叙述トリック説明

 夏の夕暮れが見える。

教室の中で、俺は窓の向こうの夕焼けを眺める姿に向かって言った。

「叙述トリックというのは重要な情報をあえて語らなかったり、二つの出来事を一つの出来事と思いこませたりする」

「具体的には?」

夕焼けを眺める姿がこちらに顔を向ける。

「俺のセリフだろ」

VRヘッドギアを停止し、それを外す。俺は壁に向かって独り言を言うのを止めて、立ち上がり、分厚い扉を開いてシェルターの外に出た。2199年の核戦争で世界は変わってしまい、それから他者には出会ったことがない。塗料は長時間の使用によって所々剥げ落ちている。核で汚染された世界を行く俺はもちろん人間ではない。アンドロイドだ。