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4designs株式会社CEO/一般社団法人プロティアン・キャリア協会代表理事の有山です。今回は、今後の企業と社員の関係性の変化と転職等の重要なキャリア意思決定時における企業選択の考え方について書きます。

■過去、企業と社員は「従属関係」にあった

まず企業と社員の関係性の変遷について簡単に触れさせてください。

終身雇用時代、右肩上がりの経済成長を前提として企業は売上拡大、規模の拡充、そのためポストは増えキャリア開発の機会は十分に整えられていました。企業は仕事を確保し、社員は長期間安定した仕事を与えてもらう「従属関係」にあったといえると思います。つまり、社員は組織のために働く、組織は社員を守る。

しかし、バブル崩壊後の失われた30年では経済の低成長下において、解雇規制が厳しい日本では産業構造が変わっても大胆なリストラはできず、企業は新卒一括採用の絞りこみと賃金カーブを抑えることでなんとか利益を上げてきました。(但し、諸外国に比較してROEなどの指標は依然として相対的に低く、企業生産性も低いのが現状)

転職が徐々に当たり前になってきたものの、まだ40歳迄に転職4回までなどの採用基準を設ける企業も多く、産業構造が変化しても人材流動性が低い日本。とうとう国が「中途採用比率の公表義務化」(2021年4月施行開始予定、従業員301人以上の企業対象)に動き出すなど、ようやく転職が幅広く受け入れられる状況になってきました。

■今後は企業と社員は「パートナー型」へ移行

そんな時に今回のコロナウィルスによるリモートの大衆化は、過去の惰性でオフィスでしていた仕事や不要な移動時間・打ち合わせ時間をあぶりだし生産性は向上、また自己管理/成果を出せる人材とそうでない人材が明確になるきっかけとなりました。

今後、AIやロボットにより定形化された業務の価値は低下、50人の普通のエンジニアより1人のスーパーエンジニアが価値を生み出す時代

ある特殊専門能力が高い又は経営課題を自ら設定し周りを巻き込める自走型の人材などは、マーケットにおける人材価値は向上、付加価値を生み出せない人材との二極化が進むものと考えられます。

つまり、マーケットで評価される方は、企業と同じ目標を目指すパートナーとして能力を発揮できる環境を提供され、その見返りとして成果を出すという対等な「パートナー関係」となり、自身のキャリア目標に沿ってチャレンジングな仕事が与えられなければ転職をするという時代への突入です。

そんな100年時代、VUCA時代に企業のパートナーとしてあり続けるには、自身の価値基準に沿った心理的な成功を維持するために、主体的に世の中の未来を見据え、キャリアを一時的な点でとらえるのではなく、線として捉え、ビジネス資本(知識・経験)、社会関係資本(職場、友人、SNS)、経済資本(不動産や金融資産等)などの「キャリア資本」を戦略的に蓄積していく重要性が高まっています。

※キャリア資本=ビジネス資本+社会関係資本+経済資本

■パートナーとしての確認事項

個人は、戦略的なキャリアを設計していくかを考えた時に「自身のキャリア目標実現にとって相性が良いパートナー」を探す必要があります。

では、その「パートナー」選択の視点とはどのようなものか?

以下の図は、100年時代に適したプロティアン・キャリアの考え方をベースに、今後個人が転職時に企業を選択するときの視点を整理したものです。

個人としては、アイデンティティ(A1~A3)、アダプタビリティ(B1~B6)の視点から自身のいまの周囲の環境も踏まえ、キャリア戦略に沿った企業が転職先、つまり「パートナー」として望ましいと考える事ができます。

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もう少し詳細にみていきます。

■アイデンティティ(自分を活かす)

自身の価値観に基づく心理的成功(心理的成功については前回note参照)の状態を維持するため、基準となるのが自身のアイデンティティです。

ここでは、転職候補先の企業のミッション、ビジョン、バリューと自身の価値観が合致しているかどうかについてまず確認します。ここが全ての起点となりますのでとても大事な確認ポイントです。

例えば、私は父親が零細中小企業で勤務しており小さい頃から「大企業ではないが、こんな零細中小企業でも俺は大企業には営業では負けないぞ」という言葉を聞いておりました。

そんな父が好きであった私は、原体験として大企業で働く、というイメージが持てていなかったことが新卒で入った大企業を数か月で退職するということになった一因だと思っています。(詳細は、過去のnote参照「私のキャリアと課題認識」

