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手話通訳者になろう 木村晴美・岡典栄

 手話に触れる機会が減って、でも何か繋がっておきたい気持ちがあって、買った本。

手話通訳ってどんな仕事?

 そんな素朴な疑問に丁寧に答えてくれるのが、今回の本「手話通訳者になろう 木村晴美・岡典栄(白水社)」

 著者の木村晴美氏は、ろうの世界では超有名人。実際の動画とかを見てほしいんだけど、ものすごく手話が上手い。上手いと評価するのもおこがましいぐらいの、丁寧で洗練された手話の人。


 前半は手話通訳という仕事の資格や制度、主な働き方について簡単にまとめられている。福祉ベースに手話通訳事業があるから、なかなか技術を磨いて成長する機会が少ないのは、なんとも難しい問題。

 後半には実際に手話通訳関係で働いている人のインタビューが載せられている。業種が多彩でスポーツや医療、電話リレーサービス、国際手話通訳などの仕事がどんなものか知ることができる。
 それでも面白いのだけど、このインタビュー記事の面白さは、文字の裏に手話が見えること。

 この本では業種ごとに、10組の通訳関係者たちにインタビューをしていて、そのうちインタビューで会話する形式の章は1つだけ。残りは著者らがインタビューの内容を元に、彼らの仕事を紹介するエッセイのようになっている。時にインタビューの会話を引用しながら、手話通訳の現場を描くエッセイは、何だか不思議な読み応えだった。


 インタビューの大半は手話で行われているはず。おそらくそのせいか、日本語として読むとふわふわした違和感があるけれど、手話をイメージして読むと何となく分かりやすくなる気がした。
 そうか、この文章の背景には、手話がある。


 邦訳された海外小説に特有の読み味があるように、手話から翻訳された日本語にも独特の"色"がつくのだろうか。


 これだけ魅力的な世界なのに、学べるところが少ないのは悲しいなあ。

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