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SWOT分析についてまとめました。定義、テンプレート、分析の進め方、課題と限界について。

SWOT分析の定義

経営戦略や事業戦略を立案する手法にはさまざまなものがありますが、そんな中でもとくに有名な分析手法は、おそらくSWOT分析ではないでしょうか?
SWOT分析は、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の頭文字から名づけられたフレームワークで、自社の内部と外部の環境を「強み」「弱み」「機会」「脅威」で整理し、戦略を導き出そうとする分析ツールです。
SWOT分析の目的は、これらの分析の結果をもとにして、自社としてとるべき戦略はいったい何なのか?といった問いかけに対して解を導き出すことです。

ちなみにSWOT分析の読み方は「スウォット分析」です。
アルファベットを並べたフレームワークの名称って、ときどきどう読むのかわからないときありますよね。

SWOT分析(-ぶんせき、SWOT analysis)とは、目標を達成するために意思決定を必要としている組織や個人のプロジェクトやベンチャービジネスなどにおいて、外部環境や内部環境を強み (Strengths)、弱み (Weaknesses)、機会 (Opportunities)、脅威 (Threats) の4つのカテゴリーで要因分析し、事業環境変化に対応した経営資源の最適活用を図る経営戦略策定方法の一つである。組織や個人の内外の市場環境を監視、分析している。 フォーチュン500のデータを用いて1960年代から70年代にスタンフォード大学で研究プロジェクトを導いた、アルバート・ハンフリー(英語版)により構築された。
Wikipedia SWOT分析

SWOT分析のテンプレート

では、さっそく、SWOT分析のテンプレートと分析の進め方を説明しましょう。上述したように、SWOT分析では、企業活動である内部環境を調査することと、企業活動を取り巻く外部環境を調査することから成り立っています。
したがって、テンプレートも分析の進め方としても、この二つの「環境」が軸になります。
また、定義の説明では触れませんでしたが、実はこのSWOT分析のキモは、「ポジティブ」な側面と「ネガティブ」な側面の二つの側面に注目して調査するところです。

つまり、自社をとりまく環境を内部環境と外部環境に分け、内部環境については自社のポジティブな側面である「Strength(強み)」とネガティブな側面である「Weakness(弱み)」、外部環境についても市場のポジティブな側面である「Opportunity(機会)」とネガティブな側面である「Threat(脅威)」の、計4つの要素で分けて、それぞれ個別に調査していこうというアプローチ方法がSWOT分析の基本的な思想なのです。

一般的なSWOT分析の解説ではあまり触れられていないのですが、まさにこの両側面(ポジティブとネガティブ)こそが、SWOT分析を構成している最大の要素であり、SWOT分析を使いこなす最大の難所でもあるのです。
なぜSWOT分析の最大の難所といえるのかについては後述しますが、まずは構成要素である「ポジティブ」な側面と「ネガティブ」な側面、そして「内部環境」と「外部環境」を簡単に説明してみましょう。

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内部環境と外部環境

まずは、内部環境と外部環境から見ていきたいと思いますが、そもそも内部環境と外部環境の違いって説明できますか?
私は、もし内部環境と外部環境の違いは何かと聞かれたら、一言で言えば「自助努力で何とかできると思えるかどうか」で判断すればいいと答えています。

常識的に考えても、「内部」という言葉のニュアンスから考えても、内部環境については他力本願でできることは少ないと思います。独自の技術開発や研究、商品開発を、他社に替わりにやってもらうわけにはいきませんし、営業力を強化するために競合他社に自社製品を売ってもらうわけにはいきません。ただし、近年はオープン・イノベーションの掛け声のもと、他社とのコラボレーションを促進する動きも出てきていますが、これもwin-winが前提なため、一方的な無償支援はありえません。
外部環境はPEST分析で代表されるように、自社だけの力ではどうにもならない環境を調査することを指します。つまり政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Social)、技術トレンド(Technology)のような大きな流れです。これも近年はGoogleやApple、Facebook、Amazonを代表する超巨大ネット企業による市場支配がこの常識も覆そうとしていますが、この4社以外については、自社だけの力で影響を及ぼせる範囲は小さいままです。

