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世界基準以下な日本の避妊は「#なんでないの」のオンパレード。この過酷な現実を全日本人女性に伝えたい!「大人の性教育勉強会」参加レポート(中編)

前回の続きです。

この記事では、3月23日に日本橋茅場町で開催された「大人の性教育勉強会(Sex and Life Study)」という「学校では教えない、AVではわからない性の最先端情報の共有」をテーマにした講演会の内容を三部構成に渡って紹介する。

・前編:NPO法人ピルコン理事長 染矢明日香さん「まず大人の性教育への意識をアップデートすることから」

・中編(この投稿):#なんでないのプロジェクト代表 福田和子さん「スウェーデンの女の子は普通にアフターピルが買えるんです」

・後編:イベント主催 神田つばきさん「女性が70歳まで働くために、避けて通れない更年期の悩み」

上記のとおり、中編に当たる今回は「#なんでないのプロジェクト」代表の福田和子さんのお話をまとめていくつもりだ。

※ひとつ注意して頂きたいこととして、レポートはあくまで私個人がイベントに持参したメモ帳に残した記録や頂いた資料を元に書くものであり、私自身の感想(主観)が入る部分もある。
よって、イベントレポートも個人が書いたものとして認識していただければと思う。

※諸事情があり、レポートをまとめるのが大変遅くなってしまいましたが、日本の性教育の事情は講演会があった時期から大幅に進歩したとは言えないと考えているため、記事化することにしました。

※主催の神田さん・染矢さん・福田さんには執筆や配布資料の掲載のご許可を頂いています。

※今回の記事では福田さんのご協力のもと、避妊具の説明においてファクトチェック・Wチェックを行っていただきました。


「なぜ日本はスウェーデンのように当たり前に性の健康が守られる社会じゃないんだろう?」

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「#なんでないのプロジェクト」は、福田さんが大学生のときに留学していたスウェーデンで受けたショックがきっかけで始まった。

1年間の留学生活の中で、福田さんはスウェーデンにおける性の健康を取り巻く環境や社会的な支援の充実ぶりに驚愕する。

「日本は女性が自分の体を自分で守りにくい現状がある。なんで日本はスウェーデンのように当たり前にセクシャルヘルスが守られる社会じゃないんだろう?」

セクシャルヘルス、つまり性の健康を守ることにおいて、日本とスウェーデンが置かれている違いに大きなショックを受けた彼女は、公式サイトやツイッター、インスタグラム、フェイスブックなど各SNSアカウントを開設し、「#なんでないのプロジェクト」というアドボカシー団体を2018年にスタート。

団体の活動目的は、主に若者がセクシャルヘルスを当たり前に守れる社会を実現することだ。

日本語では入手が難しい情報を発信したり、イベントを企画したり、声を上げる場を提供したり、署名活動を行ったりなど、アドボカシーにこだわりつつ日本のセクシャルヘルスを推進する活動を行っている。

頂いた資料では、福田さんは日本のセクシャルヘルスを取り巻く現状と課題をこのように分類していた。

・性の健康を守れる場所
・避妊法の種類
・避妊へのアクセス
・頼れる情報

このうち、講演でくわしく述べていたことは性の健康を守れる場所、避妊法の種類、避妊へのアクセスの3点だったように思う。

というわけで、この記事では上記3点に焦点を当てることとした。

スウェーデン全土に設置された「ユース・クリニック」は若者のセクシャルヘルスを手厚く支援する医療機関


スウェーデンの若者が「性の健康を守れる場所」として利用する場所が、ユース・クリニック(スウェーデン語表記:Ungdomsmottagning)だ。

ユース・クリニックとは主に13歳〜25歳までの若者を対象としたセクシャルヘルスに関する医療機関で、国内各地になんと250ヶ所以上も設置されている。

福田さんによれば「スウェーデンの若い女の子たちのほとんどは、近所のユース・クリニックを知っている」とのこと。
スウェーデンの若者は、最寄りのユース・クリニックの場所や職員の情報などについて学校で教わるからだ。

