パンデミック時の行動制限は認知機能へ悪影響を与えていた。

行動制限が認知機能やアルコール摂取など健康への悪影響を及ぼし、認知機能の持続的な低下ももたらしている。パンデミック時の行動制限はやはり大きな影響を高齢者認知機能へ与えていた。

Cognitive decline accelerated in over 50s during pandemic, study finds | The BMJ

COVID-19のパンデミック時には、たとえウイルスに感染していなくても、50歳以上の認知機能の低下が加速していたことが、英国の研究で明らかになった。Lancet Healthy Longevity誌に掲載されたこの研究では、平均年齢67歳の参加者3,142人をモニターし、パンデミック前に比べて実行機能の低下が49%、ワーキングメモリーの低下が55%早まったことが明らかになった。この低下は、COVID-19感染を報告した752人と軽度認知障害(MCI)の既往がある147人を含むすべての参加者で有意であった。特にMCIやCOVID-19感染の既往のある人では、アルコール摂取の増加と運動量の減少がこの低下と関連しており、孤独と抑うつも一因であった。キングス・カレッジ・ロンドンとエクセター大学が主導したこの研究は、パンデミックの制限が脳の健康に長期的な影響を及ぼし、認知症のリスクを高める可能性があることを示唆している。研究者らは、今後のパンデミック計画において、このような健康への影響をより考慮するよう呼びかけるとともに、生活習慣の改善や健康管理が精神機能にもたらす潜在的なメリットを強調している。


Taylor, Stephanie J.C., Ratna Sohanpal, Liz Steed, Karen Marshall, Claire Chan, Nahel Yaziji, Amy C. Barradell, ほか. 「Tailored psychological intervention for anxiety or depression in COPD (TANDEM): a randomised controlled trial」. European Respiratory Journal 62, no. 5 (2023年8月24日): 2300432. https://doi.org/10.1183/13993003.00432-2023 .

【背景】 COVID-19の長期的な健康への影響は次第に認識されるようになってきているが、COVID-19パンデミック期間中の社会的制限は、認知および精神的健康にかなりの不利益をもたらす可能性があり、特に、運動や食習慣に関するものなど主要な認知症リスク因子がこの期間に影響を受けたためである。我々はPROTECT研究の縦断的データを用いて、パンデミックが英国の高齢者の認知に及ぼす影響を評価した。

【方法】 この縦断的解析には、英国でPROTECT研究に参加した50歳以上の人のコンピュータ神経心理学データを用いた。データは、COVID-19パンデミック前(2019年3月1日~2020年2月29日)、パンデミック1年目(2020年3月1日~2021年2月28日)、2年目(2021年3月1日~2022年2月28日)に同じ参加者から収集した。線形混合効果モデルを用いて、3つの期間にわたって認知力を比較した。軽度認知障害のある人とCOVID-19の既往歴のある人を対象にサブグループ解析を行い、探索的回帰分析により認知の軌跡の変化に関連する因子を同定した。
【調査結果】 パンデミック前のデータが3142人分含まれ、そのうち1696人(54-0%)が女性、1446人(46-0%)が男性で、平均年齢は67-5歳(SD 9-6、範囲50-96)であった。パンデミック1年目には、全コホートで実行機能とワーキングメモリの有意な悪化が観察され(実行機能では効果量0-15[95%CI 0-12-0-17]、ワーキングメモリでは0-51[0-49-0-53])、軽度認知障害のある人では0-13[0-07-0-20]と0-40[0-36-0-47]、COVID-19の既往のある人では0-24[0-16-0-31]と0-46[0-39-0-53]であった。ワーキングメモリーの悪化は、パンデミック2年目にも全コホートで持続した(0-47;0-44-0-49)。
回帰分析によると、認知機能の低下は、コホート全体にわたって、運動量の減少(p=0-0049;実行機能)およびアルコール使用量の増加(p=0-049;ワーキングメモリー)と有意に関連しており、またCOVID-19の既往のある人ではうつ病(p=0-011;ワーキングメモリー)、軽度認知障害のある人では孤独(p=0-0038;ワーキングメモリー)と関連していた。
パンデミックの2年目においても、運動量の減少はコホート全体にわたって実行機能に影響を与え続け、軽度認知障害者ではワーキングメモリの悪化とアルコール使用量の増加(p=0-0040)、孤独感(p=0-042)、抑うつ(p=0-014)の間に、COVID-19の既往のある者では運動量の減少(p=0-0029)、孤独感(p=0-031)、抑うつ(p=0-036)の間に関連が持続した。
【解釈】 COVID-19のパンデミックは、既知の認知症リスク因子の変化と関連して、高齢者の認知機能の著しい悪化をもたらした。認知機能の持続的な低下は、認知症のリスクを軽減するための公衆衛生的介入の必要性を強調している-特に、5年以内に認知症に移行することがかなりのリスクである軽度認知障害者において-。COVID-19の既往歴のある人々に対しては、認知機能の健康を支援するために長期的な介入を考慮すべきである。

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