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0497 - 【続】北半球料理のお店に行った時の話

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前回のつづきの話

無事に(?)注文を終えて、男性は奥の厨房へと姿を消した。

店内には僕以外に客がいない状況。とても静かだ。クラシックなのかジャズなのか、はたまたワールドミュージックだったのかまでは思い出せないが、ゆったりとしたBGMが流れていたように記憶している。

30分ほど経過した頃、奥からとても良い香りが漂ってした。そして注文したカレーが運ばれてきた。

目の前に出てきたカレーは予想していたのとは少し異なった。ルーとライスが混じり合った、いわゆるドライカレーのようなものだ。そこに小さめサイズに切られた温野菜がトッピングされていた。

「いただきます」と手を合わせ、スプーンでカレーをすくって口へと運ぶ。

ミスター味っ子の中に「空腹は最大の調味料」という台詞が出てくるが、まさに空腹だった状態を満たしてくれたこともあり、カレー自体はものすごく美味しく感じた。大袈裟ではなく「うまいぞー!」と叫びたくなる衝動を感じた。2口目、3口目と、ほぼノンストップでスプーンと口が動いていく。

・・・という、僕が食べている様子を、男性はずっと隣で立って眺めている。

何も言わず、ただ隣で立っている男性。正直とても気になるが、だからといって「何でずっと立ってるんですか?」とも質問し辛い空気感が漂っている。

カレー半分ほど食べ進めた時、男性が口を開いた。

「セロリって食べれます?」

んんん? どういう意図の質問だろう? ひとまず普通に「はい、食べれます」と答えたところ、ニコニコした顔で奥の厨房へと引っ込んでいく男性。およそ1分後、戻ってきた男性の手には、カットされたセロリが盛られた皿があった。

「これ、サービスするんで。セロリの先にカレーを乗せてかじってみて」

この提案の意図は読み解けなかったが、とりあえず言われた通りにやってみた。

「どう? 美味しいでしょ! 美味しくて栄養もアップして一石二鳥な食べ方だよ」

心なしかさっきよりも顔が近づいた状態でニコニコしながら話してくる男性。正直、セロリは無しで普通に食べたほうが圧倒的に美味しいと感じたが、そんな言葉を発する勇気は湧かず「ああ、これもアリですね」と答えるのが精一杯だった。

そして、ついに男性は、食べている僕の隣の椅子に座り、料理に関するウンチクを次々と語り始めたのだった。その細かい内容までは覚えてないが、世界各地の地域による料理や食材の傾向について語ってくれたような気がする。最終的には「だからウチの料理は美味しいんですよ」という着地点だったような気もする。その話自体を聞いている分にはとても楽しかったような印象が残っている。

料理は間違いなく美味しい。むしろ、近隣のお店では食べられないタイプの料理が堪能できる素敵なお店だ。ただ、他にお客さんがいない場合は、きっと漏れなく「男性のトーク」もトッピングされるのだろう。それが受け入れられるかどうかで、このお店の評価は大きく変わる。

さて、ここまで書いたのだが、注文したもう一品「コーヒー」まで辿り着いていない。もう1回分だけ続けるので、何卒お付き合いください。

(更につづく)

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