脾胃の蔵象.002

【経絡治療の蔵象学】Pt.5 脾胃の蔵象 1/5

1. はじめに

*胃経は前後の陰陽でみれば陰だが、内外の陰陽でみれば陽である

 「脾」と「胃」は「中焦」に属し、その働きは相互に強く影響し合っています。ここでは、「脾」と「胃」を別けることなく同じ項目として解説していきます。

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 「胃経」については、「陽経なのに、なぜ陰の部位を流れるのですか?」という質問をよく受けます。これは大事なことなので、はじめに解説しておきます。

 確かに、人体を「百会」で区切って前後に分けると、「前」が「陰」の領域で、「後」が「陽」の領域になります。そう見れば「胃経」は「陰」の領域を走行していることになります。しかし、人体を輪切りにして経絡を見ると「陰経」は「内」「裏」に在り、「陽経」は「外」「表」にあります。経絡には深さがあり立体的です。人間の体を外から見れば全て「陽経」によってぐるっと包まれるように支配されており、その裏に「陰経」があるわけです。これを「内外の陰陽」、または「表裏の陰陽」と言います。

 先ほどの疑問は、「前後の陰陽」を使って「胃経」を眺めて、陰の部位を走行していると考えることから生じる疑問です。しかし、「表裏の陰陽」で「胃経」を眺めれば、きちんと陽の部位を流れているわけで、なんら矛盾はありません。こういう混乱が東洋医学ではよくあります。

 このように、「陰陽」と一言で言っても様々な「陰陽」があるために、その分け方も様々です。「陰陽」とは、固定的なものではなく流動的であり、その都度、定義するものによって「陰陽」どちらに属するのかが変わっていきます。先ほど「陰」であったものが「陽」に変わり、「陽」であったものが「陰」に変わるわけです。そのため、「陰陽」を考える時には、今何を以て分けているのかを常に意識していないと、「陰陽」をつかむことができません。これは古典書物を読む時の大事な決まりです。

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