ユース・クリニックには助産師、看護師、臨床心理士、セクソロジスト、産婦人科医、臨床心理士などが駐在している。

ユース・クリニックの職員の仕事は、妊娠に関する不安を抱えた若者の相談に乗ったり、自分に合った避妊方法を見つけたい人に向けて「避妊カウンセリング」を行ったり、人間関係の悩みやアルコールの過剰摂取防止に関するアドバイスの実施など。
若者が抱えがちな体と心の悩みに広く対応する点が特徴である。

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また、一部職員はLGBTをはじめとする性的マイノリティへの対応トレーニングも受けており、自分のセクシャリティに悩む若者の相談にも応じられるよう、さまざまな配慮も整っている。

当然ながらユース・クリニックに訪れる若者のプライバシーは厳守されているため、性的マイノリティであるか否かは問わず、ユース・クリニックに来訪したことが保護者に漏れたりすることはないという。

ちなみに、そこを訪れる事自体が全員にとって無料なだけでなく、18歳以下の来訪者に提供する避妊具はすべて無料。18歳以上の来訪者に関しても地域によっては無料の場所もある。
有料だとしても非常に安価な値段で避妊具を買える点もポイントだ。

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福田さんはユース・クリニックを訪れる機会があったとのこと。外国人のためピルを貰うことは出来なかったものの、コンドームの箱は無料で貰えたと言っていた。
国籍関係なく、セクシャルヘルスに悩む若者すべてに手を差し伸べるのがスウェーデンのユース・クリニックなのだろう。

世界にはこんなにある!?避妊具・避妊法の種類

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さて、ここからは福田さんの講演の目玉でもあった「避妊法の種類」について紹介していこう。

一般的に避妊具というと、皆さんは何を思い浮かべるだろうか?

恐らく大多数の日本人は、コンドームか低用量ピルを想像するかと思う。
現に私個人の経験や講演参加前の知識としても「避妊具=ゴムかピルでしょ?」と思っていた。

しかし、福田さんが紹介してくれた世界の避妊具や避妊法を見た私は、

「えっ……なんでゴムかピルしかないって思ってたというか、思わされてたの私……」

と、正直に言って大変なショックを受けた。

日本における避妊の選択肢が少なすぎること、そしてその問題が示唆する「闇」に関しては後述するとして、まずは世界の避妊具と避妊法について簡単に説明する。

以下の資料は、海外で普及されている避妊具ならびに避妊法の一覧だ。

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資料に並ぶ避妊具と避妊法は、左上から順に以下の名称で呼ばれる。

・低用量ピル
・コンドーム
・避妊注射
・避妊インプラント
・避妊リング
・IUD/IUS
・殺精子剤
・避妊シール
・ダイアフラム

低用量ピルとコンドームは日本でも馴染み深い避妊具なので言及は避け、それ以外の避妊具と避妊法の概要を紹介しよう。
(成功率は一般的使用の場合で、Planned Parenthood提供の情報を参考にしている。どれもややめたくなればやめられる、女性主体の避妊法である)

ちなみに、日本の医療機関ではまだ普及されていないため、個人輸入業者などから購入して何か問題が起こった時に診察を受けるのが難しいというデメリットがあることは、先に断っておく。

▼避妊注射

注射による避妊法。避妊成功率は94%。効果の持続期間は3ヶ月が目安のため、3ヶ月ごとに医療機関で注射をする必要がある。
人によっては不正出血があることもあるが、1年継続するとほぼ起こらなくなる人が多い。

▼避妊インプラント

二の腕の皮下に医療従事者が挿入することで避妊できる方法。インプラントからはプロゲステロンが放出されるため、避妊効果は高く、成功率は99%。一度体内に入れると3年程度は避妊効果が持続するが、避妊を辞めたいタイミングで辞めることも可能。

