見出し画像

ありがとうとさようならを伝えるために

2024年6月8日
私はニューヨーク、マンハッタンのマディソンスクエアガーデンにいた。目的は、マディソンスクエアガーデンで、ビリージョエルのコンサートを観るため。

ことの発端はわたし10歳。
NHKのラジオ英会話で紹介されたビリージョエルのJust a way you areを、初めてAMラジオから聴いた時に、NYCの摩天楼を見下ろした風景が強烈にイメージできて、いつか自分はそこに行く!と夢見たことが始まりだった。

時はすぎ、わたし40歳の2023年10月。
ビリージョエルがマディソンスクエアガーデンでラストコンサートを開催することを知る。30年間、脳みその奥にしまいこんでいた記憶がよみがえった。最後だなんて。子供の頃の自分の夢を叶えたい。NYCに行かなきゃ。2024年6月8日開催分のMSG3階席を1枚購入した。

とはいえ、どうやってNYCに行こう。

飛行機で行く、のだが、コンサートのためだけに海外に行くなんて、自分の常識ではあり得ない。

それならNYCに用事を作ろう。

手っ取り早いのは国際学会の参加だ。なんと、同時期に研究分野の国際学会が東海岸である。抄録の締切が2023年12月。いま2023年10月。

みんなに助けてもらおう

ビリージョエルを目標に、10月にデータベース作りを始めたが、どうしても時間が足りない。困った。
たまたまそばにいた研修医がプログラミングの達人で、大量の数値データを数秒でエクセルに並べるプログラムを作ってくれた。天才。データベース作りが間に合った。
データの解釈も他大学も含め色々な方々に教えていただいた。途中で何度も進めなくなって、皆さんからのお言葉が支えになって前進した。「ビリーが近づいてきましたよ!」なんて言ってくれる人もいた。
そんな中、2023年12月大谷翔平選手がドジャースに入団を決めた。胸騒ぎがして、試合予定を調べたら2024年6月7日ニューヨークヤンキース対ドジャースの試合がNYCで開催されるようだった。ヤンキースタジアム3階席を1枚購入した。
もうビリージョエルが大谷と私をNYCに呼んでくれたような気がした。
そのうちに国際学会で、海外から共同研究と研究室見学の打ち合わせのお時間をいただくことになった。濃密な時間と今後の展望を聞くことができた。
そして今、2024年6月8日私はニューヨーク、マンハッタンのマディソンスクエアガーデンにいる。
私はMSGの入り口に立って確信した。

マディソンスクエアガーデンでビリージョエルのコンサートを観るのは私の夢ではない

マディソンスクエアガーデンの中に入るのは私の父の夢。
父はアメリカプロレスの大ファンでプロレスの聖地MSGに来るのが夢だった。彼が経営していた喫茶店の店名の由来にもなっていた。
ビリージョエルは母が好きな歌手。
マディソンスクエアガーデンで、ビリージョエルのコンサートを観るのは、私の両親の夢であり、子供時代の私は両親の夢を叶えてあげるのが自分の使命だと信じていた。国際学会の発表準備が佳境に入る、2024年4月頃に私はなんとなく気づいていた。マディソンスクエアガーデンで、ビリージョエルのコンサートを観るのは、私の夢ではないと。

私はもう、自分を応援してくれる人たちと出会い、彼らを信じて手伝ってもらい、自分の価値観を広げて、自分で稼いだお金を自分の安心のために使うことができるようになっていた。子供の頃とはまるで違う。それなのに子供の頃の夢や理想に縛られて私はNYCまで来てしまった。

マディソンスクエアガーデンで開催される、ビリージョエル最後のツアーを
これから見に行く。

私が色々な難関を乗り越えて未踏を進みここまで来れたことを
温かく迎えてくれた偉大な存在へありがとうと
よくわからないプライドと昔の理想にさようならを
伝えるために。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?