このように、内部環境と外部環境の違いは何かをざっくりと理解してから、それぞれのポジティブな要因とネガティブな要因を調査し始めるといいと思います。

ポジティブな側面とネガティブな側面

内部環境と外部環境の大まかな説明の次は、SWOT分析のポジティブな側面とネガティブな側面について説明しましょう。
簡単に言うと、世の中のすべてのことを、自社にとって望ましいことと望ましくないことに分断して考えようというのが、SWOT分析の基本です。ただ、その切り口が上記の内部環境と外部環境の二つがあるというだけで、基本的にはこの考え方に従っています。

内部環境の望ましいこと(=ポジティブ)が、「強み」であり、望ましくないこと(=ネガティブ)が「弱み」です。
同様に、外部環境の望ましいこと(=ポジティブ)が、「機会」であり、望ましくないこと(=ネガティブ)が「脅威」なのです。

こうやって物事を分断して考えてみると、自分の人生とも重なるところが多いと思いませんか?自分の力ではどうしようもならない環境の中でも、ネガティブなことを避けつつ、ポジティブなことを察知してチャンスをつかみ、そのために自分の良いところや才能を伸ばして、弱点を克服する!
非常にシンプルですね。わかりやすい!まるでアメリカンドリームみたいですね!これこそが、まさにSWOT分析が一番人気の分析手法である理由です。
「・・・でも、人生そんな簡単にはいかないよね・・・。」という声も聞こえてきますが、それについては後でご説明します。

テンプレートの構成要素

SWOT分析は上述のとおり、内部環境のポジティブな側面とネガティブな側面、外部環境のポジティブな側面とネガティブな側面からできています。
これらを図式化すると、次のようになります。

内部環境
ポジティブな要因=自社の強み

自社が持っている他社に負けないと思われる要因。たとえば、販売チャネルが全国に満遍なく津々浦々まで整備されていることや、圧倒的な品質の高さ、製造コストを削減する大量生産のしくみ。だったりします。

ネガティブな要因=自社の弱み

自社の強みとは逆に、自社が他社に対して勝てないと思われる要因。たとえば、商品開発力が劣ることや、不動産維持費・人件費・広告宣伝費・福利厚生等の固定費が高いこと。などがあります。

外部環境
ポジティブな要因=市場の機会

市場動向など自社にとって都合の良い状況と思われる要因。たとえば、好景気や、人口の増加、一人当りの可処分所得の増加、または規制緩和や新しい技術の進展による顧客ニーズの増大。などです。

ネガティブな要因=市場の脅威

機会とは逆に、自社にとって都合の悪い状況と思われる要因。たとえば、海外企業や他業界からの新規参入、為替の影響、値下げ圧力などです。

これらの調査結果・分析結果をモトに、これからの戦略を練るわけですが、その前に、上のような強みや弱み、機会や脅威はどうやって調査すればいいのでしょうか?次に、SWOT分析の進め方を見ていきましょう。

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分析の進め方

SWOT分析の環境分析の進め方ですが、順番は特にありません。
内部環境と外部環境を並行してすすめることもできます。二つのことを並行してすすめることなどできないと思われるかもしれませんが、内部環境も外部環境も、SWOT分析をするような指示を請けた担当者であれば、たいていの社内外の情報は、ある程度は頭の中に入っているのではないでしょうか?いえ、ある程度、社内外の課題を認識しているからこそ、SWOT分析を任されているのだともいえます。
したがって、二つの環境のいずれから始めても良いですし、交互に進めながら内部環境と外部環境の分析の粒度を整合したり、矛盾をつぶしたりしていきながら進めることもできます。いずれにしても、自分がやりたいと思っているほうを選んで始めてもかまいません。

SWOT分析 内部環境分析の進め方

ここでは便宜上、内部環境分析から始めてみましょう。自社内のポジティブな要素とネガティブな要素を把握し、自社の「強み」と「弱み」を調査します。勝つためには何を強化して、何を克服すべきかを分析するステージです。

SWOT分析 内部環境分析①目的と対象を決める

いきなり調査すべき項目を書き出してもいいのですが、まずは何のためにSWOT分析をするのかを理解しておかないと、調査項目が膨大になりすぎたり、偏ったりしてしまいます。
そこで、私は、まず最初にSWOT分析の調査対象を決めることを強くお勧めします。
たとえば、会社全体を対象とするのか?ある特定の事業や商品を対象とするのか?それともマーケティングなどのプロセスを対象とするのか?といったことです。

