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JICAインターン@ボリビアで学んだこと

2024年2月から一か月ほど、JICA(国際協力機構)のボリビア事務所のインターンに参加し、大変お世話になりました。

将来国際的なフィールドで、土木を使った仕事をしたいとぼんやりと考えていたので、JICAはファーストキャリアとしてかなり可能性の高い選択肢でした。
今回のインターンシップに参加した私の目的は、
(1)キャリアの入り口として、JICAやJICAに関わる人の仕事を理解すること、
(2)JICAでの働き方や目指すものが自分に合っているかどうかを見極めること
の2点でした。

インターンの活動

インターンの主な活動内容は、
①Santa Cruz県におけるフードバリューチェーン振興の一環として、市場志向型農業振興(SHEP)アプローチのワークショップの手伝い
②農業衛生と食品安全の国家認証機関(SENASAG)の活動見学
③青年海外協力隊の活動視察
④地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(Satreps)で採択された研究の一つである「高栄養価作物キヌアのレジリエンス強化生産技術の開発と普及」に関する研究発表とカウンターパートの視察同行です。

特に印象的だったのは、①の活動でした。
Santa Cruz中心部から車で約7時間の場所にあるSan Simónという村まで連れて行ってもらい、2日間でワークショップを行いました。人口70-80人くらいの小さな村で、青年海外協力隊の人でも入れないような場所だそうです。

一番近い村であるSan Ignacio de Velascoから車で2~3時間かかりました


最近電気が通るようになったらしい。電柱が遠くに見えます

ここでは、農家さんたちが生産意欲を高めるためのワークショップをJICA専門家と共に行いました。
彼らが抱える課題は、市場でどんな作物が必要とされているのか、よく売れるサイズやパッケージ方法などを把握せずに、とりあえず生産したものをその場で交渉して取引していることでした。これはボリビアのこの地域に限らず、世界各地でもよく見られる問題です。
日本だと、JAが組織的に管理していたり、農家さん自身が勉強したりして、市場の動向は細かくサプライチェーンに反映されています。

そこでJICAが生み出した手法が、「SHEP(Smallholder Horticulture Empowerment & Promotion)」と呼ばれる、小規模農家に対して意識改革を促すことで生産意欲を高める手法です。
農家さんが自分で市場調査に出向いて気づいた発見は、専門家から提供された豊富な情報源よりも、自分のモチベーションアップに繋がります。農業生産量と収入の増加としてきちんと結果が出る、しかも手法が簡単という理由から、JICAがとにかく推しているようで、ボリビア国内でも多くの地域で実践されていました。

私がインターンに参加していた期間では、農家さんに市場調査の方法を教えて、San Ignacioの市場で聞き取り調査をし、その結果を集計して、村で発表するところまで行いました。
結果を表にまとめることや、公の前でプレゼンをすることなどは、彼らは今までやったことのない作業だったようで苦労していたようでした。

お店で聞き取り調査をしている様子

最近では農業案件といっても、農業土木ではなく、このような能力開発・技術開発などソフト面での案件が多くなっていると聞きました。

インターンシップで得た学び

JICAの事業内容がここまで多様であるということを知れたことが一番の収穫だったと思います。

私がそれまで「JICA」と聞いてイメージしていた大型インフラだけではなく、仕事は日系移住地の支援、能力開発や日本への研修事業など多岐に渡り、研究機関や民間企業とも横の繋がりがありました。半世紀以上にわたり、日本の国際協力の窓口、橋渡しとして機能してきたJICAの広範囲なネットワークを垣間見ることができました。また、JICAの日本人職員だけではなく、ナショナルスタッフ、個別専門家、開発コンサルタント、青年海外協力隊など、多くの人にお会いする機会を頂いて、それぞれの役割、現場との距離感、責任の範囲など自分が実際に仕事をする上で重要となる軸を知ることができました。

また、幸運にも多くのJICA職員の方と関わることがあり、ランチやディナーに誘われたり、多くの人と繋がる機会を設けてくださいました。
JICAでの働き方は、私が思ったよりも現場から遠く、現場で働く人が円滑に活動できるよう裏から支える仕事であるという印象でした。また、現場で働く機会を生み出すための見えない努力にも少し触れることができました。ボリビア事務所の所長は長年中南米での農業開発案件に携わった経験と、ボリビアの各省庁とのコネクションを持ち、ボリビアの事情にも大変詳しい方でした。ボリビアの将来展望を見据えて適切な人材を配置して、日本がプレゼンスを示せるような案件を形成する話を聞き、まるで新聞の一面の裏側を見ているような気分でした。

