プレミアシップセミファイナル(2021-22)プレビュー

サラセンズ-ハーレクインズ

サラセンズ(Saracens)は12度目、ハーレクインズ(Harlequins)は6度目のセミファイナルとなる。サラセンズは今季ホームでの試合では1度しか負けておらず、得意のホームで昨年の王者ハーレクインズを迎え撃つ。

サラセンズ

実力、経験、勢いと全ての面での充実がうかがえるチーム。フォワードはほぼベストの編成。プレイヤー・オブ・ザ・シーズンに輝いたベン・アール(Ben Earl)、今年1番の「発見」であるサモア代表マクファーランド(Theo McFarland)などの勢いにこの試合が150試合目の出場となるイトジェ(Maro Itoje)やスウィンソン(Tim Swinson)、ヴニポラ兄弟(Vunipola)などの経験が加わり、非常に強力な8人となった。バックスはベストの編成。デーヴィス(Aled Davies)-ファレル(Owen Farrell)の軸に、ミッドフィールドでトンプキンズ(Nick Tompkins)、デイリー(Elliot Daly)が加わることで落ち着きをもたらし、バックスリーではグード(Alex Goode)、メイトランド(Sean Maitland)の経験に今季トライ王のメイリンズ(Max Malins)が彩を添える。ベンチには今季178得点で得点ランキング3位につけるロゾウスキ(Alex Lozowski)やイズィークウェ(Nick Isiekwe)などが控え、非常に強力な23人に仕上がった。

ハーレクインズ

彼らの最大の武器であるバックスはベストに近い編成。両ウィンガーのマーリー(Cadan Murley)とグリーン(Tyrone Green)はそれぞれここまでゲインメーター1,500m、2,000m越えとバックスリーの破壊力は凄まじい。ケア(Danny Care)とスミス(Marcus Smith)は強力なバックスリーを輝かせる術を熟知しており、引き出しも多数。スミスに良いボールを供給し続けてチャンスを創り出したい。フォワードは最終26節からの変更はなし。マーラー(Joe Marler)、コリアー(Will Collier)の強力なスクラム、ウォーカー(Jack Walker)の確実なラインアウトなどフロントローを中心にセットピースの強みを活かしてリズムをつくりたい。ベンチにはロウ(Wilco Louw)やノースモア(Luke Northmore)などの実力者も控えており、サラセンズ相手に総合力の試されるゲームとなる。

展望

今季プレミアシップ最多得点のサラセンズに、強力バックスを擁するハーレクインズが挑む構図となる。サラセンズが大崩れすることは考えにくく、数少ないチャンスの中でサラセンズのディフェンスを相手に創造力豊かなハーレクインズのアタックがどれだけ穴を空けることが出来るかが最大の注目点となる。

サラセンズは今季タックル数330越えのアール、バックスの肝トンプキンズを中心にディフェンスからリズムをつくり、フォワードパック8人を中心としたフィジカル面の強みを全面に押し出しながらゲームを運びたい。バックスはどこからでもスコア可能で、メイリンズ、メイトランドの両ウィンガーが虎視眈々とスコアを狙う。また、ベンチに今季得点ランキング3位のロゾウスキが控えていることも心強い。

一方のハーレクインズは相手より少しでもスコアで上回ることを目指すスタイル。破壊力抜群のバックスを輝かせるために、セットピースやジェネラルプレーでのフォワードの健闘が絶対条件となる。その点では今季素晴らしいスクラムを見せているコリアーが注目選手。とにかく質の高いボールをスミスに供給し続けたい。

両チームともにベンチも強力で80分間常にゲームが動く可能性がある。特にクインズは逆転勝ちが多く、準決勝の熱も相まって最後の最後まで目が離せない展開となりそう。

注目の対決

アンドレ・エスターハイゼン(Andre Esterhuizen)-ニック・トンプキンズ(Nick Tompkins)

レスター・タイガース-ノーサンプトン・セインツ

レスター(Leicester Tigers)は14度目、ノーサンプトン(Northampton Saints)は10度目のセミファイナルとなる。レスターはホームで12連勝中で、終盤に調子を上げてきたノーサンプトンを得意のホームに迎える形となる。

レスター

ボースウィック(Steve Borthwick)のもとで成長中のレスターはとにかく堅い印象を与える23人を編成。フォワードでは今季素晴らしいパフォーマンスを見せているモントージャ(Julian Montoya)が復帰しチームに勢いを与える。またリーベンバーグ(Hanro Liebenberg)、レッフェル(Tommy Reffell)、ヴィーサ(Jasper Wiese)からなる強力バックローは健在。彼らの出来が今のレスターの調子を測るひとつの指標と言っても過言ではない。フロントローも非常に強力で100キャップ目となるジョー・ヘイズ(Joe Heyes)もベンチに控える。バックスはベテランと若手の組み合わせが絶妙。中でもヤングス(Ben Youngs)-フォード(George Ford)のペアリングからファンポーフリー(Jack van Poortvliet)とバーンズ(Freddie Burns)の2人へと繋ぐ流れは華やかで、80分間強力な芯を通すことが出来るのが強み。

ノーサンプトン

オーガスタス(Juarno Augustus)、スコーサン(Courtnall Skosan)などがメンバー入りし、非常に攻撃的なチーム編成となった。今季のチームの絶対的な柱であるミッチェル(Alex Mitchell)とこの試合がプレミアシップ50キャップ目となるビガー(Dan Biggar)がコンビを組み、鮮やかなバックスを操る。フォワードでは強力なレスターのスクラムに対抗するため、スクラムの強いイヨグン(Emmanuel Iyogun)を入れてきた。ダイナミックなキャリーが持ち味のオーガスタスもメンバー入りし、フォワードは全体的にレスターの強さに対抗することを意識した編成となった。

展望

レギュラーシーズン首位のレスターに、4位のノーサンプトンが挑むという構図は変わらない。

レスターは今季プレミアシップ最小失点の堅い守り、強力フォワードの堅実なプレーを中心にゲームを運びながらフォードの右足で3点を重ねるスタイル。この試合でもフォワードを中心にボールを支配し、ケリー(Dan Kelly)やポッター(Harry Potter)などの縦に強いランナーをフォードの正確な分配で最大限に活かしチャンスをつくりたい。また、強力フォワードから生み出されるドライビングモールも有効な選択肢のひとつであり、ひとつのペナルティで一気にスコアまで持って行く力もある。

一方のノーサンプトンは今季の得点数はサラセンズに次ぐ2位に着けており、この試合でも超攻撃的なラグビーを目指す。中でもミッチェルは今季24トライに関わっており(11トライ、13アシスト)、彼を中心に絶好調のフリーマン(Tommy Freeman)やスコーサンなどの優秀なランナーたちにできるだけ多くボールを運びたい。フォワードが強力なレスターのパックと互角以上に渡り歩く事が勝利への絶対条件。不用意な反則も命取りになる。

繰り返すが、不用意な反則が大きな痛手となるであろうこのゲーム。両チームともに有秀なキッカーもおり、確実な3点の積み重ねも重要となる。レスターのフォワードが輝くかノーサンプトンのバックスが火を吐くか。

注目の対決

ベン・ヤングス(Ben Youngs)-アレックス・ミッチェル(Alex Mitchell)

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