マサラマジックがデキルまで

1. はじめに
ナトリウムランプゲームスのPRA(プラ)と申します。スパイスの香りがする線香でポーカーを行う、マサラマジックというボードゲームを作り、ボードゲームの祭典「ゲームマーケット2018秋」で頒布して、幸いなことに完売させることができました。でもボードゲームを作ったのは今回が初めてでしたし、ボードゲームは数えるほどしか持っていませんでした。なぜ作ることになったのか、なぜ作りきることができたのかといえば、いろいろな縁と幸運に恵まれたからです。このボードゲームができるまでの経緯を文章にまとめてみることにしました。こんなド素人でもボードゲームが作れたということを知れば、ボードゲームを作りたいと思っているけれども足を踏み出せていない人がボードゲームを作り始めるきっかけになるかもしれませんし、それがボードゲーム業界を広げる一助になるかもしれません。少なくともボードゲームを作り始めたころの私が読めば「そんなのでいいんだ」という安心につながることでしょう。先人の皆さんからすると子どもが車道を歩いているような危うさにハラハラされるかもしれませんが、お付き合いいただけると幸いです。
ボードゲームと繰り返すのはなんなので、以下ではゲームということにします。

2. 動機
私は食品会社に勤めている営業系の人間です。数字いじりが好きでPCばかり触っていたら、そのような仕事ばかり回ってくるようになりました。まあ、便利屋です。趣味は食うこと、飲むこと、釣り、宇宙、コンピュータ、謎解き、本、演劇、旅、カメラなど多趣味といえば聞こえがいいですが一貫性がありません。ボードゲームに縁が無かったわけではないのですが、ゲームの単価が本に比べて高いのと、一人で遊べないので手を出してきませんでした。
そんな私も妻と子どもができて一緒にゲームをやるようになり、いくつかゲームを買ったりゲームマーケットへ足を運んだりするようになりました。ゲームマーケットへ行く目的は謎解きと市販ゲームの試遊でした。子どもを連れてゲームカフェやゲーム会に行くのはハードルが高く、ゲームマーケットはちょうど良かったのです。でも、ゲームマーケットのメインである、同人ゲームを買おうとは思いませんでした。理由は3つあり、市販ゲームはクオリティが保証されている、大量生産なので単価が安い、同人を楽しむには基礎知識が必要という先入観を持っていたからです。特に同人誌の感覚があっただけに、市販ゲームよりも先に同人ゲームを買うことには違和感を持っていました。
それが覆ったのが、2017年秋のゲームマーケットです。キッズスペースでいくつかのゲームを遊んだ後で、子どもが次のゲームを選ぶ際に、キッズスペースのお姉さんがゲームを勧めてくれました。そのゲームは、コンパクトなパッケージの中に布製のゲームマットと木ゴマが入っていて、説明を受けると子どもでもすぐに始められるルールで、やってみると先を読む楽しさがあり、そしてゲームが終わったらすぐにもう一度やりたくなりました。ゲームの名前は「ostle(オストル)」。お姉さんに聞くと今回のゲームマーケットで初頒布された同人ゲームで、たぶん売り切れているとのこと。そのゲームをフルで遊ぶことができるチラシをいただいたものの、どうしても「モノ」としてのゲームが欲しかったのでブースへ足を運びました。ゲームは売り切れていましたが「ostle」の作者がいらっしゃったので、ゲームがすごくよかったことと、再販の願いを伝えました。その後、ゲームマーケットでは子どもが欲しがったファンタジー系双六ゲームを買って帰路につきました。帰りのバスの中で、子どもは買ったゲームのパッケージをなで回すように見ながら、「帰ったらやろう」と何度も何度も繰り返していましたが、力尽きて寝てしまいました。それでも、ゲームをしっかりと腕に抱えて離しません。私は私でバスの窓の外に流れる風景の上に今日プレイした「ostle」のゲーム盤が重なって浮かんできて、どうやったら詰むことが出来るのか考えていました。
その日を通じて私の中の認識がいくつも変わりました。ゲームは小説やマンガのように人を感動かすことができること。ゲームは作者から生まれる作品であること。同人ゲームも市販ゲームも関係なく魅力のあるゲームがあること。そしてゲームは人生を侵略するくらいの力を持っていること。
そんなことができるゲームというものを作っている人たちがとてもうらやましくなりました。
そしてそんな想いが行きかうゲームマーケットというイベントに愛着を持ちました。