日本は将来国際協力が出来なくなるほど経済的に弱体化するのではないか、と所長に質問をしたところ、「確かに無償協力や有償協力は縮小化するかもしれないが、ビジョン(信頼で世界をつなぐ)に沿った事業が将来展開されていくだろう」とおっしゃっていました。ボリビアでは残念ながら日本の民間企業は撤退しているのですが、呼び戻すために色々なところでパイプを作っていたり、現地の大学連携事業も増やしたりしている企画調整員にもお会いしました。例え今ある国際協力の形ではなくなったとしても、JICAが培ってきたこれまでの信頼や繋がりを活かした事業展開をしていくのではないかと思いました。

反省点

実は、滞在中ずっと体調が万全ではありませんでした…
San Simónの出張から帰ってきた後、体調を崩して3,4日間ほど寝込んでしまい、インターン活動に一部参加することができませんでした。
その後も睡眠があまりよく取れなかったり、おなかを崩しがちだったりと普段と比べて80%くらいの体力でした。
国際協力の現場に関わる人、みなさん体力が化け物みたいにあります。

ご飯や水なども普段とは違うもので、調整するのが大変だったのかなと思います。

シュラスコ
農家さんの家でいただいたご飯。
チャーハン、揚げバナナ、目玉焼きにお肉が乗った家庭料理。


また、毎日濃密で充実したスケジュールの中で、活動や自分の考えをまとめ、次の活動の予習をする時間が足りなかったなと思います。

感想

ボリビアは南米最貧国、反米親中路線、と聞いていたので、治安や日常生活にどのくらい影響しているのかと不安でしたが、日本の支援が必要なのかと思うほど、首都La PazやSanta Cruzは街として発展していました。

Santa Cruzのアパートからの景色


La Pazのロープウェーから。景色が圧巻でした。

SHEPのワークショップを行ったSan Simónであっても、ほとんど全ての住民がスマートフォンを持ち、大学やスーパーがあるSan Ignacioまでを結ぶバスも定期的に出ていました。

しかし、ボリビアの日系移住地(戦後、主に九州、沖縄から移住した人のコミュニティがまだあります)の継続的な支援や、日本の農業のベストプラクティスをボリビアでも広めたりなど、日本にしかできない支援もまだあるのではないかと思いました。

さらに、ある職員の方が「(他の国での経験だが)欧米ではなく日本に助けて欲しい、と言われたことがある」とお話してくださいました。日本は政治的・経済的に見てボリビアと安定した信頼関係を築いているからこそ、技術優位性がなくなったとしてもボリビアが日本をドナー先として選びたいと思ってくれているのではないでしょうか。そして、その信頼関係は今までのJICAの実績によって構築されてきたことを踏まえると、JICAのミッションやビジョンはただの理想ではなく、長期間にわたり有言実行されてきたのだと思います。

将来の展望

私は、国際協力分野に関心があることから、将来は新卒からJICAで働くことに興味を持っていましたが、国際協力の多様な関わり方や、JICAの国際協力だけではない他事業を知り、ファーストキャリアを選択するにあたって判断材料を多く手に入れました。

国際協力=JICAではなく、JICAの職員にならなかったとしても、ボランティア、開発コンサルタントや専門家としてJICAと働くことや、別の国際機関で関わることも可能です。これからは、「国際協力」という文脈で、どんなアクターがどのような貢献をしているのかというネットワークと、JICAが行っている他の事業や今後の展望なども調べていきたいです。

さらに、スペイン語をこれからも続けていきたいという大きなモチベーションに繋がりました。ボリビアではここまで英語が通じないとは思わず、今までに少し学んだスペイン語だけでは太刀打ちできないような場面も多くあっりました。職員の方々がスペイン語を流暢に使って仕事をしている姿を拝見すると、自分も自由にスペイン語で表現してみたい、ボリビア人の思想に直接触れてみたいという気持ちが高まりました。

今回のインターンで、他では経験できないような充実した一か月を過ごすことができ、全ての関わってくださった方々に感謝いたします。皆様から学んだことをこれからのキャリアに存分に生かしていけるよう精進したいと思います。



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