マガジンのカバー画像

経済

467
運営しているクリエイター

記事一覧

固定された記事

日本が貧乏国に転落したのは日本人がエコノミック・アニマルだから

日本が貧乏になっているという言説が増えている。 実のところ、1人当たり実質GDP成長率は他の主要先進国と比べて低くなかったのだが、賃金が上がらない+円安のために、国民の購買力が相対的に著しく低下している。プラザ合意後によく聞かれるようになった「内外価格差」という言葉も、いつの間にか「高い日本」から「安い日本」の意味に逆転している。 その急速な貧乏化の原因だが、日本を敗戦からわずか23年後(1968年)に世界第二位の経済大国へと成長させ、1979年にはアメリカ人に"Japa

円相場の長期チャート

円為替レートの長めのチャートを示す。 ロシアのウクライナ侵攻が「有事の円買い」ではなく円安を引き起こしている。 👆の逆数の1円=○ドルとしたもの。 👆の月次版を1965年から。 同期間の名目実効為替レート (27 economies)。 日本は他国よりもインフレ率が低い状態が続いているので、実質為替レートは名目為替レートよりも円安が進んでいる。先進国通貨対象のnarrow指数では1969年の水準まで減価している。 円安の原因は一言では説明できないが、思い切って単純

小林慶一郎『日本の経済政策』・・・条件付で★★★★☆

財政再建派ということでネットの経済論客には評判の悪い小林慶一郎の近著『日本の経済政策』は、小林の分析を「一つの説の紹介」として読むのであれば、1990年以降の日本経済と経済政策を改めて振り返り見る本としては悪くないと言える。 これ👇が小林による総括だが、足りない点が幾つかある。 主な要因を列挙すると、 人口減少と高齢化 クリントン米政権による1993年からの円高誘導 1990年代後半からのICT革命 エレクトロニクス産業における大韓民国・中華民國メーカーの急成長(

キャッシュレス化と政府・日銀の無能さ

こう👇なっているのは政府と日本銀行がアホand/orワルだから。 真の意味でのキャッシュレス化とは、👇の1~3のプロセスを手数料ゼロかニアゼロで電子化することだが、 買い手が自分の預金口座から現金を出金 買い手が売り手に現金を支払って決済完了 売り手が自分の預金口座に現金を入金 現在の日本における◯◯payなどのキャッシュレス決済サービスは似て非なるものなので、5年半前の記事👇にあるような小売店の負担が発生する。 (クレジットカード、ICカード、バーコード・QRコ

日本経済の「意外なポテンシャル」はあったとしても期待できない

この👇記事の元の『一人負けニッポンの勝機』は日本経済の実態を全くつかめていなくて呆れた本だった。 何点かをピックアップする。 先日に記事にしたものと似た見方だが、初めの約10年間はバブル崩壊+超円高+金融危機といったマクロ環境の悪さ、不良債権処理と企業のリストラが一段落してからの約20年間は企業の収益追求がマクロ経済の好循環に逆行する経済構造になったことが主な理由である。 よくある例えだが、金融緩和はアクセルではなく「ブレーキを緩める」といったほうが適切である。なので、

日本経済を相対的に衰退させた「自滅行為」とは

日本経済の相対的衰退について、この👇ようなもっともらしい説明をよく見かけるが、事実とはかなりの相違がある。 このような個人や組織の判断ミス(過去の成功体験に囚われた)に原因があるとする説明が見落としているのは、バブル崩壊から約10年間の日本経済のマクロ環境である。 まず重要なのが、1990~91年のバブル崩壊に続いて、1993年から円高に襲われたことである。日本と同じく、1990年代初頭に不動産バブルが崩壊して不況に陥った北欧諸国では、為替レートの大幅減価→輸出促進によっ

株高が明るさにつながらない日本

株価のバブル期超えについては既に幾つか書いているが、ポイントを二つ挙げると、①株価のバリュエーションが全く違う、②株価形成の最大のファンダメンタルズである利益についての経営者の認識が大きく変化した、ことである。 バブルとは資産価格がファンダメンタルズ(株価の場合は、企業利益のストリームの現在価値合計)から乖離した水準に上昇することだが、日本のバブル期には、予想成長率が潜在成長率からかけ離れた水準に高まった(火が付いた)ところに低金利政策もあって益利回りが急低下した(油が注が