▼避妊リング

エストロゲンとプロゲステロンが放出される避妊具で、膣内に自分で挿入できる。避妊成功率は91%で、効果は約3週間続くため、4週目だけ外すことで生理周期を安定させる。

▼IUD

病院で医療従事者に子宮内に挿入してもらう形の避妊具であり、一度挿入すると10年効果が続く。挿入時間は5分足らずという短さ。
避妊成功率は99%と非常に高く、避妊を辞めたい時に辞めることもできる。

なかには装着してから3ヶ月〜6ヶ月の間は不正出血、生理不順、生理が重いなどの症状が起こる女性もいるものの、その期間を過ぎたあとは諸症状も消える。IUDにはホルモンが含まれていない点も特徴。

ちなみにこの日会場で行われた参加者アンケートでもTOP3に入る人気を集め、筆者もこの方法に投票した。

▼IUS

こちらもIUD同様、病院で医療従事者に挿入してもらう必要があり、時間は5分とかからない。避妊の成功率は99%。

また、やはり一部の女性には3ヶ月〜6ヶ月ほどの間不正出血や腹痛が起こることもあるが、慣れてくれば生理が軽くなったり、期間が短くなったりする。1年前後使った女性のなかには、生理がなくなったという人もいる。

IUDと違う点は、プロゲステロンというホルモンの放出があるところと、効果の持続期間が5年間というところ。
なお、こちらもIUDと一緒に会場内のアンケートでTOP3に入る人気を集めていた。

▼避妊シール

二の腕や太ももなど、ホルモンを吸収しやすい場所から好きな部位を一つ選び貼り、週に1回の貼り替えを3週間続け、生理がくる4週間目に剥がすシール型の避妊具。
生理周期を安定させる効果や生理痛の緩和、不正出血などを改善する効果があるとされている。避妊の成功率は91%。

こちらもIUD/IUSと同じく、会場の参加者アンケートでTOP3に入る人気ぶりで、やはり私も避妊シールに投票を行った。

参考:nandenaino | 避妊説明

参考:choice プロジェクト
※上記リンクを日本語訳した文書を福田さんから参考資料として頂きました。

注意点として、コンドーム以外の避妊具や避妊法には、性感染症を防ぐ効果はない。
避妊と性感染症予防はまったく別物であり、性感染症を予防するためにはコンドームの装着が推奨される。

こんなに避妊具や避妊法の値段が高いのは日本だけ!?海外では無料の国も

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この時点ですでに衝撃を受けた人もいるだろうが、さらに衝撃的なことに、なんと低用量ピル・IUD/IUS・避妊インプラント・避妊注射・ダイアフラム・避妊リングは、WHO(世界保健機関)によって「必須医薬品リスト」として指定されている。

と、ここで少し自分の日常生活を振り返って見てほしい。
私たちが暮らすこの日本社会において、上記のWHO指定の避妊具や避妊法のうち、馴染みがあるものとして浮かぶのは、低用量ピルだけではないだろうか?

以下の資料は、欧米諸国をはじめとする先進国と日本における避妊具や避妊法の値段を比較した表である(レート変動や政策の変更等で変化の可能性有。2018年調べ)。

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この表からまずわかるショッキングな事実は、WHOによって多数の避妊具や避妊法が必須医薬品リストに組み込まれているにもかかわらず、日本で普及されている避妊具は低用量ピルとIUD/IUSだけ、ということだ。
日本の列を見ると、避妊注射、避妊インプラント、ダイアフラム、避妊リングには「×」がついている。

しかしスウェーデンをはじめ、アメリカやイギリス、フランスでは当たり前のように全種類の避妊具と避妊法が手に入る環境が用意されているではないか。

一部の避妊具や避妊法の普及がない国もあるが、7種類中(IUD/IUSは別にカウントするとして7種類)4種類も普及されていない先進国は日本のみである。

追い打ちをかけてくるのは、その値段である。

表を見ればわかるように、なんと無料や月500円以下で避妊具を買える国もあるなか、日本は総じて高額だ。
IUD/IUSが最高10万円もかかる国は日本だけである(避妊ではなく、月経困難症が目的であれば保険が適用され1万円程度で挿入できる)。