3.始動
2018年のゴールデンウィークの初日の4月28日に秋のゲームマーケットに出ることを決めました。なんとなくです。理由はゴールデンウィークの予定がゲームマーケットしかなかったからでしょう。そうなるとゲームを作らなければいけませんが、ゲームの作りかたはわかりません。ひとまず自分の得意分野でゲーム化できそうなことを考えました。カレーでいこう。即決でした。作るゲームは「ゲームマーケットで頒布する」ためのゲームです。そうすると購買客は「同人ゲームマニア層」になりそうです。「同人層」であるなら昨今のグルメマンガの多さから推測するに食べ物系のゲームは刺さるだろう。そしてサブカル層とカレーの相性は昔から高く、サブカル層のゲームマニアがいれば興味を持ってくれるかもしれない。であればカレーをモチーフにしたゲームにしてみよう。ゲームのことはあまり知りませんが、食品のことについては得意分野です。そしてせっかく私がつくるのだから、ゲームを通して私が思うカレーの面白さに触れてもらえるような作りにしたい。ならば、カレーのどういうところをゲームの面白さに据えるべきかを考えました。自分の中のカレーというものをあれやこれやしているうちに、カレーの主食、具材、スープ、スパイスを集めて、いろいろな国のカレーを作り戦わせるというゲームの輪郭ができました。ゲームの仮称は「カレー大戦」としました。
ただここまできて二つの大きな問題が私の前に立ちはだかりました。1つ目の問題はカレーの定義、そして2つ目の問題はカレーにおいてインドが偉大すぎるということです。
その昔「美味しんぼ」の中で海原雄山がカレー屋さんを巡りながら「カレーとは何か?」という無理問答を吹っかけて街に面倒を振りまいていましたが、カレーというのは、定義をすれば例外が出てくるという厄介なものです。カレーといえばスパイスですが、スパイスが入っている料理のすべてがカレーではありません。カレー粉が入っているものはすべてカレーといってもいいですが、カレー粉の定義は明確にはできません。カレーとは何か。今まで生きてきて結論が出てきていない問題が、ゲームマーケットに出る半年の間にかたづくとは思えません。
もう一つのインドが偉大過ぎるという問題は、カレーを国ごとに戦わせると、インドが偉大過ぎてほかの国では勝てないということです。日本のカレーやヨーロッパのカレーにオリジナリティはあるものの、結局はインドのカレーを発端としている亜種でしかありません。また、タイカレーはゲーンという汁物の一部を便宜上カレーと呼んでいるだけで、カレーに入れるべきかがよくわかりません。そんなカレーの境界条件を設定できないうちからカレーを戦わせるのは不誠実のような気がしましたし、そこをすっきりさせないと自分としてもゲームに落とし込む際にストレスを抱えそうでした。その時の気持ちを反映してゲームの仮称を「インド人にはかなわない」と変えたりもしましたが、ゲームを作るうえでの解決にはつながりませんでした。

問題はそれにとどまりません。私の作るゲームはカードゲームになりそうでした。でも初心者が作るゲームなのでたくさん売れるとは思えません。だとすると印刷会社に出すほどの個数を作ってしまったら売れ残るばかりになりそうです。同人活動をしている妻に相談をしたら「持ち込み数を売り切るくらいがちょうどいいんだよ。在庫を残したら家のどこに保管するの?」という意見を得ました。確かにその通りです。そうなると自家生産の範疇でプリンタを使って少数ロットで作れるゲームを作るのがよさそうだということになりました。でもそうするとゲームの単価は上がります。素人のゲームで値段が高かったら余計に買ってくれる人はいなくなるでしょう。困ったことになりました。

そんなこんなで頭を悩ましていましたが、悪くない考えも出てきました。カレーの中に含まれるスパイスを使ってゲームの仕掛けにするというアイデアです。スパイスは特徴的な香りがする。ならば、プレイヤーの鼻でスパイスの香りをかいでもらおう。スパイスは乾燥してあれば日持ちもする。「かぐ」ゲームということで「格ゲー」ならぬ「かぐゲー」というコピーも出てきました。でも、どうゲームにするかというアイデアは出てきません。また、香りがするものをゲームのコンポーネントに入れると、香りがほかのものに移ってしまい、香りを判断できなくなってしまう恐れもありました。