私のこの植え付けられた価値観のように身近な地域の人のために仕事をしたいという価値観の方が、グローバル企業に働くなど、ここを根本的に見間違うことは致命的なので注意が必要です。

なお、企業規模やミッションだけではなく、「大胆に!」というバリューを大事にしている会社で、コツコツ積み上げることが得意な性格の方が合うかどうか、といったら恐らく成果をだす、評価されることは難しいでしょう。自身が成長して成果を出すには、強みを活かすことが大前提となりますので企業のミッション・ビジョン・バリューはしつこいですが、特に確認が必要です。

立派なビジョンを掲げていても、訪問したら理念とGAPがある(元気に!というバリューを掲げているが、受付で挨拶しても返さない社員等)など、看板だけで実態が伴なわずお飾りとなっている場合も多く、見極めは大事です。

また、視点は変わりますが、自身の強みが発揮できる環境(風土、マネジメントスタイル)にあるかどうかは、転職口コミサイト、役員の方のSNS投稿など情報をしっかりと集め、その企業における価値観を知ることも大事です。

またその企業に転職した想定で5年後の職務経歴書を想像し、労働市場からの評価(どのようにみられるか、キャリア目標に近づくのか)も考慮することも大事な視点だと思います。

■アダプタビリティ(変化を予測、蓄積する)

アダプタビリティの視点は、主に①「変化を見通す/企業分析力(B1、B2)」②「職場環境(B3)」③「キャリア資本(ビジネス資本、社会関係資本、経済資本)の蓄積(B4~B6)」の3つの視点が、戦略的な企業選択において必要になります。

まず1つ目の「変化を見通す/企業分析力」は、簡単に言うと転職候補先企業での仕事内容が将来のマーケットを見通したうえで労働市場から評価されるか、また、当該企業が業界内においてどの程度競争優位性をもっているのかどうかという点です。

業界1位が単純に良いかというとそうではありません。自身の労働市場での競争力から業界1位ではスタッフだけど、3番手の企業にマネージャーでオファーされ、市場に対する新商品を中核で開発することでより自身の価値を高めるという考え方もできます。

あくまで自身のキャリアにおいて価値のある経験が積める環境かどうか、自身の成長機会が獲得できるかの自分軸であり、他人からの評価軸ではないので注意は必要かと思います。

2つ目は、「職場環境」です。今後職場環境は結構重要だと思っています。上司に理解をしてもらえない、関係性が悪化してしまったなどの状況はどの企業でも発生しえますが、その際にリモート勤務が認められ移動時間などを勉強や社会関係資本構築に充当できたり、副業によって企業の外でビジネス資本が蓄積できるなど、転職の次のキャリアの可能性を拡げることができます。

副業ができるかどうかは今後転職の選択肢において重要な判断軸の1つとなるでしょう。

3つ目は、「キャリア資本(ビジネス資本、社会関係資本、経済資本)の蓄積」です。将来の目指すキャリアを見据えてどの程度当該企業で蓄積ができるか、という視点となります。5年先を見据えて、自身が転職先に何を求めるのか、しっかりと自己のキャリアの棚卸をしたうえでキャリア目標に向けて戦略的な蓄積が必要となります。

ここで大事なのは、自身の強みとなる業界、職種における将来を予測することです。エンジニアの方が、AIの時代を見据えて5年前からAIのビジネス資本を蓄積し始めている方の市場価値は今はとびぬけて高くなっています。

ベンチャー投資と同じで、自身のキャリア資本を将来飛躍的に高めるためには、いま何をすべきか、何に時間やお金を投資するのか、などを戦略的に考えて日々実行して積み重ねていく必要があります。

■パートナーとの相性

100年時代におけるキャリア選択時の選択の考え方について記載をさせて頂きましたが、自身の希望とぴったり合った企業は存在することはないのが実態です。ただ、企業選択の際にどこまでアイデンティティとアダプタビリティの観点から企業を分析し、パートナーとしての相性が近いのかどうかを戦略的に考えて意思決定したいものです。

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現代におけるプロティアン・キャリア視点での企業選択の考え方は、以上となります。今回の視点をもとに少しでもハッピーなキャリア選択の一助になれば嬉しいです。

次回は、逆に戦略人事の視点から企業視点からみて優秀な人材を確保するには、では何をすべきかを書かせて頂こうと思います。

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