海外ラグビー事情(6/7版)

今回の内容は盛りだくさん。その中でも気になった情報を中心に世界各地の試合結果も交えてお伝えする。

いつの日か必ず

今季のイングランド、チャンピオンシップ、チャンピオンシップカップのダブル王者であるイーリング(Ealing Trailfinders)がここ数日で複数の契約を発表した。

まずは元イングランド代表ヘッドコーチで現在はレンスター(Leinster)でコーチを務めるスチュアート・ランカスター(Stuart Lancaster)の息子で、元イングランドU20代表のダン・ランカスター(Dan Lancaster)と来季に向け契約を結んだことを発表。ダンは今季はレスター(Leicester Tigers)に所属しているが登場機会は少なく今季はわずか5試合の登場のみ。まだ若くこれからの選手であるが、ゲームタイムを増やすという点では今回の契約は非常に素晴らしい機会になるはずだ。

またダン・ランカスターに加えて、ドラゴンズ(Dragons)からウェールズ代表のジョナ・ホルムズ(Jonah Holmes)、スーパーラグビー、ワラターズからカルロ・ティザーノ(Carlo Tizzano)の獲得を発表。

本来ならば今季チャンピオンシップの優勝チームはプレミアシップへの昇格権を得るはずだったが、イーリングは昇格基準のうち、ホームスタジアムの収容人数に関する条件を満たしておらず(10,001人以上収容の基準に対し、イーリングのホームは5,000人収容)、昇格は見送りとなっていた。ラグビー・フットボール・ユニオン(RFU)は将来的な昇格に向けてチャンピオンシップのチームを支援していくとの声明を発表したが、先行きは不透明。昨年に続き今年も確実な補強を行っているイーリング。来たる「その時」に向けてこれからも歩みを続けていく。

それぞれの描く未来

プレミアシップ、グロスター(Gloucester)、バース(Bath)が来季以降の構想について発表を行なった。

まずはグロスター(Gloucester)。ヘッドコーチのジョージ・スキヴィントン(George Skivington)がクラブと複数年契約を結んだと発表した。2020年にグロスターに加わった彼は2年目の今季、最終節までプレーオフ進出争いを繰り広げるなど昨年の11位からチームを大きく躍進させた。

グロスターは中心選手との契約延長も発表。スコットランド代表で、ブリティッシュ・アンド・アイリッシュ・ライオンズのスター選手クリス・ハリス(Chris Harris)、アルゼンチン代表のサンティアゴ・カレーラス(Santiago Carreras)は来季以降もグロスターでプレーを続ける。

またバース(Bath)も来季に向けたコーチングスタッフの刷新を発表。現マンスター(Munster)ヘッドコーチのヨハン・ファングラーン(Johann van Graan)がヘッド・オブ・ラグビーとして迎えられ、今季最下位と低迷したチームの立て直しを図る。今季指揮を取ったディレクター・オブ・ラグビーのスチュアート・フーパー(Stuart Hooper)はジェネラル・マネージャーとしてチームに残り、ファングラーンをサポートする予定。来季はアンソニー・ワトソン(Anthony Watson)を失うバース。新しいコーチのもとチームをどのように立て直すか。

欧州の頂点決まる

先月28日、ハイネケン・チャンピオンズカップの決勝が行われ、2年連続の決勝進出となったラ・ロシェル(La Rochelle)がレンスター(Leinster)を24-21で破り、初めて欧州の頂点に立った。

開始9分までにジョニー・セクストン(Johnny Sexton)のブーツで6点を先制したレンスター。ルール(Raymond Rhule)のトライで反撃を受けるも、その後もセクストンが得点を重ね、前半を12-7で折り返す。後半に入ってからはPGの応酬が続き、54分までにレンスターが18-10とジワリと差を広げる。61分にラインアウトからのドライビングモールでトライを決められ1点差に迫られるも、相手のファウルプレーもありPGで再び突き放す。実にレンスターらしい堅い展開。時計も着実に進み、このままレンスターが王座を奪還すると思われた。

しかしここからロシェルのヨーロピアンドリームが始まる。69分にペナルティを得ると、ブライス・デュラン(Brice Dulin)の左足で大きく前進する。点差は4点、トライを目指し猛攻を繰り返すロシェル。反則は犯すもなんとか守り続けるレンスター。この10分近くに及んだレンスターゴール前での戦いは79分、アーサー・ラティアー(Arthur Retiere)が密集付近の一瞬の隙をつきトライを決めヨーロピアンドリーム完遂。ロシェルが初の欧州王座に輝いた。2010年に初めてTOP14に昇格し、その後降格も経験したロシェル。喜びも一入だっただろう。

今後ロシェルはユーロとのダブル王者を目指し、初のTOP14制覇を狙う。

王座に向けて

スーパーラグビー・パシフィック

スーパーラグビーは準々決勝が行われ、上位4チームが勝利を収める順当な結果となった。準決勝はクルセイダーズ-チーフス、ブルーズ-ブランビーズの顔合わせ。個人的にはブランビーズに期待したい。