そうこうしているうちにゲームマーケット当日になりました。連休の間、ずっとゲームについて考えたもののうまくいきません。ゲームマーケット会場では久しぶりに旧友夫婦と会うことになっていました。
話していると旧友夫婦も最近カレーとボードゲームにはまっており、現在ゲームを作っていて、試作品を持ってきているといいます。プレイさせてもらうとジレンマのあるきちんとしたゲームでした。
私もカレーのゲームを作っていることを伝えると、旧友の奥さんが、カレーをモチーフとしたゲームの先人として「ギリギリカレー」があることと、カードの香りをかぐゲームの先人として「パフューマー(調香師)」があることを教えてくれました。
初めてゲームを作る者同士で話していると、お互いに作ったゲームを買ってもらえるかわからないという不安を抱えていることがわかりました。そして、それを乗り越える方法を協議したところ、せめてコンポーネントを良くすればなんとかなるかもしれないという結論になりました。いいゲームにするよりも、「モノ」として欲しい物を作る。そうすれば誰かが手に取ってくれるかもしれないという判断です。

ゲームマーケットで「ギリギリカレー」を買い、家ですぐにプレイしました。「ギリギリカレー」はカレーを作るゲームとして完成されており、このゲームの後にカレーを作るゲームを出したとしても二番煎じになるような気がしました。
「パフューマー(調香師)」をプレイすることはできませんでしたが、ネット上でマニュアルを読んだ限りでは、香り印刷をしたカードを使ってプレイをする壮大なゲームで、小細工で戦っても勝てそうにないことがわかりました。
やはり車輪の再発見のように、素人の考えるようなことは先人によってすでに切り開かれていて、そのことを知らない素人が新しい道だと思いながら同じ道をたどるようなことだったわけです。改めて路頭に迷うような気分でした。

4. 設計
〔設計方針〕
迷いから抜け出すために自分がどういう状況にいるかを整理して、何をすべきかを考え直すことにしました。
この時の状況は下記のとおりです。

商品:カレーをモチーフにした香りをかぐ要素のあるゲーム
ターゲット:カレー好きのボードゲーマー
競合:ギリギリカレー、パフューマー(調香師)
販売場所:ゲームマーケット

そこから導き出させた課題は下記の6つです。

課題:
・ 先行者と被らないようにする

 ゲームにする
 香る素材を探す
 所有欲を満たす「モノ」にする
 「カレーは定義できない」という問題を解決する
 少数生産可能にする

難題山積みです。
このゲーム作りを進めていけるのか課題を検討することにしました。

〔先行者と被らないようにする〕
まず先行者と被らないようにするということから手を付けてみました。
「ギリギリカレー」は鍋にカレーの材料を入れていって、カレーでないものになってしまったら負けというバーストゲームで、カレールーに模したパッケージが印象的です。ゲームの中で鍋ごとにカレーの枠を決めてそれをオーバーしたらカレーではないことにするという点が、カレーは定義できないということをうまく利用しています。カレーの材料カードの中に、具材や隠し味は多いのですが、スパイスは「スパイス」とひとまとめになっていました。ならばスパイスを細かく分解して、ゲームにしても問題はなさそうです。それは私の好きなスパイスカレーの方向とも合致します。「カレー」のゲームではなく、「スパイス」のゲームにすることにしました。そのうえでカレー好きの人たちをターゲットにすることはできるでしょう。
一応気になってスパイスがモチーフのゲームを検索したら「センチュリースパイスロード」が出てきましたが見なかったことにしました。また、そのときには「サフラニート」を見つけられませんでした。もし見つけていたら心が折れていたかもしれません。
また「パフューマー(調香師)」を実際に触ることはできませんでしたが、被らないように軽いゲームにすること、香り印刷を使わないことを決めました。香り印刷を小部数でやるのは不可能なのでそもそも無理がありました。
一つ目の課題「先行者被らないようにする」ということは「スパイス」の「香りがする」「軽い」ゲームを作れば解決できるという結論に至りました。
これで「カレーは定義できない」という課題も同時に解決できました。
そして、いろんなことを盛り込むゲームではなく、スパイスの香りを「かぐ」ということに重点を置いたゲームとすることにしました。