ある特定の商品や技術を対象とする場合は、調査項目はより具体的な項目になるはずです。商品を製造するための原材料を「調達」することから始まり、「加工」、「製造」、「品質」、「販売」、「サポート」といったプロセスが対象になるかも知れません。もしかしたらこれらのプロセス全体を対象とするのではなく、さらに絞り込んで、たとえば「加工する技術」だけを調査対象とするかも知れません。
逆に、会社全体を対象とする場合は、当然、調査項目はより抽象的な項目になってきます。
たとえば、「組織構造」、「ブランド」、「財務力」、「人材力」、「研究開発力」、「マーケティング力」、「営業力」、「購買力」などを対象とするかも知れません。
このように、SWOT分析はどんな対象でも調査可能なので、まず最初に「何のためにSWOT分析をするのか」を理解しておかないと、分析する対象や項目を間違って設定してしまうことになります。

内部環境分析②調査すべき項目を決める

目的と対象を絞り込んだら、調査すべき項目を絞り込んでいきます。調査すべき項目は、いろんな部署を巻き込んでブレストして洗い出しても良いですしが、こういったときには世の中に出回っているビジネス・フレームワークをチェックリスト代わりに使うことができます。たとえば、マイケル・ポーターが提唱したバリューチェーンをベースにして内部環境を調査分析してみるのも、非常に効果的ですね。
バリューチェーン分析については、<事業分析初心者のためのバリューチェーンの意味や分析項目の整理>で記事にしていますので、興味があればご覧ください。

内部環境分析③調査結果を強みと弱みに仕分ける

調査すべき項目を特定したら、次はそれぞれの調査項目について、ポジティブな要因だと思うか、ネガティブな要因だと思うかを判断し、仕分けします。このとき、ポジティブかネガティブかの判断を迷うことになると思いますので、あらかじめ、ポジティブ/ネガティブの判断をどのようにして決めるかを決めておくことが、今後の戦略を決定する上でも重要なポイントとなります。実は、この判断を結構独善的にやっていたり、担当者の直観やこれまでの慣習や常識で決めていることが多いのです。

もっとも一般的な方法は、ビジネス・フレームワークを活用して、内部環境を様々な視点で調査分析し、自社が他社よりも明らかに勝っているプロセスなどを、自社の強みとして仕分けたり、他社と比較して、どうしても勝てない要素やプロセスを「弱み」として仕分けしたりする方法です。
たとえば、ベンチマーキングで決定する方法がそれです。つまり、業界No1の競合他社との比較で「ポジティブ=強み」とするのか「ネガティブ=弱み」とするのかを仕分ける方法です。他にも、業界の指標(従業員数、特許出願数、ROI、営業利益率等)などがあれば、それを基準に仕分けることもできるかも知れません。

もし経験豊富で強力なリーダーシップを発揮できる人がいれば、その人の直観によって仕分けることもできると思いますが、いずれにしても、あらかじめ「決め方を決めて」おかないと、調査した結果が仕分けされず、野ざらしの状態になってしまいますので、注意が必要です。

外部環境分析の進め方

SWOT分析の外部環境分析の進め方も、基本的には内部環境分析の進め方と同じです。
外部環境分析では市場のポジティブな要因とネガティブな要因を調査し、「機会」と「脅威」を見極める重要な役割を持っています。リスクを回避しつつチャンスがどこにあるのかを探すステージですね。

外部環境分析①目的と対象を決める

外部分析でも、まずは調査の目的と対象を決めることから始めなければなりません。
たとえば日本国内の市場シェア拡大を目指すのか、アジア進出に狙いを定めて東南アジアを調査対象とするのか、それとも自社を取り巻く業界と隣接産業を対象とするのか、新規事業を開発するために、これまで進出していなかった新しい分野を調査するのかなど、目的に応じた調査対象を決める必要があります。

外部環境分析②調査すべき項目を決める

目的と対象を絞り込んだら、つづいて調査すべき項目を絞り込んでいきます。
まずは、ざっくりと、マクロ環境を調査対象とするのか、ミクロ環境を対象とするのかを決めるといいと思います。
調査対象を決める場合も、内部環境と同じようにビジネスフレームワークは役に立ちます。
マクロ環境には、政治的要因(Political)、経済的要因(Economical)、社会的要因(social)、技術的要因(Technical)というPEST分析の枠組みをチェックリストとして活用できるかも知れません。ミクロ環境では、ポーターがファイブフォースとして指摘した、顧客や競合企業、供給企業、新規参入企業、代替品などが調査対象とすることができるかも知れません。いろいろなフレームワークをチェックリストとして活用しましょう。