国によっては万単位の値段がつけられている避妊具もあるものの、7種類のうちひとつは無料の避妊具があったり、他の避妊具に関しては非常に安価な値段で買えたりして、バランスが偏っている風には見えない。

保険を使ってこれらの避妊具を購入できる国もあるなか、日本では低用量ピルもIUD/IUSも、避妊が目的の場合は保険適用外である。

この現実を福田さんはこう語った。

「日本では、IUD/IUSは日本のガイドライン上、避妊としては経産婦の人にお勧めされた方法で、子どもを産んだことのない人には提供しない医師もいます。そうなった場合、例えば子どもを産んだことのない私が選べる手段はピルぐらいしかありません。
それだって無料でピルがもらえる国もあるのに、日本では保険適用外で高額です。

皆さんのなかには『とはいえこんなに避妊具や避妊法が充実していて、経済的負担も軽い国はどうせいわゆる先進国、欧米諸国だけでは?』と思う方もいらっしゃるかもしれません。

でも、実はアジア諸国など、いわゆる新興国と呼ばれる国々から日本に移民や技能実習生として来日した女性も、めちゃくちゃ困っている現実があります。

『なんで自分の国では無料でピルが貰えたのに日本では何千円もするの?』
『ピルとコンドーム以外なんでないの?』
『なんで日本の医師は避妊インプラントを処置できないの?それ以前になんで知らないの!?』

と、それまで慣れ親しんできた自分の体を守る方法が急に使えなくなって、不便や不安を感じている外国人もいるんです。

私のスウェーデンの同世代の友人は、一回3000円払ってIUSを挿れてもらい、3年間も避妊状態を持続できました。私は日本では、毎月ピルに2000円〜3000円払い、毎日薬を飲むしかありません。

ピルが体に合ってるという人もいます。
でも、ピルが合わない人もいるんです。
なのに、日本では特に若年女性にはまだ実質ピルとコンドームしか普及していません。

私たち日本の女性は、自分の体に合った避妊方法を選べない。
避妊の選択肢を国に奪われているんです

そう語った福田さんの言葉に、私は絶句せざるを得なかった。背筋がヒヤッとする思いすらした。

日本の避妊は男性に主導権があり、世界の避妊は女性に主導権がある


容赦なく現実を叩き続けるようで申し訳ないのだが、福田さんはこちらの資料も紹介してくれた。

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これは、WHOが発表した「避妊法割合(2015年)」の結果である。
世界各国において、なんらかの現代的避妊法(膣外射精やオギノ式は伝統的方法とされ、現代的避妊法には加味されない)が使用されている場合の避妊方法の割合と日本のそれとを比較した円グラフだ。

世界で人気の高い避妊法は、高い順からこのような割合を記録している。

・IUD 38%
・ピル 25%
・コンドーム 22%
・注射 13%
・インプラント 2%

この数字は、コンドームを性感染症予防のために使用している分を含まない。ここでのコンドームは、避妊法として使用されるコンドームのパーセンテージだ。
これを受け福田さんは「より確実で女性も使えるものが約8割を占め、主流になっている」と考察している。

それに対し、日本の割合を見てみよう。

・コンドーム 96%
・ピル 2%
・IUD 2%

唖然としないだろうか? 