〔ゲームにする〕
次の課題はゲームにするという点です。かぐ要素を入れたゲームというと香道があります。しかし、香道のように香りを当てるということを軸にすると、香りがわかる人のためのゲームになってしまうので、ターゲットであるゲーマーから離れてしまいます。そうするとゲームを主として、香りを副にするくらいのバランスがよさそうです。ゲームとしてはスパイスのカードをやりとりするイメージがあったのでその部分を膨らませていったところポーカーのように自分の手で役を作るイメージにまとまっていきました。スパイスの香りをかぐことをゲームのなかに取り込みつつメインの位置でないようにするために、一度作った役をお互いにかぎあって役作りを邪魔しあうことに使おうと決めました。

二つ目の課題「ゲームにする」ということは「スパイス」の「香りがする」「ポーカー」を作れば解決できるという結論に至りました。

〔香る素材を探す〕
次の課題は香る素材という点です。
素材の課題は
・ 香りの持続性
・ 匂い移り
・ 耐久性
・ ゲーム性
この4つです。
スパイスをお手玉のようにする方法や、香りの素を箱に入れる方法や、カードに染み込ませる方法も考えましたが。うまくいきまそうにありません。
「香りの持続性」と「匂い移り」は相反するという難しさがあります。香りの持続性を強くすると、匂い移りしてしまいますし、香りの持続性を弱くするとゲームを続けてできません。洗うことができて香りをつけることができる素材として木がありそうです。香りをしみこませた木というキーワードからリードディフューザーをひらめきました。リードディフューザーは香水に木の棒を入れた芳香剤で、フレグランスショップやホームセンターで売られています。その木の棒にスパイスの香りをしみこませてカードの代わりに使えばゲームになりそうです。黒いリードディフューザーを使えば見た目では区別がつかなくできそうですし、目印をつければカードのように使えそうです。目印は積み残し課題としました。
そうなると香りをつける方法ですが、スパイスから抽出したエッセンシャルオイルをしみこませればよいでしょう。コンポーネントの箱を開けたらエッセンシャルオイルの瓶が並んでいたらテンションが上がりそうです。エッセンシャルオイルを薄める溶媒としては、揮発性が高く、手にしても口にしても有害でない無水エタノールを選択することにしました。
三つ目の「香る素材を探す」という課題は、香りをしみこませるものはリードディフューザー。香りをつける方法はエッセンシャルオイル。これで解決できそうです。これであれば大量生産は難しいですが、少量生産を行う分には問題なさそうです。ですので「少数生産可能にする」という課題もクリアできそうです。

〔所有欲を満たす「モノ」にする〕
残った「所有欲を満たす「モノ」にする」という課題ですが、実際のモノづくりを行わないと何とも言えません。そうするとこの課題を探りながら試作品製作をしていけばよさそうです。課題を明確にできたのでターゲット像も細かく修正したほうがよさそうです。キーワードを並べるとカレー好きのボードゲーマーで、小部数生産のモノに興味がありそうな人。そうすると、ゲームマーケットで話した旧友夫婦がぴったり当てはまりそうだったのでターゲット人物とすることにしました。

ひとまず決まったことは
商品:カレーをモチーフにした香りをかぐ要素のあるゲーム
→スパイスの香りのエッセンシャルオイルをしみこませたリードディフューザーで行うポーカー
ターゲット:カレー好きのボードゲーマー
→旧友夫婦
競合:ギリギリカレー、パフューマー(調香師)
→被らないように対応する。
販売場所:ゲームマーケット
→申し込む

課題:
・ 先行者と被らないようにする
・ 「カレーは定義できない」という問題を解決する
→スパイスをモチーフにした軽いゲームにして、先行者とは異なるポジションをとる。
・ ゲームにする
→ポーカータイプのゲームにする。
→ゲームルールは詳細につめる。
・ 香る素材を探す
・ 少数生産可能にする
→スパイスのエッセンシャルオイルで香りをつけたリードディフューザーを使う。
→目印はこれから考える。
・ 所有欲を満たす「モノ」にする
→モノを作ってから考える。

