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過ぎてく日に走り書き

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#父

娘の築いた時間と父

「おとうは出てこないで」 小学二年生の娘は、その体に不釣り合いな大きな掃除機を抱えて、せっせと掃除に励んでいる。自分がこれから使うところだけ。 秋晴れの清澄な空気がカーテンレースをほどよく揺らす。ずっとそこに居座るように見えた入道雲はいつの間にか姿を隠していた。 娘が友達を家に招待した。 学区内の保育所に入れず、彼女は誰も友達のいない小学校に入学した。周りは既に友達のコミュニティが出来上がっているなかで、他人なのは彼女だけだった。 学区が違ってもすぐに友達はできるか

ステイマンの賞味期限(子育ての話)

夜な夜な現れては、家に散らかるオモチャを捨てる”清潔の怪人ステイマン”。 「オモチャ片付けんと正義のヒーロー ステイマンが来るよ」と言うと、子供たちは「ヒーローじゃないし」とか「どうせ おとうじゃろ」とかくちごたえしながらも、玩具をちゃんと片付けていた。 なんといいアイデアを思いついたものだと自画自賛していた……が、時が経つにつれ、ステイマンの存在意義は怪しくなった。 彼らが片付けていなくても、先週の誕生日に買ったロボットをゴミ箱に捨てることなんてステイマンには出来ない