この結果は、日本の避妊方法は妊娠や出産を経験する女性側が主体ではなく男性側が主体となっており、避妊の主導権は男性が圧倒的に握っているという現実を示している。

それを裏付けるデータも福田さんは紹介してくれた。

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資料は、なんらかの現代的避妊法が使用されている場合の男性用コンドームによる避妊と女性主体の避妊の比率を国ごとに比べた棒グラフである。

一番左端が日本の結果だが、ぶっちぎりで女性主体の避妊率よりも男性用コンドームの比率の方が高く、9割を超えていることがわかる。

世界では女性主体の避妊の方が男性がコンドームを使う比率を凌駕しているのに、明らかに日本だけ世界の水準と異なるのだ。現代的な避妊感覚に、国が追いついていない。

資料の下部にもあるように、日本は「他国にくらべ、どれだけ男性の一存で女性が弱い立場に置かれやすいか、どれだけ避妊失敗のリスクが高いのかが分かる」ことが指摘できる。

以上の資料から、現在の日本では避妊の主導権は妊娠と出産を経験する立場の女性には存在していない現状が断言できるのだ。

緊急避妊薬のアクセスに関する実態も世界に遅れを取っている日本

普段使える避妊具や避妊法だけでも「なんでないの!?」と思わざるを得なかったり、「なんでこんなに高いの!?」と驚きを隠せなかったりだが、加えてさらにもうひとつ問題がある。

緊急避妊薬に関する問題だ。

緊急避妊薬、またの名をアフターピルとは、コンドームの破損などにより避妊に失敗した場合やレイプをされた場合などの緊急事態時に72時間以内に服薬することで避妊の成功率を高められる薬剤である。

緊急避妊薬の主要な入手先は薬局、医療機関、学校、コミュニティヘルスケア、オンライン注文。

このうち日本でアクセスが認められているのは、医療機関のみだ(今月オンライン診療認可の方針は決まったがまだ課題は多いという見方もある)。

とはいえ、医療機関での入手については問題も指摘されてきた。

72時間以内の服薬が必要というタイムリミットがあることを加味すると、日曜日や祝日、連休など病院の休診日とタイムリミットが被ってしまった場合は妊娠のリスクが高くなる。
また、平日に学校や仕事を休んで通院することが難しい人もいる(値段の問題については後述)。

福田さんによれば、国によって処方箋が必要な場合もあるが、海外では薬局で緊急避妊薬を手に入れられる国が大変多いという。

欧米諸国だけではなく、隣国の中国やマレーシア、タイ、ベトナムなど同じアジア諸国でも薬局での入手は可能であり、その数は総勢なんと76カ国にものぼっているのだ。

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イギリスやオランダといった性教育先進国やフランスでは、学校で無料で緊急避妊薬を入手することも可能である。

※ちなみにオンライン診療に関して国内で審議が進んだのはごく最近の話。
2019年6月の年厚生労働省検討会で、特定の条件つきでオンライン処方を解禁することを決めたものの、課題は多いとされている。

参考:緊急避妊薬の処方、オンライン診療で可能に|医療維新 - m3.comの医療コラム

また、海外と日本の緊急避妊薬にかかる費用の格差も無視できない。

アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、フランス、ドイツにおける薬局での購入平均額は2500円と総じて安価で、処方箋がある場合は減額が適応される国もあれば、未成年は無料という国もある。

一方、日本で緊急避妊薬を医療機関で処方してもらう場合の平均的な値段は、なんと1.5万円前後、最近出たジェネリックでも1万円弱で、保険も効かない。

この価格設定が深刻である一例として、学生などの経済的弱者がレイプをされて緊急避妊薬の入手が必要になったとしても、警察に行かない限り突然万単位もの費用を捻出しなければならないケースが考えられる。

それだけではなく、家庭環境や屈辱感、恥辱感から「親に言えない、相談できない」「学校で知られたらどうしよう」という不安を抱える被害者も往々にして存在するだろう。

以上の問題点を総括して、福田さんは#なんでないのプロジェクトのサイトでこう指摘している。

つまり日本では、普段使える避妊法さえ他国と比べれば高額且つ選択肢も少ない上に緊急避妊さえ、値段・買いやすさの点で入手が困難
それでもまだ、予期せぬ妊娠をしてしまった女性ばかりが責められるべきですか?

