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持続可能な復調(やや大切なお知らせ)

突然ですが、みなさんは小道具をつくる僕のことを「どんな発注にも応えてくれる人」だと思ってくださっているでしょうか。

もしそうだったら嬉しいです。僕も、僕のことを常々「どんな発注にも応えられる人」でありたいと思っているし、その気持ちは小劇場に携わるようになった初期からずっと不変です。しかし、当時のようなパフォーマンスを発揮できない年齢になったのだと痛感する機会が増えました。もう若くないから云々、なんてことは口が裂けても言いたくなかったのですが、この際、裂けます。ごまかしきれないガタが来ています。

精神と思考は20代据え置きのまま、その熱意に体力が追いつけなくなってしまった。作品のためになるなら徹夜でもなんでもやってやるぜ、という気持ちも本物なら、さすがにこの歳で徹夜は辛いですあと腕とか腰とか痛んだり痺れたりしてキツいっす、という身体も本物。そしてこのまま「たとえ明日くたばっても構わねえ」の初期衝動的スピリットで走り続けたとして、いざ明日くたばっても全然かっこよくなんかなくて、ただ周囲に多大な迷惑をかけて終わりなんじゃないの?と気づくに至りました。時代が変われば価値観も変わる。時は令和6年、自己犠牲ってやつぁ僕が思うほど美しいもんでもないっぽいしな。

ともかく、そういうわけで本題です。

2024年5月に控えた次の公演への参加を最後に、私・辻本直樹は、小道具の「実製作」を伴うご依頼を当面の間、大幅に制限することに決めました。

なんとも歯切れの悪い発表で申し訳ありません。すっぱり「無期限休止」とか「引退」とか言えればもっと短い文章で済んだろうに、僕の諦めの悪さが如実に出てしまいまして。

いや、こちらとしても諦めたくはないのです。普通に体調と相談しながら無理のない範囲でやり続けられるなら、それが一番いいんです。けど、自分でいうのもなんだけど、僕はなにぶん演劇への……というより、作品や座組への愛が強すぎて、抱きしめる腕が骨折するまで無理をしてしまうから。「なるべく無理はしない」という自分への縛りを、誰かに唆されるまでもなく・率先して・自主的にぶっちぎってしまう未来しか見えないので、だったら一度、注げる愛の総量を絞ってみようという決断です。要するにこれは愛のダイエット宣言です。

具体的にどうなるのかというと……

Nichecraftの辻本として

小道具の「実製作」に関する仕事のオファーを、これまでの「先着順で来る者拒まず」形式から「ある程度内容まで精査した上でお返事」に変更します。お話を聞いた結果お断りするケースも増えるかと思われます。特に力仕事や精密性を要するもの、大掛かりなものなどは製作が難しくなります。
ただし「実製作」を減らすかわりに頭脳労働的な側面、すなわち小道具の「アイデア出し」や「素材知識提供」、また脚本レベルで小道具の造形やギミック、世界観との整合等に関する相談は、ご要望があれば随時お受けしていくつもりです(ざっくり「小道具専門のドラマトゥルク」みたいなものとご理解いただければ幸いです)。また同様に、毎月定例行事の配信「ニッチクラフトしてみたい」も従来どおり継続していきます。

関係舎の辻本として

特に変更はありません。定点観測、稽古見守り、ワークショップ等、請け負います。ただ、あまりに遠方だったり、あまりに長時間拘束となる場合は都度ご相談させてください。
もはや半分ライフワークとなった「架空のプレ稽古」に関しても、近日中に新たなお知らせができることかと思いますのでお待ちください。

お知らせは以上です。
今後ともニッチクラフトと関係舎の辻本に、変わらぬご愛顧をよろしくお願いいたします。


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