外部環境分析③調査結果を強みと弱みに仕分ける

調査すべき項目を特定したら、次はそれぞれの調査項目について、ポジティブな要因だと思うか、ネガティブな要因だと思うかを判断し、仕分けします。つまり、マクロ環境とミクロ環境の双方の調査結果にもとづいて、ポジティブな要因を「機会」、ネガティブな要因を「脅威」と整理していきます。
このとき「機会」とは、やがて来る環境の変化が、自社にどのような好影響をもたらすかを調査分析することですが、逆に、自社にとって悪影響を及ぼす環境の変化については「脅威」として捕らえることができると思います。

内部環境分析のときにも述べましたが、外部環境分析でも「決め方を決めて」おくことが重要です。新聞記事に掲載されている内容だからといって、正しい情報だとは限りませんし、数値で示されているからといって、図表の作り方によって真実が隠されてしまっている場合も多いものです。内部環境分析と比べて外部環境分析の場合は、情報の確度や信憑性がいつもネックになってきます。世の中には確実なものは、それほど多くありません。外部環境の情報の何を信じて、何を信じないのかといった判断は、戦略を決める上で、非常に重要な要素になってきます。

内部環境分析と外部環境分析の結果を整合する

このように、すでにあるいくつかのビジネスフレームワーク(バリューチェーン分析、PEST分析、ファイブフォース分析など)を駆使して、「強み」「弱み」「機会」「脅威」4つの視点(S,W,O,T)で表したコンセプトがSWOT分析です。

ここまできたらSWOT「分析」としての役割はほぼ終わりですが、当たり前ですが「分析」自体にはあまり意味がありません。示唆を得なければ、これまでの作業は徒労におわります。最も大切な作業はこれから先に待っているのです。4つの視点で情報を集めることだけで終わらせず、その後の総合的な戦略を自分の主観でまとめていく作業のほうが重要なのです。
SWOT分析の場合、分析結果から示唆を得るための方法として、有効なものに「シナリオ・プラニング」という手法があります。シナリオ・プラニングについては別の機会で触れたいと思いますが、簡単にいうと、自社の強みを生かし、弱みを克服することで、想定されるリスクを回避しつつ、チャンスをつかむ戦略を立てるツールということです。
SWOT分析の役割は調査結果を整理するところまでが役目ですが、実務上は分析しただけで終わらせず、かならず戦略立案まで立てるようにしてください。

実務上では、よくフレームワークは穴埋め問題を埋めることに必死になってしまい、きれいな出来上がりを見て満足してお終いということがあります。いつも言っていることですが、フレームを埋めることよりも、フレームとフレームの間にある文脈や相互依存関係を見つけ出すことが、(SWOT分析に限らず)すべてのフレームワークの一番のメリットなのです。その文脈や相互依存関係を、ストーリー立てて戦略に落とし込む作業のひとつが、シナリオ・プラニングですが、結構役に立つツールなのでお勧めします。ぜひ試してみてください。

以上。SWOT分析の進め方については、これでおしまいです。

経験上、マーケティングやビジネス関連のフレームワークの勉強には、イラスト動画が一番効率的だと思うので、作ってみました。

SWOT分析でできることと、その限界

SWOT分析の進め方については、終わりましたが、そもそもSWOT分析は、なぜ一番人気なのか私見を述べてみたいと思います。

私は、人気の秘密は「わかりやすさ」と「網羅性」にあると思います。内部と外部、ポジティブとネガティブ。MECEですね。

世界を、ざっくりと望ましい状況と望ましくない状況に分けて、望ましい状況を導いた(または導けると思える)要因が自助努力であるのか、それとも自分の力の及ばない力のおかげなのかを把握することで、真摯な態度で自分のことを客観視し、望ましくない状況については、望ましくない状況を自分たちの努力によって挽回できるのか?出来なければ回避するにはどうすればいいのか?を事前に把握して対策を練れば、きっと勝てるはず。

わかりやすいですね!流れるようです。
俯瞰的に多面的に、モレなくダブりなく分析しさえすれば、勝てそうな戦略が思いつきそうです。でも、シンプルでわかりやすければ、それでいいのでしょうか?