「バイアグラのスピード承認」と国会による「コンドームで十分説」

なぜ日本ではこれほどまでに避妊に関する選択肢が少なく、またその値段も驚くほど高額なのだろうか。

その原因を考えるヒントとして、最後に以下のデータを紹介しよう。

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これは、男性の勃起不全の治療薬であるバイアグラの発売が国会で認められるまでの期間と、低用量ピルが認められるまでの期間やその経緯の概要図である。

この資料によれば、国会がバイアグラの承認にかけた期間は6ヶ月。
一方、低用量ピルにかかったそれは39年(468ヶ月)だったという。

両者が国会で承認されるまでの経緯は以下のとおりだ。

<バイアグラ>
1998年3月 アメリカで発売開始
1998年7月 60代の日本人男性が服薬後に死亡。男性はバイアグラを個人輸入していた。この事件をきっかけに国内で承認申請が行われる
1998年12月 中央薬事審議会で承認され、発売が決定

<低用量ピル>
1960年 避妊薬としてのピルの臨床試験が始まる
1999年6月 避妊薬としての低容量ピルが承認される。しかし国内外からは大批判が殺到。日本は国連加盟国の中で最後に低用量ピルを承認した国となった

こうして1999年にやっと低用量ピルが国内で承認されたわけだが、承認までの道のりは平坦ではなかった。

国会答弁では、何度も繰り返して「コンドームで十分説」が言われてきたのである。
「コンドームで十分説」の主要な答弁は福田さんが資料にまとめてくれたとおり。

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写真では見にくいと思うので以下に抜き出すこととする。

「コンドームによる避妊は、実行が容易でその費用も安価であること、使用者にとって安全であること等の利点を有しており、また、その避妊効果も使用法が適切であれば、十分高いものと考えている。」(答弁書128)
「コンドームは使用法が適切であれば避妊効果も十分高く、また、使用に当たって不可欠な男性の協力については、保健所等における新婚家庭等に対する指導を通じてその確保に努めている。」(答弁書128.132)
「コンドームによる避妊は、入手が容易であること、使用者にとって安全であること等の利点を有しており、また、その効果も使用法が適切であれば十分効果があることから、我が国において広く利用されているものと考えている」(答弁書132)

ではここで、コンドームによる避妊成功率を確認してみよう。

アメリカの保健福祉省(US Department of Health and Human Services)が管轄する疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention)が発表したデータによれば、男性用のコンドームを使った避妊の失敗率は18%に及ぶ。

以上のことから、コンドームによる避妊の成功率は80%前後であると推察できるわけだ。

さて、思い出してみて欲しい。

IUD/IUS、避妊シール、避妊インプラント、避妊注射、避妊リングといった海外で普及されている避妊具と避妊法の成功率はどうだっただろうか?

90%を超えているのだ。

90%を超える成功確率を持った避妊具や避妊法が世界には存在しているというのに、また18%もの確率で避妊は失敗するというのに、日本の国会では「コンドームで十分」「避妊効果は十分高い」「適切に使えば十分効果がある」と答弁されてきたわけである。

本当に十分なのだろうか?

厚生労働省は、平成29年度の国内における中絶件数は16万8015件を記録していることを発表している。

参考:厚生労働省「母体保護関係」

「保健所等における新婚家庭等に対する指導」を行なっているので大丈夫という旨の答弁もあったが、これは即ち「性教育をきちんと行っているから問題ない」ということを言いたかったのだろうか? 

だが上記の想像を絶する中絶件数の多さ(それも直近の結果だ)を見ると、国内の性教育や避妊に関する指導は不十分だと私は思う。

前編でも書いたように、現在中学・高校で使用されている性教育の教科書にはコンドームの正しい使用法すら書かれていないのだ。

自分の身辺や日常を思い返すと、コンドームをつけないセックスに対する神話が表現されたポルノも蔓延している。
「俺はナマ派だから」と言って憚らない男性もいるし、「彼氏がゴムをつけてくれません」という悲痛に満ちた声をネットに書き込んだり周囲の女友達に相談したりしている女性も大勢いる。

こういった現状を踏まえたうえでなお「コンドームで十分説」を唱えている人、それを信じている人、そして日本の性教育は徹底されていると主張する人に対し、私は非常に大きな危機感を覚える次第だ。

私たち日本人女性には自分で自分の体の健康を守れない現実がある

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「女性の体ならびに女性が自分の体の健康を守ることは国に軽視されている。蔑ろにされている。踏みにじられている」

私が福田さんの講演内容を聞いて真っ先に思ったことだ。

なぜ今まで避妊の方法はピルかコンドームしかないと思っていたんだろう? そして思わされていたんだろう?

