ヒトデナシ、虐殺の定め

 俺の拳は特別製なので見るからにゾンビという物体の頭部を貫通し、後頭部から飛び出した。
素手で人を殴り殺したのは多々あれど、貫通したのは初めての経験だ。
もう一回やるか。
「遊んでないで行くわよ。新入り」
美人の先輩が血で染まった銀髪を翻して俺を振り返り、俺の縛りプレイを非難する。
「はい」
仕方なしに突撃銃の安全装置を外した。
俺は美人の先輩と共に特殊部隊という名の金のかかった消耗品をしている。
俺たちは雇い主の会社が起こした災害の発生源に飛び込み、要救助者を助け、実験データを回収する。
勿論、一般市民は救出対象外。
公務員の皆さんが頑張ってください。
俺たちは機械の身体を持った人でなしなのでそういう人命救助はないです。
先輩は戦闘用AIだから。
俺はこの全身義体というか機械人形の身体に意識を転送されるまで殺人鬼だったから。
それにしても久しぶりの殺人は機械人形用の人造血液を熱くさせる。