TOP14

最終節の計7試合が行われ、残るプレーオフ進出圏内の3枠をかけて6チームが争った。

まずカストル(Castres Olympique)が首位、モンペリエ(Montpellier)が2位となり準決勝からの登場となる2位以内を決めた。そして1番の注目のプレーオフ進出争い。前節終了時点で4位のロシェルから9位のクレルモン(Clermont)までがその可能性を残していたが、ほぼ順当な結果で大波乱は起きず。残る3枠はトゥールーズ(Toulouse)、ロシェル、ラシン92(Racing92)が手にした。

そしてもうひとつ注目された13位争い。ブリーヴ(Brive)とペルピニャン(Perpignan)がPRO D2決勝の敗者との入れ替え戦にまわる13位を避けるべく争った。両チームともに勝利を収め、ブリーヴが12位をキープし降格の危機を免れた。

一方PRO D2も決勝が行われ、バイヨンヌ(Bayonne)がモントワ(Stade Montois)を49-20で下し、TOP14昇格を決めた。敗れたモントワはペルピニャンとの入れ替え戦にまわる。

プレミアシップ

最終節、プレーオフ進出残り1枠をかけて、4位のノーサンプトン(Northampton)と5位のグロスター(Gloucester)が争った。勝てばプレーオフ進出を決めるノーサンプトンはトミー・フリーマン(Tommy Freeman)のハットトリックを含む計10トライの猛攻で下位のニューカッスル(Newcastle)を圧倒、順当にプレーオフ進出を決めた。

一方のグロスターも主力を休ませたサラセンズ(Saracens)を54-7と圧倒したが、ノーサンプトンも勝ったため一歩及ばず。昨年の11位から大きく躍進し、5位でシーズンを終えた。またバース(Bath)はウスター(Worcester)に敗れ、まさかの最下位でシーズンを終えた。シーズンを通しての詳しいレビューはまた次の機会に。

準決勝はサラセンズが昨季王者のハーレクインズ(Harlequins)を、レギュラーシーズン1位のレスター(Leicester)はノーサンプトンをそれぞれホームに招く。プレビューは後日投稿予定。

ユナイテッド・ラグビー・チャンピオンシップ

プレーオフ準々決勝が行われ、数々のドラマが生まれた。まずはレンスター(Leinster)から。前週にチャンピオンズカップのファイナルで敗れたレンスターはこの日非常に危険だった。先月末に怪我から復帰したばかりのジョーダン・ラーマー(Jordan Larmour)がこの日は4トライに絡む活躍(2トライ、2アシスト)でグラスゴー(Glasgow Warriors)を76-14の大差で下した。一方のグラスゴーはヘッドコーチのダニー・ウィルソン(Danny Wilson)がチームを退くことを発表。来季の立て直しに向けて後任を探す段階に入る。

アルスター(Ulster)はマンスター(Munster)を下し準決勝へ駒を進めた。自慢のバックスが縦横無尽に動き回りマンスターを36-17で下したが、注目すべきはジェームズ・ヒューム(James Hume)。この日彼は1トライ、3アシストと非常に素晴らしいパフォーマンス。昨年代表初キャップを得た彼は現在23歳。ぜひ覚えて欲しい選手の1人である。

残りの2試合は南アフリカ勢が勝利。ブルズ(Bulls)とストーマーズ(Stormers)が準決勝進出を決めた。

準決勝はレンスター-ブルズ、ストーマーズ-アルスターの組み合わせ。プレビューは後日投稿予定。

テストに向けて

来たるテストシリーズに向けて各国が代表スコッドを発表。

トンガ代表

元ニュージーランド代表のチャールズ・ピウタウ(Charles Piutau)やオーストラリア代表のイズラエル・フォラウ(Israel Folau)などが入り話題性豊かなスコッドに。個人的な注目はウィリアム・ハヴィリ(William Havili)。今季自身初のスーパーラグビーでのプレーでモアナ・パシフィカ(Moana Pasifika)にて素晴らしいパフォーマンスを見せており、テストレベルでも戦えることを証明したい。左足からのキックは非常に正確で、なかなかフライハーフを固定できないトンガ代表の救世主になれるであろう存在。ただ経験の面ではファイヴァ(James Faiva)の方が上であり、しばらくはベンチからのスタートになりそう。もう1人の注目はソロモニ・フナキ(Solomone Funaki)。彼もモアナ・パシフィカで安定した仕事ぶりを見せており、テストレベルでも十分に活躍出来そう。ビッグネームも加わりチーム編成も注目されるが、個人的にはまずはファイヴァとハヴィリのパフォーマンスに注目したい。