そう思うと、悲しくて悔しくて仕方がなかった。

本当はこんなに選択肢があったこと、日本にはないものが多いこと、あったとしても保険適用外で値段が異常に高いこと。

そして女性の体調管理に役立ち、望まない妊娠を避けるための薬よりも、男性の勃起機能の維持を図る薬を、国が圧倒的なスピードの意思決定により承認したこと。

このような真実を知れば知るほど、私の体や私の体の健康の主導権は私にはないのだ、と絶望を覚えた。

緊急避妊薬のオンライン診療に関連するニュースが記憶新しい人も多いと思うが、初めてオンライン処方に関する検討会のニュースを見たときは、茫然としたものだった。

#なんでないののツイッターアカウントから発信されたこのツイートは、2019年3月29日付けのものだ。
3月29日といえば、厚生労働省が「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」を開いた日である。

その検討会に参加していたのは、9割が男性だったのだ。

ツイートでも言われているように、なぜ女性の体や女性の健康に関することがテーマの議論の中心人物が女性ではなく、男性なのだろうか?

私がこの光景を見たのは「大人の性教育勉強会」参加後(イベントは3月23日に実施)のことだったため、講演で得た知識が新鮮な状態で頭に残ったままだった。

だからこそ、強くこんなことを思った。

結局、私たちの体のことや健康に関する主導権を握っているのは男性社会なのだ。
私の体は私のものなのに、私の体は男性社会によって管理されている。
私たちの体は、家父長制が色濃く残るこの男性社会で、いまだに男性の所有物であると見なされているのだ。

国がやっと重い腰を上げて緊急避妊薬のオンライン診療実行に向けて動いていることは注視していくつもりだが、私としては「遅すぎた」と思う。

どうか皆さん、私がこう感じたことを笑わないでほしい。
大げさだとも思われたくない。

そして、今一度この現実がおかしいか? おかしくないか? 
胸に手を当ててじっくり考えてみて欲しい。

次回の後編で、大人の性教育勉強会のレポートは最後になる。
後編では、イベント主催の神田つばきさんによる「女性が70歳まで働くために、避けて通れない更年期の悩み」をまとめさせて頂く所存だ。

また、前編で講演をしてくださったNPO法人ピルコンの代表染矢明日香さんと福田さんは現在、change.orgで以下の署名を集めている。


日本の緊急避妊薬のオンライン診療を大きく前進させた署名で、解禁が決まった後も、診療の要件などのブラッシュアップを図るべく、引き続き活動を継続してくださっている。

この現状が「おかしい」と思った人はぜひURLをクリックして頂きたい。

できれば署名もして頂けると嬉しいです。

#なんでないの 公式サイト
https://www.nandenaino.com/

#なんでないの Twitterアカウント
https://twitter.com/nandenaino_

福田和子さん Twitterアカウント
https://twitter.com/kazukof12

ライターTwitter:@psy_kagami

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頭の中は、いつもごみ箱です。血まみれの愛の中で生きてます。夢は、死ぬまでに本を出すこと。それから、自分と自分の人生を心から愛せるようになること。

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加賀美サイ(作家ライター)

◉エッセイ、(私)小説、ファッション◉性・精神障害・生きづらさ・恋愛・文学・音楽・サブカルなどを書きます◉ちなみにADHD◉もがきまくっている日々◉連載中:オトナのハウコレhttps://otona.howcollect.jp/m/user/index/id/76

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