「ただいま」って言われて、「おかえり」って言える嬉しさを忘れないようにしたい

もうすぐつくLINEがあって、そわそわしながら部屋の片付けをする。テレビでは夜のニュースが、桜前線とともに明日の天気を伝えていた。プライムタイムから深夜のバラエティ番組に移行してく、そんな二人にとってはいつもの時間帯だった。

その夜くることは少しだけ想定外だったから、部屋を見渡しながら順番に片付けをしていった。ベットの上の掛け布団を整えてみたり、テーブルの上の物を片付けてみたり。シンクの食器を洗ってみたり、窓をあけてちょっと換気してみたり。それでももう少しだけ時間があるみたいだったから、とっておいたストッキングで部屋のすみっこを拭いてみたりもした。

会うのは私にとって久しぶりだったから、本当はドアを開けた瞬間に抱きつきたい気持ちだったけど髪の毛の乾き具合が気に入らなかった。なんなら化粧もしていないし、パジャマはよれよれで。外から帰ってくる人を堂々と迎え入れるには寝る寸前すぎた。

いつも通りに「もっと静かに入って」とかなんとか怒りながらドアを開けてしまう。久しぶりだからか、なんだかちょっとかっこよく見えてしまう。そうは言ってもすっぴん・パジャマの私はうつむき気味に出迎えたところへ冒頭のアレ。

「ただいま〜」

「・・・・・・おかえり。」

この挨拶は、実家暮らしの頃とかは全くなんのありがたみもなく交わしていた。なんなら思春期の頃はたまに返事すらしていない時もあったんじゃないだろうか。一人暮らしが長くなった頃には、そんな挨拶をかわしてたことさえ忘れていた。

だけど、好きな人が「ただいま」って言って、私が「おかえり」って言える。そんなささいなことで嬉しくなってしまう時期は、たとえば付き合いたてのわずかな期間だけかもしれない。でも、そんな当たり前を、もっと大切にできてたらって後悔があるから。これからたくさん「おかえり」と「ただいま」を言える暮らしがしたい。

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