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ペットを飼いたい話(雑談)

竜太郎「12月だなー。」

わびすけ「そうだな。」

竜太郎「こうやって二人で飲むの、どのくらい振りだっけ?」

わびすけ「先週飲んだから1週間ぶりじゃない?」

竜太郎「1週間振りかぁ〜。」

わびすけ「そんなにしみじみする程 久し振りじゃないよ。先週お前が刺身にわさびをつけすぎて涙と鼻水で顔面をベチャベチャにしながら死にそうになってる姿をまだ鮮明に覚えてる。」

竜太郎「忘れてくれてもいいんだぜ?」

わびすけ「そういえばさ、忘年会シーズンだけどお前の会社って忘年会するの?」

竜太郎「あー、あるみたいよ。参加者を募ってた。俺は行かないけど。」

わびすけ「行かないんだ。」

竜太郎「会社の連中と気を使い合いながら飲みたくなんかない。お酒は楽しく飲むものだ。」

わびすけ「ま、そりゃそうだ。」

竜太郎「それに忘年会に行きたがる奴って年配の人が多くて…。“もうこれ以上何も忘れない方がいい人達”ばかりじゃない?」

わびすけ「そんなことを言って差し上げるな。」

竜太郎「しかしまあ年末は暇だな。」

わびすけ「そんなことないと思うけど。」

竜太郎「やる事が何も無い。」

わびすけ「一般的には忙しい時期だと思うよ。仕事納めとか大掃除とかさ。」

竜太郎「普段から掃除してるから、改めて大掃除なんてする必要が無い。」

わびすけ「そりゃ立派。」

竜太郎「納めるような仕事も無い。」

わびすけ「どういう意味だ?それ大丈夫か?」

竜太郎「あまりにも暇過ぎてお前のようなふつつか者と2週連続で飲んでる。」

わびすけ「自分から誘っておいて極めて失礼な言い草だな。全まつげ抜いてやろうか。」

竜太郎「で、これを機に何か新しいことを始めようかと思って。」

わびすけ「時間があるからってこと?」

竜太郎「ミズカマキリを飼おうと。」

わびすけ「ミズカマキリ?」


This is ミズカマキリ byいらすとや

竜太郎「ミズカマキリ。知ってる?」

わびすけ「あぁ、水の中にいるカマキリみたいなやつ?」

竜太郎「そのままだな。」

わびすけ「他にどう説明しろっていうんだよ。」

竜太郎「河川や湖沼のやや水深があって水生植物が繁茂する場所に生息するカメムシ目の生き物で体長が4㎝くらい。肉食で小型の魚なんかを食べる。」

わびすけ「詳しいな。ウィキペディアか、お前は。」

竜太郎「水の中にいるくせに泳ぎが得意じゃないんだよな?」

わびすけ「同意を求められても…。そうなのか?」

竜太郎「ミズカマキリなのにカマキリの仲間じゃないの、超ウケる。」

わびすけ「ああ、そう…。で、何?ミズカマキリを飼うの?なんで?」

竜太郎「ペットを飼いたいんだよ。癒やされたい」

わびすけ「その第一候補がミズカマキリってこと?なかなか珍しいね。」

竜太郎「これには深い事情があるのよ。長くてつまんないけど 聞く?」

わびすけ「いや いいや。聞かないです。」

竜太郎「じゃあ言うけど…。」

わびすけ「え?ああ 言うんだ。」

竜太郎「俺の住んでるマンションって狭くて犬や猫は飼えないんだよ。そんな部屋でもミズカマキリなら飼えるかなと思ってさ。」

わびすけ「思ってたより端的にまとまった理由だな。長くなくて良かったよ。予告通りちゃんとつまんなかったけど。」

竜太郎「それになかなかキュートだろ?ミズカマキリって。」

わびすけ「可愛さに関してはいまいちピンとこないんだけど、まあお前が好きで飼うんだったらいいんじゃない?」

竜太郎「捕食する姿なんか超愛おしい。」

わびすけ「そう?どっちかというとエグくない?」

竜太郎「可愛いしワクワクするし、動悸息切れ血尿が止まらない。」

わびすけ「それはミズカマキリ関係なく、何かしらの病気だからすぐに病院に行ったほうがいいよ。酒なんか飲んでないで薬を飲め。」

竜太郎「何匹くらい飼えばいいかなあ?」

わびすけ「知らん。」

竜太郎「せっかくだから自然に近い環境を整えてあげたいと思うんだよね。水草を準備してさ。同じ水槽にタニシやヒルとか入れたりして…。」

わびすけ「そんな汚めの川を再現した水槽を眺めて癒やされるか?タニシやヒルって…。さすがにどうかと思うよ。どうせ水槽を準備するんだったら綺麗な魚を飼ったらどうよ。」

竜太郎「あー、鯛とか?」

わびすけ「鯛!?ちょっと違…。」

竜太郎「たしかにそっちの方がいいかもな。水槽に鯛やヒラメやカンパチ、アワビに伊勢海老…。こういうのをアクアリウムっていうんだろ?」

わびすけ「いや、お前が今作ろうとしてるのは『いけす』っていうんだわ。アクアリウムじゃない。」

竜太郎「違うの?」

わびすけ「アクアリウムっていうのは観賞用の魚を入れるんだよ。食用を入れたら それはいけす。魚屋とかにあるヤツ。」

竜太郎「へぇ。でもお前んとこの息子、魚屋の水槽にを見て楽しそうにしてたよな?」

わびすけ「小さい子はそんなもんだよ。」

竜太郎「小さいって言ったって今年30だろ。」

わびすけ「アラサーじゃねえよ。成人すらしてないから。」

竜太郎「あれをアクアリウムと勘違いしてる可能性が…。」

わびすけ「ないよ、絶対。そもそも鯛やヒラメを入れるような大きい水槽なんか部屋に置けないんじゃないの?」

竜太郎「言われてみれば…。」

わびすけ「熱帯魚とかいいんじゃない?綺麗だよ。小さい水槽で飼えるしさ。カクレクマノミとかエンゼルフィッシュとか」

竜太郎「あとホッピーとか」

わびすけ「グッピーな。アクアリウムのホッピー割りを作るな。ホッピーを水槽に投入したらとんでもないことになるから絶対ダメ。」

竜太郎「意外と難しいもんだな。」

わびすけ「そうか?お前が勝手に迷走してるだけだと思うけど。ていうかさ、多少部屋が狭くても犬は飼えるんじゃないか?犬種を選べば。」

竜太郎「まじで?ゴールデンレトリバーいける?」

わびすけ「いけない。犬種を選べって言ってるだろ。大型犬をチョイスするな。あれは庭付き一戸建てに住む人が飼う犬だから。」

竜太郎「でも好きなんだよー。ゴールデンレトリバー」

わびすけ「…じゃあもう引っ越すしかないよ。」

竜太郎「そうだな。それもいいかもな。今のマンション、飽きてきたし。それにペット禁止だし。」

わびすけ「ペット禁止かよ。じゃあそもそも何も飼えないじゃないか。何だったんだよ、この時間。」

竜太郎「どんな家に引っ越せばいいかアドバイスくれる?」

わびすけ「また今度な。」



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