アメリカのGDPは日本の6.5倍

2023年の日本のGDPがドイツに抜かれて世界第4位になったというニュースが話題になったが、1990年代までは日本の約2倍だったアメリカのGDPは6.5倍になっていた。 バブル景気が山を迎えた1991年の1.69倍を基準にすると、1991年→2023年に米/日比は3.86倍になっていた。 これを分解すると、実質GDPが1.75倍(=人口1.32倍×1人当たり実質GDP1.33倍)、実効為替レートが2.20倍だった。 対ドルの実質円為替レートは1980年代前半よりもはるか

輸出数量

円の実質実効為替レートが50年以上前の水準にまで減価しても輸出数量増にはつながっていないことを確認する。 第二次安倍政権のいわゆるリフレ政策でも、円安→輸出数量増・国内生産増・設備投資増が期待されたが、そうはならなかった。貿易財を生産する企業が為替レート変動に影響されにくいグローバル生産体制を構築したためである。 米欧向けは世界大不況後に大幅に減少したまま。 アジア向けは世界大不況で増加トレンドが止まった。 円安の景気刺激効果がなくなり、逆に食料やエネルギーの輸入価格

10年遅い「デフレ脱却」表明

インフレは物価の上昇、デフレは下落でそれ以上でも以下でもないのだから、本来なら10年前にはデフレ脱却(持続的な物価下落が止まること)が宣言されているはずだった。 ところがそうはならなかったのは、「デフレ」に物価下落以上の意味を持たせてしまったからで、そのことが経済政策・経済運営を歪める結果を招いている。 デフレの期間は23年ではなく、長めにとっても1999年末~2012年末の13年間だが、2002~2007年には戦後最長の景気拡大を達成し、企業収益も悪化するどころか絶好調

日経平均株価は史上最高値を更新したが

日経平均株価が1989年末の過去最高値をついに更新した。 株価水準は同じでも、株式益利回り(PERの逆数)は大きく異なる。約5%はグローバル基準では妥当な水準なので、バブル期と違ってファンダメンタルズ(企業利益)に裏付けられているといえる。 👆自分の周辺ではこのように期待する人は見当たらないが、期待薄なのは👇にあるように、日本経済の構造が金融ビッグバンをはじめとした構造改革によって様変わりしてしまったからである。 企業が変わってしまったことに加えて、人口構造の変化が好景

日本人のコンセプト力

最近、この👇経営学者をよく見かけるが、「東大史上初の経営学博士にして平成生まれの慶大准教授が放つ、渾身の日本企業再生論」と謳う『日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか』を読んだらう~んと思ってしまう内容だったので、二点コメントする。今回は一点目。 岩尾の主張は「日本の弱点は経営技術をコンセプト化しないところ」「できないのではなくやらなかっただけ→意識改革一つで克服可能→just do it」というものだが、問題は「やらなかったのはできないから」という可能性が小さくないことである

株高だがGDPは4位転落

株価指数が過去最高値に迫る一方で、GDPが世界4位に転落したことは、日本政府が1990年代末から続けてきた「企業の稼ぐ力を高めれば日本経済の成長率も上がる」の方針が根本的に誤っていたことを示している。 2023年の実質成長率は日本がドイツよりも高かったが、それでも順位が逆転したのは円安のため。 「企業の稼ぐ力を高める」の奨励は、日本企業による"Japan Passing"⇒生産力の相対的低下⇒円の購買力低下という狙いとは逆の結果を招いてしまった。 万事休す。

自社株買いとふるさと放棄

この👇問いに 「すべきではない」と答える人が増えていると思われるが、この考え方・判断基準が自社株買いの増加と株高に通じている。 企業が自社株買いに積極的なのは、1株当たり利益を最大化するためには設備や研究開発に投資するよりも自社株に「投資」した方が投資効率が高いと判断しているためで、その背景には国内市場が人口減少のために縮小に向かう(→成長性が乏しい→投資のリターンが小さい)との見通しがある。 金融資本主義の「ペイする/しない」に従えば、ふるさと放棄も(賃上げや設備投資