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清水ジャンプの5秒前

朝起きて支度して電車に乗って出社して
仕事が終わって帰ったら寝る

そんな毎日が、およそ8年間、わたしのルーティーンだった。

「つまんないなぁ」

会社の同期と毎日交わしていたこの言葉。

呪文のように呟いては身体に染み込ませていた。


大学生の頃は毎日が楽しかった。
講義を聴くことも、論文を書くことも
恩師や友人と語り合うことも
バイトも、ボランティア活動も。


昔の栄光を思い出しては
今の毎日が嫌で嫌でたまらなくて。
でも、どうすれば抜け出せるのか分からなくて。


現状を打破できない自分が不甲斐なかった。
足を前に進めることができない、足下がガクガク震えているような
この感覚はなんと言えばいいのだろうか。


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スピーチ文全文【リンク】


「わたし、目標ひとつも叶えてないやん!!!」


28歳の誕生日、日差しが暖かく過ごしやすい季節が訪れた頃、
部屋の掃除をしていて見つけた「二十歳(ハタチ)の抱負」。


今から9年前の成人式で、わたしはスピーチをした。
お題は「二十歳の抱負」だ。

懐かしいなぁ〜と眺めていたが
文章を読み進めていくと
およそ1300人の前で宣言した3つの目標を何一つとして叶えておらず
9年間過ごしてしまったことに気がづき、また、あの感覚を思い出す。

有言不実行。すごく恥ずかしい。

「どうしたら前に進めるの。」

モヤモヤが募りつつ、ルーティーンで毎日が足早に過ぎていく。
誕生日から1ヶ月が経とうとしていた。
そんなある日、会社で上司に呼び出された。

上司「社内Webサイトを作って欲しいんだけど」


なぜかこの一言に今までにないワクワクを感じた。
興奮し、話を聞きつつ、身体が前のめりになる。
全身に力がみなぎり、今にも飛び出したくなる感覚を覚えた。
この感情を掴み取りたくなった。この感情はなんだ。


それからはどうすればWebサイトが作れるのか
方法や、作り方を学べる学校を探し、説明会を聞きに行った。
時間も交通費もかかったが、痛くも痒くもなかった。
アドレナリンが「会社が交通費くらい出してくれたらいいのに」という感情を
麻痺させていたのだと思う。

だけど、学校にいく費用や、Webサイト運営費がかさむことから
社内Webサイトを作る話は無くなってしまった。


やっぱり前に進めないのか。


「いやだ」


身体にワクワクを覚えた時、それはチャンスの神様が
前髪を見せて下さっている時だと思う。
ただ、神様は気まぐれだからすぐに何処かへ行こうとする。
掴まなければ、当分、いや一生、神様は現れてはくれないかもしれない。
そんな勝手すぎる空想が頭の中を駆け巡る。


でも、空想だって別にいい。誰にも迷惑をかけていないし。


会社は関係なく自分の意思でWebサイトのデザインを学べる学校に
行くことを決めた。


決意から1年が経った今、ルーティーンは変わらない。
ただ・・・・・・


朝起きて支度して電車に乗りながら「読書をして」出社して
仕事が終わって帰ってきたら「パソコンの勉強をして」寝る


前に進めているのかは分からない。
だけど、足下に覚えた、あの感覚はもうない。


思い切って大きな決断を下すことを
「清水の舞台から飛び降りる」という。


チャンスの神様の前髪を掴もうと走っていたら
清水寺から落ちてしまっていた。
あの前に進めずガクガク震えている感覚は
清水寺の高さに怯えていたからなのかもしれない。

続く


<あの感情に今、名前をつけるなら>
清水ジャンプの5秒前

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