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#はじこい に夢中のわけ

薄眼を開けて斜め姿勢で見始めた「初めて恋をした日に読む話」のドラマに、ドはまりしている自分の傾向について色々考えてみる。

「初めて恋をした日に読む話」、略して「はじこい」は、集英社の漫画雑誌「Cookie」に連載中の漫画で、作者は持田あきさん。それを元にしたドラマが、現在火曜10時から放送中だ(2019年2月現在)。

「Cookie」はその昔、月刊誌「りぼん」で活躍した作家さんたちが、その後流れ込む場所(?)として創設されたような印象があった。「別冊マーガレット」の路線とは違う、目がキラキラで純愛系。わたし自身は、小学2年生の9月から「りぼん」を購読している筋金入りの少女漫画好き。

初めて買った「りぼん」の巻頭掲載は「ときめきトゥナイト」で、蘭世が人間になる決心をして何かを飲むシーンが載っていた。「星の瞳のシルエット」はコミックス3巻冒頭掲載分の話だったのまで鮮明に覚えてる。よっぽど衝撃だったのか。何十年前だか計算もしたくないけど。

ただ、流石に「りぼん」は小学生までで読むのをやめていて、最後は矢沢あいの「ご近所物語」くらいで記憶が途絶える(ただ矢沢あい氏は大好きなので、個別に「パラダイスキス」「NANA」などは追いかけてる)。持田さんがデビューした頃は知らないし、彼女の全盛期がいつを指すのか、代表作は何か?といわるとよくわからない。お姉さんの、同じく「りぼん」作家の槙ようこさん作「愛してるぜベイベ」だけ既読なので、その人の妹という認識程度でした。※ちなみに、現在何十年かぶりに「りぼんマスコットコミックス」を買ってるのですが、別作家さん連載の「ハニーレモンソーダ」がめちゃくちゃいいです。

話を戻し。今回の作品は、作者が初めて大人を主役にして描いたのかな?と思う。多分ご自身と同年代の。

「りぼん」始め王道少女漫画を読み育った(であろう)アラサー漫画家の渾身の一昨は、結構面白かった。でもAmazonの書評でもちらほら書かれてたけど「古臭い」。そう、なんか昭和くさいのはなんでだろう。あらすじは、自分は東大に落ちて、人生瞑想中のアラサー女性塾講師が、マイルドヤンキーのピンク頭の17才イケメンを東大に導く話。そこに恋愛を絡める。既視感がだいぶある。

ただ、新しいかはわからないけれど、モテなかった女子が一気に3人に言い寄られる「逆ハーレム」という展開を作り、それぞれ14才下、イトコ、昔の同級生バツイチという「ちょっとずつ難あり」設定にしたのが特徴なのかと。また、主人公たちは端正な顔を思い切り崩して笑いに走るシーンも多く、その辺もコミカルで面白い。

とは言え、少女漫画ってどうしてもストーリーテリングの面で弱くなりがちで、その都度「割と思いつきでネームを考えた」感が漂う。その筆頭はキャラ同士が偶然に会いすぎるところ。なんでここに現れた!と突っ込みたいシーンが満載。

偶然となんとなくで組み立てた物語は全体的にはチープになりやすく、それを画力(デッサン力はないけど線が綺麗)と描き込みとトーン貼りで頑張って上質に見立てた作品というイメージ。むちゃくちゃ言ってるけど決して嫌いではない。むしろ好き。シーンごとの描写は繊細で美しいし、セリフもくさいけど胸に刺さる。つまりシーンとセリフづくりはとてもうまいけど、伏線張りとか時系列の組み立てが弱いってことなのだろうか。

この、作者さん得意のシーンづくり、台詞回しをリスペクトしながら、ドラマ制作のプロたちが紡ぎ直したドラマ版「はじこい」は、昇華と言っていい出来だと思った。

その筆頭は、ユリユリ演じる横浜流星くんのビジュアル、細やかな演技力なのだけど、それはあとでじっくり書くとして。いいと思うところを羅列してみる。

例えば、漫画では偶然に会いすぎるシーン展開を、本当にうまいこと全部回収してる。偶然ではなく、必然に変えていった。

■第5話。ユリユリが順子の家に日参するシーンを付け加えたので、順子と山下の朝帰りシーンに遭遇する伏線を張れたところ(漫画では偶然公園で会いましたね)。

→そもそも、「ユリユリが、夜遅くなったので順子を家まで送る」→「順子の家がわかる」→「翌朝から早朝学校に行く前、順子の家の前を通る」というストーキング展開を追加したのがうまい。

この世は大概イケメン無罪なので、今回ネットでドラマ感想を読むと「間違いなくストーカーだけどユリユリだから許される」という意見が多い。

■第4話。漫画の設定では塾の合宿が秋で、高校の旅行がかぶる(そんな中途半端な時期に合宿するの?)。それを、合宿の季節をGWに変えたことでスムーズになったところとか。