説得力のあるSWOT分析は戦略としては失敗する

逆説的ですが、SWOT分析の結果、満場一致で誰もが納得する戦略を立てることができたとしたら、それは戦略として失敗です。
なぜならば、簡単に競合に予測されてしまうし、市場や顧客には驚きやインパクトを与えることが出来ないからです。顧客は、これまで想定もしていなかったようなことを、想定もしていない方法で提供されることで驚き、市場はインパクトをうけるのです。
そしてそのためには、競合が想定できないような(つまり非常識な)考え方で商品やサービスや提供の仕方を変えていく必要があるのですが、そんな状況で、SWOT分析はどこまで役に立つのでしょうか?

業界や競合から非常識と思われることをやるには、常識的な分析結果や調査結果を否定し、逆張りをすることによるリスクをとる必要があります。リスクといっても失敗リスクだけではありません。失敗にたどり着く前にも様々なリスクが存在します。

たとえば、SWOT分析の結果、自社の弱みが「販売チャネル網」が貧弱なことであり、逆に競合の強みの源泉が販売チャネル網だとわかったとします。そんな時、業界の非常識である通信販売やネットによる直接販売を行うことで、競合の販売チャネルを無力化することができるかも知れません。しかし、これを実現するためには、これまで協力してくれた販売パートナからの反発が予想されますし、説得に多大な労力がかかることでしょう。もちろん業界には自社も含まれるので、社内の反発も乗り越えなければなりません。

本当に勝つための戦略を実現するのであれば、そういった反発のリスクも視野に入れて、果敢にリスクをとっていくべきですが、SWOT分析では残念ながら、このような分析は出来ません。
なぜならば、ポジティブかネガティブかの判断は、主観的な判断に依存するからです。
上記の例で言うと、もし戦略家の思想が「自社の弱みを強みに変える」ことを着眼点においていれば、ネットが普及した環境を「機会」として見て、自社の販売チャネル網が貧弱なことを「強み」と見るはずです。そして、様々なリスクを勘案して実施するかどうかの判断を下すのです。(実際、かつてアサヒビールやSONY、ASKULなどが似たような戦略をとってシェア逆転を演じてきました。)
つまり、本来、戦略とは分析よりも先に、戦略家の決断があるのです。
このように、残念ながら誰もが納得するようなSWOT分析では、勝てる戦略を立案することはできません。しかしながら、戦略家の決断に沿うような情報を集め、ストーリーを作るための材料を整理することは出来ます。というか、これしか出来ないのです。

SWOT分析についての私見まとめ

これまでSWOT分析の定義、テンプレート、分析の進め方、限界について述べてきましたが、この辺で私見をまとめたいと思います。
身の回りにSWOT分析信者は結構多いのですが、ポジティブもネガティブも分析者の主観に依存していることになかなか気付いていないことが多いです。誰が見てもポジティブなことと、誰が見てもネガティブなことなら簡単ですが、必ずしもそういい切れないことって多いですよね?
ある事象に対して、それをポジティブだと考えるのか、それともネガティブに捕らえるのかによって、自社の「強み」や市場の「機会」が決定され、同時に「弱み」と「脅威」が決定されます。要するに、分析をする人によって分析結果が変わってくるのが、SWOT分析なのです。

人生も同じじゃないですか!?自分の強みを生かしてチャンスをつかもうとしても、常識的なやり方だったら、結局体力た優れていたり、生まれ持った才能が勝敗を左右してしまうことが往々にしてあります。自分の弱点をみつけて乗り越えようとしても、乗り越えられないことって、山のようにあります。危険だと知りつつも回避できないことってたくさんあります。少なくとも、私は経験してきました。結局は、いつかリスクをとって、現状を打開するしかないのです。
SWOT分析と聞くと、多くの方が「強み」「弱み」「機会」「脅威」と、まるでパブロフの犬ように即答されると思います。しかし、繰り返しになりますが、それ以前も以後も大切なことは、あなたが戦略家として下した「決断」は何なのか?なんです。

以上がSWOT分析の「限界」でした。お役に立てましたでしょうか?


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