サモア代表

ベテラン選手が多い中に、今季スーパーラグビーで経験を積んだ選手達が加わった伸びしろを感じさせるスコッド。中でも注目はエナリ(Enari)とタウマテイネ(Taumateine)の2人のスクラムハーフ。今季モアナ・パシフィカの中心であった2人はキックを織り交ぜつつ攻撃的な姿勢を維持することができ、80分通して質の高いパフォーマンスでサモアのゲームのレベルを一段と上げることが出来ると期待している。また、ヘンリー・ティーメ=スタワーズ(Henry Time-Stowers)のダイナミックなキャリーは今年のスーパーラグビーのハイライトのひとつで、彼の成長した姿をテストレベルでもぜひ見たい。

フィジー代表

元ニュージーランド代表のセタ・タマニヴァル(Seta Tamanivalu)がスコッド入りし話題を集めたが、全体的に充実を感じさせるスコッド。絶好調のタヴァタヴァナワイ(Tavatavanawai)は今回は選ばれておらず多くのファンを落選させたが、それでも今年のスーパーラグビーで素晴らしいパフォーマンスを見せたハンボシ(Habosi)やマタイリ(Mataele)などが入り強力なランナーは揃っている。注目はテティ・テラ(Teti Tela)。長年フライハーフはヴォラヴォラ(Ben Volavola)が務めてきたが、彼の経験が加わることで80分間ゲームに芯を通すことが出来るだろう。アルバート・トゥイスイ(Albert Tuisue)もプレミアシップで安定したパフォーマンスを見せており活躍が期待される。

イングランド代表

バーバリアンズ、オーストラリアツアーに向けてのトレーニングキャンプに参加する35人の選手が発表された。初選出は5人。中でもワスプス(Wasps)のチャーリー・アッキンソン(Charlie Atkinson)は今季、弱冠二十歳とは思えない落ち着きでチームを引っ張り、チャンピオンズカップにて昨年の欧州王者であるトゥールーズ(Toulouse)を破った試合でも抜群のパフォーマンスを披露していた。また個人的な注目はジャック・ウィリス(Jack Willis)。怪我もあり長い間ゲームから離れていたが、順調ならば彼は現在世界最高のターンオーバーキングだと私は見ている。ワールドカップカップに向けて再び調子を上げていってほしい。

※プレミアシップの準決勝に進出した4チームからは今回は選出されていない。

南アフリカの未来

南アフリカに本拠地を置く5チームが来季からヨーロッパ最高峰の大会、ハイネケン・チャンピオンズカップ、チャレンジカップに参戦することが発表された。構想自体は2年以上前からあったとの事で、今まで対戦する機会のなかったイングランド、フランスのトップクラブとの対決も可能となり南アフリカにとって大きな一歩となりそう。

URCを戦う4チームに加えチーターズも参加予定で、今季URCの結果をもとにストーマーズ、シャークス、ブルズがチャンピオンズカップへ、ライオンズ、チーターズがチャレンジカップへの参加権を得た。

その他最新情報

・ダン・リディエイト(Dan Lydiate)がオスプリーズ(Ospreys)と契約延長。

・ンタマック(Ntamack)兄弟がトゥールーズ(Toulouse)と契約延長。兄ロマンとは2028年までの超大型契約。

・スーパーラグビー、ハリケーンズのウェス・フーセン(Wes Goosen)がエディンバラ(Edinburgh)と契約。

・ロンドン・アイリッシュ(London Irish)がオーストラリア代表オリー・ホスキンス(Ollie Hoskins)と契約延長。

・リッチー・モウンガ(Richie Mo'unga)がニュージーランド協会、クルセイダーズと2023年まで契約延長。

・セール・シャークス(Sale Sharks)のサイモン・ハマースリー(Simon Hammersley)が引退を発表。

・ノーサンプトン・セインツ(Northampton Saints)のレジェンド、トム・ウッド(Tom Wood)が引退を発表。

・レンスターが今季限りで引退した元アイルランド代表、ブリティッシュ・アンド・アイリッシュ・ライオンズのショーン・オブライエン(Sean O’Brien)をコンタクトスキルズコーチとして来季より招聘。

・グレゴリー・アルドリッド(Gregory Alldritt)がラ・ロシェル(La Rochelle)と2026年まで契約を延長。

・元イングランド代表のテイマナ・ハリソン(Teimana Harrison)がフランスPRO D2のプロヴァンス(Provence)と契約。

・ロンドン・アイリッシュが多数の退団選手を発表。ニック・フィップス(Nick Phipps)は日本行きの噂もあり。

・アイルランド代表のキース・アールズ(Keith Earls)がアイルランド協会、マンスターと2023年のラグビーワールドカップ終了まで契約を延長。

・元イングランド代表のネイサン・ヒューズ(Nathan Hughes)が噂されていたクレルモン行きを否定し、日本行きを公言。チームは未定。

・アルスターのマイケル・ラウリー(Michael Lowry)が顔の手術のため、ストーマーズ戦欠場。URC第18節で右目周辺に怪我を負っていた。

今後の予定

今後は細かい情報も漏らさずに今までより更新頻度をあげる予定。引き続きコメント等も募集中。

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