日記20231226 解像度の悪い夢を見たい

 まず昼間は他キャンパスの友人にVRゴーグルを売るために待ち合わせて、品物を渡してお金をもらってから研究室に向かった。その後は研究室の人と買い物に行ったりして時間を潰していた。研究室の忘年会があったからだ。

 研究室の学部3年生(新4年生)に初めて会った。飲み屋の席では4人と喋った。路上で歩きながら他の何人かとも喋った。やたら背が高い人がいたことは覚えてる。
 結局のところ、印象に残っている人は、ちゃんと飲み屋の席で話した4人と、やたらデカい人と、自己紹介の時に声がガサガサだった人と、わかりやすく青い服を着ていた人と、わかりやすくデニムのジャケットを着ていた人だった。つまり接触回数が多いか、鮮やかな色をしているか、発する音が特徴的かどうかだ。人間案外単純だなと思った。私が単純なだけかもしれない。

 もう一人、前々から噂を聞いていた人が居た。「次の3年生には、12人中1人だけ女子が居る」と、幹事の先輩(♂)と同期(♀)※がずっと喋っていたからだ。
 その3年の女子をどこに座らせようか、忘年会の出席確認の返事が遅いが幹事の俺(先輩)が連絡するより女子がメールした方がいいのではないか、女子は女子だけで固まろうか、それとも3年生同士関わらせるべきか等、今月の頭からずっと研究室で話していた。あまりにその女子の話ばかりするので、正直なところ、何でもいいだろと思っていた。

※私の大学はあまりに女子が少ないので、「○○大ガールズ」という女子だけのコミュニティがある。女友達が欲しい人、男子学生に苦手意識がある人などが集まるらしい。もちろん、女子だからといって入会を強制されるわけではない。
※その同期の女子は、そのコミュニティの部長をやっていただけあって、「女の子であること」をかなり重視するような人である。そういう考え方の人は世の中に沢山いるし、それはそれで理に適っているんだろうなと思って普段は話半分に聞いている。もちろん本人とは仲良くしたいし、本人が悪いと言いたいわけではないけど、今回は流石に過剰なんじゃないかな……

 結局今日はどうなったのかというと、最初は女子だけのテーブル(3年生1人、4年生3人)を作って、全体が席替えする時に、4年生の女子2人と、3年男子2~3人を入れ替えた。しかし残念なことに、その男連中の誰かがちょっとノリがキツかったというか、”間違った陽キャ”だったらしく、あまりまともな話ができずに終わったらしい。例の同期が、二次会で色々と文句を言っていた。
 その3年生の女子からしたら、壁際の席で、他のテーブルの話が聞こえてこない状況で、最初は先輩の女子3人に囲まれ、次はチャラ男たちに話の主導権を握られたことになるが、大丈夫だっただろうか。自分がその立場なら嫌だけど……

 自分はトランスなので世の中の「純女」の気持ちは分からないが、あれは結果として若干失敗だったのではないか。女子だどうだと過剰に意識して、過剰に根回しするから空回りしたんだろうと思えてしょうがない。
  もちろん、研究室の大半は男なので、女性にとっては、研究や学業に支障は無くとも、雰囲気とか人付き合いとか、生活面で多少の困りごとはあるだろう。でも、それはそういうトラブルが起きたときに、その女子本人が信頼できる人を選んで相談することであって、研究室に配属される当初からオンナノコだと騒いて、上級生が囲い込んだところで解決しない。そうやってオトコノコとオンナノコの構図に持ち込むから、チャラ男と悪い共鳴を起こしたのではないか。

 幹事や同期を責めたいわけではない。何の恨みもない。むしろ研究室の人はかなり好きだ。
  それに、シスでヘテロでマジョリティである世間の皆様に、過剰なジェンダーフリーをわざわざ押し付けるつもりはない。「私はオンナノコ、あなたはオトコノコなので、出会えば恋愛が起こりうる」と信じることができる人生も、それはそれで幸せだろう。
 でも、流石に今回はやりすぎではないか。この研究室は男が非常に多いのだ。本人がオンナノコだからといってオンナノコで囲い込んで、オトコノコと関わらせないようにすることは果たして気遣いだろうか。どのみち全員と関わらなければいけないのに。やっぱりシスヘテロの世界はよくわからない。

 そういや、私の高1の時の卓球部の新入生歓迎会もひどかったな。2年の先輩は男子が6~8人、女子が0人。同期である1年生は男子が確か6人、女子が4人。あろうことか、1年男子と2年男子は完全に混ざりあって大きなテーブルでワイワイして、1年女子4人だけを、少し離れた小さなテーブルに隔離したのだ。当時は私も女子部員だったので、残り3人とほどほどに喋りながらしゃぶしゃぶを食べていたが、後から何度も、「あれのどこが”歓迎”なのか」とみんなで怒っていた。今回の忘年会の件でも、あれをちょっと思い出していた。高校のアレは男の先輩が色々と勘違いして起こしたことだが…


 その後は、二次会でカラオケに行った。途中までは4年生の数人だけでカラオケに行って、院生と合流して朝まで過ごした。
 そこで事件が起きた。とある先輩が飲み過ぎて、カラオケのトイレで”粗相”をしてしまった。個室が空いていなかったのでやむを得ず小便器に吐いたら詰まらせちゃったらしい。私が歌う番が来た頃に先輩と同期(付き添い)がトイレに消えて、私が歌い終わった頃に、「誰か来てくれ」と同期に呼ばれたので行ってきた。飲み会ゲロ掃除の実績を解除した。これまでやったことがなかった。
 その時に私が歌っていた曲が、偶然にもOverdoseだった。ネタで入れたわけではない。その曲を入れた時点では先輩も元気だったのに、いきなり来ちゃったらしい。酒を飲み過ぎた人を見送りながら、薬を飲み過ぎる曲を歌うという皮肉。「飲んで吐いて全部忘れちゃえ 水をかぶった本心と鏡合わせ 見つめ合えたら」という歌詞が、普段よりも妙な説得力とリアリティを伴って心に迫ってきた。先輩、今頃吐いてんのかな……とか思いながら歌っていた。
 最初に先輩がブチ撒けると分かっていたときに、真っ先にトイレに付き添っていた同期はもっとすごいな。本人曰くそういう展開(飲み過ぎて連れが吐く)は未経験だったらしいが、それなら猶更すごい。2000~2001年生まれの我々は、成人した年がコロナ禍にモロ被りしているせいで、飲み会の経験が少なすぎる。そんな中で、優しさだけで上手く立ち回るのは本当にすごいな。
 その同期と、やらかした先輩本人と、追加でやって来た先輩の4人でカラオケのトイレを片付けていた。部屋に戻ると、残り4人くらいが心配そうにしていた。相変わらず先輩は調子が微妙そうだったが、なんだかそれを見ていられなくなって、買い出しついでに散歩に出かけた。別の院生の先輩が付いてきてくれた。その人が試しにタバコを吸ってみたいと言うので、コンビニで買って、河川敷まで行って一緒に吸ってきた。加減を間違えた先輩がとんでもない勢いで吸い上げて、とんでもない勢いでむせていた時は本当におもしろかった。でも私も最初は似たように力加減が分からず全力で吸っていたし、人生で初めてタバコを吸った時なんて、逆に息を吹き込んで遊んでゲラゲラ笑っていたので、人のことは言えない。

 そのあとまたカラオケの部屋に戻って、5時くらいにみんなでお会計して、それぞれ帰宅した。家に着く直前には、東の空がだんだん明るくなっていた。反対側には、妙に大きな月があった。あとで気付いたが、その夜は満月だったらしい。

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