉しい気持ちになれるのかを考えて、そういうことなんだと気づいた。気づくまでには時間がかかった。これを撮っている人もまだ気づいていないんだろうと思う。

インタビューは硬い。いまの松本いちかは、作り話や適当な思いつきを真剣な顔で語ったり(そのウソくささがかわいい。そしてウソを言っていないときが、それとの対比でわかる)、アドリブをガシガシ入れてきたりして、見ている人や作品を作っている人の予測と予定を裏切り、狂わせながらも、愛されて許される無敵感があって、それがとても魅力的なのだが、もちろんこの時点でそんなキャラクターは確立していない。

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脚が長いから高身長に見える。実は背は高くなくて、顔が小さくて、手脚が長く、童顔からは信じられないくらいスタイルがよいのが松本いちかなのだが、本作ではあまり伝わってこなかった。あのすごさは他の女優との共演で並ぶとわかるのだ。共演する方は並びたくないでしょうけど。

服を脱ぐと、下の毛がないので、青春時代のイメージの、素人感や無垢さはないようにも見えてしまう。身体も細い。いつも細いけど、デビュー作に合わせてさらに絞りこんでいたのだろうか。客観的にみれば不健康に見えてしまうかもしれない。
作品やそのほかの発信を見ていれば、心が健康なことがわかるのでそうは思わなくなるのだけど、この辺りのことが気になって、リアルタイムのわたしはこの作品を敬遠したような気もする。

初脱ぎも、初エッチもさらっとしちゃっているのは残念。伝説になるはずの女優なのに、その予感はなかったのかな。中原愛子にはあんなに時間をかけたのに。

体操着が似合わない!松本いちかは最高にかわいいし、女子校生に見えるし、お尻も大きいのでブルマ似合うはずなんだけど、体操着がどうしても似合わないんですよね。上半身が華奢すぎるからなのかな。最近は似合う着こなしができているものもあるけど、松本いちかに残念な点があるとしたら、これだけ。

エッチは基本的に受け身だったけれど、最後の恋人設定のシーンでは、笑顔も出ていてよかった。

レビューのあと

ケチをつけるようなものになってしまったが、松本いちかはよかった。華奢でかわいかった。
サンプルだけを見てよくないと思った2年前の自分を追認したいだけかもしれないが、それでもやっぱりちょっと厳しいなとも思った。

後知恵で振り返ると、魅力の一端のようなものは少しずつ見えるが、どれもとても小さいものだ。わたしが今思っている、また世間に評価されている松本いちかのよさはあまり出ていなかったように思う。

本質的には作品の作り方と相性が良くなかったのだろう。青春時代は一定のパターンに当てはめて作品を作っていくタイプで(SODは全体的にそうだ)、一定の形に仕上がる。

松本いちかの魅力はAVらしさ以外のところにあるように思う。AVのフォーマットに載せずとも持っているもの、そのものが魅力的だ。顔やスタイルはもちろんそうだが、姿勢の良さ、(アピールされることは少ないが)体が柔らかいところ、明るいところ、ふざけているところ、笑顔がとてもかわいいところ。

もちろんデビュー時の松本いちかにそれが求められたとは思わないが、本来松本いちかは定型にはめる必要ないのかもしれない。
わたしが初めに見たVRも、かわいさを引き出そうとする演出をして、かえって松本いちかのかわいさが表現しきれなくなっていたのだと思う。

それにしてもこのデビュー作から、どうやっていまに至ったのだろう。専属でないから、道を切り拓いたのは自身でしかないはず。2作目から順にたどって見ていこうかな、なんて考えていたら、最後のイメージシーンの笑顔にふっ飛ばされてしまった。

この笑顔は反則すぎる。

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