ゴールデンウィークから数日でだいたいこれくらいのことが決まりました。鉄は熱いうちに打とうということでルール作りと、試作品作りを並行しながらゲームについて詰めていくことにしました。

5.試作
〔ゲームのルール〕
「スパイスの香りのするエッセンシャルオイルをしみこませたリードディフューザー」って言葉が長いので「線香」と呼ぶことにしました。燃やすいわゆる線香とは違いますが、線だし香だし問題はないものとしました。
線香でポーカーをする。役を作ってお互いに手をかぎあい、香りを当てて、当たったら役作りの邪魔になる。ここまでは決まりました。
あとはそれぞれの要素を決めていき最適解を選びました。
役についてはポーカーの役を参考にしました。スパイスの種類を何種類にするか。各スパイスの線香の本数を何本にするかを決めないと、できる役とできない役があることがわかりました。ひとまず、スパイスの数と、本数を決めて、確率的にフェアか計算をしたところ、6種類のスパイス4本ずつを用意して、5本を手持ちにして、1本とって1本捨てる交換をするとちょうどよさそうでした。最初に6本とって、1本捨てるのも同じことだと気づいたので、そうすることにしました。総本数24本で6本ずつ取るとちょうど4人プレイが可能です。また、これくらいの量なら家でも作れそうです。
香りを当てた際に捨てる本数は香りの要素を強くしすぎないようにするために1本としました。
次は役の調整です。5本すべてがばらばらの役を入れると面白そうです。香りがわからずにランダムで当てても6分の5の確率で当たるので、役は作りやすいですが、ほかのプレイヤーに香りを当てられてしまい、成立させるのは難しそうです。
4カードと、フルハウスは特定のスパイスの香りが強くなるので当てられやすそうですし、そもそも確率的に成立させるのは難しいでしょう。強い役は3点。弱い役は1点で、3点先取にしておけば一発逆転の要素もあって最後まで楽しめそうです。
スパイス6種類はカレーができるものにしたかったので、クミン、コリアンダー、シナモン、カルダモン、ターメリック、パプリカにしました。パプリカの代わりにレッドペッパーでもよかったのですが、プレイに危険がともなうのであきらめました。
妻にゲームの内容を話すと、スパイス固定の2ペアを何かの役にすればいいとアドバイスをくれました。そこからクミン、コリアンダー、でカレー、シナモン、カルダモンでチャイ、ターメリック、パプリカでティッカという役が生まれました。役は最初3点で考えていましたが、役が出やすいのでテストプレイの際に2点に変更となりました。
これでスパイスの種類、本数、プレイ人数、プレイ手順、終了条件、役の内容とゲームの骨格が決まりました。

〔部材探し〕
ゲームに使うものは、リードディフューザー、目印、エッセンシャルオイル、目隠し、収納する箱。これがそろえば何とかなりそうです。

(リードディフューザー)
まずはネットで探して黒いリードディフューザーを買いました。届くまで待っていられないので、100円ショップに行き、竹串とビーズを買いました。竹串に色分けしたビーズを目印に刺して手持ちで持っていたスパイスをエタノールに入れて香りをつけてかぎ分けられるか試してみましたが、よくわかりません。竹串では難しそうです。竹串にビーズをきつく刺したら、ほどなくしてビーズが割れてしまいました。

(目印)
エッセンシャルオイルに溶けない目印はないかと東急ハンズで店員さんに聞いたところ、溶媒で溶けたり劣化したりしないと言い切れるものは、シリコンのパッキンで非常に高価でした。いざというときには東急ハンズへ行けば何とかなるという目論見は打ち砕かれました。
探しに探した末に色のついているシリコンのビーズを海外通販で見つけることができました。シリコンのビーズは目印にしては小さかったので、金属のビーズもつけることにしました。大きなビーズはつけると見栄えはいいのですが、収納する箱も大きくならざるを得ません。金属のビーズはほかの要素が決まってから選定することにしました。