→そもそも、ドラマの時系列では、冒頭は2017年末から始まっていて、今年2019年にユリユリが受験する流れになってる。

なぜなら、センター試験は2019年の今年を持って終わりになり、2020年から大学の受験体制が変わってしまう。このドラマは今年、この1月〜3月しか実現できなかった、すごい賞味期限ギリギリのところで実現してる。逆に言えばとっても美味しい時点でこの世に出た感じがする。

■古臭くなりがちポイントを現代に置き換える。

→第5話の、美和が順子の写真をユリユリにあげるところ。

原作では、美和がわざわざ高校まで出向いてプリント写真をあげてる(普通高校までいかないし!)。けど、ちゃんとスマホで画像を送る形に変えた。確かにそうだ。

■1話ごとに勉強の内容と物語のコンセプトを絡める。

→最初の方は思い出せないが(おい)、第4話ならベンサムの幸福論、第5話なら現代文の読解についてテーマを掲げ、最後にキャラにそれに絡んだセリフを言わせる。ユリユリには「俺、今結構幸せなんだけど」。山下には、、、なんか長すぎて思い出せないけど「高三男子が担任講師(順子)の画像をスマホで毎日見てることへの解釈」を、順子に求めるセリフを現代文の問題っぽく言わせるところ。

そう言えば、第3話は梓弓のエピソードだったか。なんかそういうところが1話ごとに「いいもの見た!」感をくれる。

■大事。ユリユリに横浜流星を持ってきたのがとてもよかった。

トッキュウジャーはリアルタイムで何回か見てるはずなのに、ヒカリ役の横浜流星くんの顔は全く思い出せない。志尊淳くんの分厚い唇しか出てこない。きっとそもそも興味がない(ごめん)。でも録画したDVDがいくつか残ってるから、いつか見てみよう。

今回、ドラマが始まる前は「覚えにくい顔だな」くらいの認識でしたが、色々な人の感想を見ると、「イケメンなのに薄味で印象に残りにくい彼が、どピンクの髪にすることで、ものすごいインパクトが生まれて顔を覚えられた」という意見がとっても多い。

そうか。。。ピンクって意味あるんだな。あと、ピンク頭にあわせてピンクのアイライン入れてるところとか、芸がめちゃくちゃ細かくてときめく。

外観だけではなく、声がとても絶妙だ。高すぎず、低すぎず、幼すぎず、大人すぎず。第5話、順子に電話をかけて「元気?」と問うシーンで数多くのアラサーとアラフォー女子が萌え死にそうになっている姿を実況スレッド的なところで見たのですが、あの声はやばい。そもそも、携帯番号を盗み聞きしたのはかなり前なのに、それを温め抜いて、順子が元気ない日に励ますために初めて奥の手を使う感じが胸を熱くさせる。

あと4話の「ご褒美ください」。「人は本当に興奮すると、キャーとか言ってられない。ウォッウッフ、って変な声が出る」と書かれた実況の感想にめちゃくちゃ吹いた。

うまいことやらないと、ただ気持ち悪いだけのシーンが、ものすごい神がかっていた。

ユリユリに関しては、漫画よりドラマの方が萌え度が半端なく高く(多分、漫画版の「臭いセリフ」を、あのちょっとハイトーンで掠れた声で言うから甘さが加わってSo sweetになって、かなりちょうどいい感じ。意味わからん)、いい。

「いい」以上の語彙がない。

■当て馬キャラたちの作りこみ。

少女漫画で逆ハーレムと言っても、だいたい本命とその他に分かれる。今回は、多分、どこまで突っ切るか不明だけど(原作もまだ連載中だし)、本命はユリユリなんでしょう。

で、ユリユリだけが魅力的では全く面白くなく、グイグイ食い込んでくる当て馬キャラがいないと話が成り立たない。主人公も、一本筋が通っていてフラつかない女子だとこれまた面白くない。優柔不断でフラフラ流されないといけない。それでも主人公が読者から嫌われてはいけないわけで、少女漫画って難しい(30代は少女ではないかもしれないが、もうアラサー少女漫画というカテゴリーは確立されていると思う)。

今回は、東大卒のエリート商社マンのイトコの雅志(でも東大理系なのになんで商社なんだろう。。。よくわからん)、元ヤンで同級生の山下が重要。20年来の片思いを持て余し、もたもたしていて歯がゆい雅志と、突如順子に再会してからグイグイ切り込んでくる山下の対比がかなり面白い。

さらに、本当は他を寄せ付けず誰より頑張りたいユリユリは「18才までお預け」という縛りがあり、その三つ巴感がまさに極上のスパイスになっている。


。。。以上が、「はじこい」第5話までの、すごいよかった点のまとめ。

今後、漫画に追いついてオリジナル要素が加わるとしたら、どうなるのかドキドキだけど、興味が続く限り楽しみたいと思う。


#初めて恋をした日に読む話 #持田あき #横浜流星 #はじこい #深田恭子 #りぼん #Cookie

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