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【読書記録】世界から猫が消えたらなら川村元気

世界から猫が消えたらなら 

この本は、川村元気さんという作家さんではなく本業がプロデューサーの方が書いた本です。悪人とか告白とか、原作が小説の映画のプロデューサーさんなので、映画にできる小説を探すために沢山本を読むのだそうです。 

余命僅かな主人公のもとに、悪魔があらわれて取引を持ち掛けます。世界から何かを消す代わりに、自分の寿命を一日伸ばしてくれるというのです。

この本は、贈り物に選ぶ本の一つです。どんな人に送るのかというと、生きるのが嫌になったり、人に心を開けないと苦しそうな人に言葉をかけずにこの本を贈ります。 

世界から~が消えたなら。主人公は、大切に飼っている猫を消すことを選ばずに死を選びます。私はこの本の、最後のところがすごく好きなのですが、彼の父親の話です。

父は、あまり話すのが得意でななく、お母さんが病気でもうあと数時間というときに、病院に行かずに自分の時計店で、母親の壊れた時計を直します。

主人公の息子にも、うまく気持ちを伝えるのが苦手で、贈り物をします。

ヨックモックの古い缶の中に入った沢山の切手のプレゼントが、彼と父の対話だった。外国に旅行に行った父が、つたないフランス語で切手を買い、はがきに貼って自分へ送ってくれた所を想像して、胸がいっぱいになる。

解説に、この本は、まとめ買いすることをお勧めしますと書いてあり笑いました。
でも本当にそういう本です。不思議なのは、送る人によって伝えたい気持ちが変わる気がする所。ある人にはエールになり、ある人には感謝を伝える術になり、ある人にはラブレターになりそうな本。

私は本を読むのは好きなのですが、短い言葉で自分の気持ちを伝えるのが嫌いだし、苦手です。やってもやっても伝わらない気がするから。だから贈り物が好きで、気持ちのこもった贈り物の方が、うまく相手に気持ちを伝えられるんじゃないかなって思います。

文学は、言葉を使って、言葉にならないことを表現するんだそうです。確かに絵もそうです。
花を描いているとしても、花が咲いていることを伝えたいわけじゃないんですよね。会話もそうかもしれない。実際に話す言葉の向こうに、別な意味があったり、伝えたい事がありすぎて、言葉にできなかったりするのかもしれない。

最後のページに、しおりが挟まっていました。

「世界から~が消えたなら」ここに大切な人の名前を書いて贈れば、夏目漱石の月が綺麗ですねの代わりになるそうです。本は何度か人に送ったことがありますが、まだこのしおりは誰にも送っていません(笑)