(エッセンシャルオイル)
スパイスの香りはエッセンシャルオイルを使うつもりでしたが、購入してかいでみたところ、香りにコクというかパンチがありません。普段かぐスパイスの香りとどうにも違うのです。こうなると自作するしかありません。自宅で試行錯誤しながら抽出してみました。出来上がったものをリードディフューザーにしみこませてかいでみると、それぞれのスパイスごとに特徴あるスパイスの香りがして、何本か混ぜてかぐとスパイス料理の香りになりました。これならいける。問題は一部スパイスで手に色がうつることでした。でも、インド人はスパイスのたっぷり入ったカレーを手で食べるといいます。プレイヤーは少しだけインド人的な手になるということで我慢を強いることにしました。いつかは解決したい問題ではありますが、今のところは抜本的な解決法がありません。もし、無色のスパイス抽出液をご存知の方がいらっしゃいましたら教えてください。

(目隠し)
つぎには目隠しです。プレイ中に自分からは線香の目印がみられて、ほかのプレイヤーからは見えない、そしてお互いにかぎあうときには人の目印は見えないことが求められます。目隠しがあったとしても線香を立てておかないとプレイしにくそうです。線香なので線香立てや一輪挿し、つぼなどを考えましたが大きくなってしまいますし、割れやすい物であれば運ぶことも難しくなります。ひとまず課題として置いておくことにしました。

(収納する箱)
最後に収納する箱です。線香の匂い移りを防ぐ対策が必要です。線香を小箱に入れて、それを小箱に入れることを考えました。小箱としては線香入れと箸入れを検討しましたが、価格も高く、大きくなってしまいます。軽いゲームに巨大な箱を用意するのはスマートではありません。木製の線香を分けて収納できる箱を検討しましたがオーダーメイドするには大量発注しなければいけません。少量の箱を自作することも考えましたが、所有欲を満たすというところまでクオリティを高めることはできそうにありません。箱が売られていそうなところをいろいろ見て回りました。けれども適当なものはありません。あきらめかけたときにインド雑貨屋へ立ち寄りました。インド雑貨屋特有の香りの中、壁から天井までみっしりと隙間なく埋められている商品を隅から隅まで探していたところ、風合いのある木の箱を見つけました。透かし彫りのある細長い香炉の箱です。手に取りふたを開けると線香を燃やすための空間がありました。とても良い。でもこれだけではすべてのコンポーネントを収めることはできなさそうです。箱を詳細に見ていくと切れ目のような筋がありました。手にかけると開きます。隠し扉。線香をしまうために作られたのでしょう。もうやられました。すべてこの箱に合わせる。そう決めました。箱が決まったとたんに箱をロックするための蝶番はアンティーク調にする、ネームプレートは金属製にする、どうやって作るかはわかりませんが決めました。隠し扉を開けたときは、ゲームを作る上で最も幸せな瞬間の一つでした。

目隠しは箱に収まる大きさで探して、スチール製のカップを使うことにしました。カップのふたも箱に収まる大きさで探したところ、イメージにぴったりなものが見つかりました。目印のビーズも箱に収まる大きさの金属製でそろえることにしました。エッセンシャルオイルの瓶は箱の幅に収まるものが見つかりました。カードとマニュアルは印刷物なので大きさを変えることで何とかなりそうです。
箱が決まったことで元からそうだったかのように他のパーツが決まっていきました。

(名前)
最後に名前です。ゲームの舞台はインド。スパイスが混じり合うことで別の新しい香りが立ち上がってくるイメージから「masala magic(マサラマジック)」と名付けることにしました。検索をかけても先行するゲームはなさそうです。

7月上旬にすべてのパーツがそろいました。組み上げて形にして、試作第一号を旧友に送りました。開封時にLINEで連絡したところ、旧友は隠し扉で興奮し、奥さんは部材が何でできているかをほぼすべてあてたうえで統一感があるといってくれました。「モノ」としてほしいものにするという課題はこれで達成できました。

そのあともマニュアル、ルールなどの調整は必要でしたし、妻と約束した「売り切る」ということについては不安しかありませんでした。この後も数多くの課題がありましたが、いろいろな縁によって皆さんに助けていただきました。

ゲームマーケットに出る。ゲームを作る。そう決めたらゲームができました。
不安なことはまず課題にしてしまう。その課題で答えが見つからなければ、課題を再設定する。そうすると、答えが見つかりました。
ですからゲームマーケットに出ようと迷っている人がいたらまず申し込んでみてはいかがでしょうか。
きっと、面白い体験が待っていますよ。

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PRA

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