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ヒトによるカウンセリングの終わり

職場の同僚にお話ししたこと。

元々私は、対面(リアル)カウンセリングがどちらかと言えば苦手なタイプでした。

なので、2010年頃からSkypeによる文字チャットカウンセリングや、オンライン通話カウンセリングをメインにしています。

当時から2020年のコロナ禍に至るまで、カウンセリング業界のメインストリームは「対面カウンセリング」であり、一般的にカウンセラーは(口には出さなくても)「顔を見なきゃダメ」という人が多かったように思います。

「顔を見なきゃダメ」という言葉には、色々と言いたいことがあります。

例えば、そもそも多くのカウンセラーは「表情と感情の相関研究」について、十分な知見があるとは思えません(現に、表情研究の第一人者である、ポール・エクマンの名前すら知らないカウンセラーがほとんどです)。
にもかかわらず「顔(表情)からココロを読み取ることができる」と「思い込んでいる」
ように思います。

また、「顔を見なきゃダメ」という言葉は、逆に言えば「顔を見られたくないクライエント」には対応できない、そんな「カウンセリングスキルの幅の狭さ」のようにも感じます。

そして何よりも反省すべきは、対面カウンセリングというサービスをクライエント視点で考えたとき、そのサービスの体験に至るハードルには、それなりの高さがあると思い至らなかったことです。

考えてみて頂きたいのですが

対面カウンセリングを受けるには、まず服装や化粧など、身なりを整える作業をクライエントに強いることになります。

さらには、カウンセリング費用以外に、移動時間や交通費といったコストを支払う必要があります。

時間も、通常は9時~20時など、一般的な就労時間内で提供されることが多いでしょう。夜眠れないとき、不安が押し寄せてきたとき…まさにそのサービスが必要な「瞬間」には受けられません。

また、対面カウンセリングの場合、大抵クライエントの個人情報についても、いわゆる「カウンセリング契約書」等によって、明らかにすることが一般的です。

その上で、自らの悩み、言い換えれば「弱み」を目の前の人に話す…

こんな面倒でストレスのかかる行為を、誰が好き好んでしようとするのでしょうか。

そもそも、クライエントは「話を聴いて欲しい」または「悩みを解消したい」のであって、対面カウンセリングをして欲しいと言っているわけではありません。(もちろん「会って」話を聴いて欲しいというニーズを否定しているわけではありません)

厳しい言い方をすれば、対面カウンセリングがクライエントにとってストレスであるという理解が、対面至上主義カウンセラーには、全くないわけですね。

だから、平気で10回とかそれ以上のプログラムを組むのです。彼らは。

コロナ禍に陥るまで、本当に多くのカウンセラーが、対面カウンセリングをクライエントに強いてきました。彼らは口ではクライエントへの寄り添いを言いながら、実は深いところでクライエントよりも「自分のこと」を考えていたからです。

本当にクライエントに寄り添っているなら、まず、考えるべきは、「クライエントの相談しやすさ」のはずであり、個人を特定しうる情報も、可能な限り不要であるようにサービスを設計するはずです。

そうすると、対面よりはオンライン、オンラインであれば、顔出し無し、声も聴かれたくない人には、文字チャット、こうなるはずです。

クライエントの相談しやすさは、言い換えると「匿名性の高さ」でもあるからです。

匿名性が高くなればなるほど、反比例して、相談しやすくなる。これが現実です。(だから、無料匿名カウンセリングでは、クライエントは平気でカウンセラーに暴言を吐くわけですね。それだけ「感情を出しやすい」からです)

対面でイチからラポールを作って、「話づらいことを話してもらう」というステップは、カウンセラーにとっては、収益が発生しますが、クライエントにとっては時間と費用の無駄でしかありません。

もちろん、画面の向こうのカウンセラーを本当に信頼できるかどうか判断したいクライエントは、いわゆる試し行為等も仕掛けてきます。しかしそれは自由にすればよいのです。クライエントが時間(と時にはお金)を掛けてでも、したいことなのだから。

匿名性が高くなればなるほど、反比例して、相談しやすくなる。

これを理解できるカウンセラーが少なかったこと、また自らの学んだ対面カウンセリングにこだわるあまり、対面以外のカウンセリングスキルを延ばそうとしてこなかったこと、そして収益性の問題もあったでしょう。こういった業界事情から、匿名性の高いサービスを提供できる(きちんとした)カウンセラーが増えないままだったことが、カウンセリング業界の不幸でした。

いまや、AIの台頭により、カウンセラーという職業は風前の灯火になりつつあります。

若年世代を中心に、AIに悩みを話すことに抵抗が無くなっており、さらにAIカウンセリングは、時間も場所も問わず、個人情報も提供する必要がないのですから、当然ですよね。

Twitterでこのようなツイートがありました。

「ヒトには話づらいこともAIになら話せる」

まさにそのとおりです。AIはあなたの顔を見ようとしません。声も聴こうとしません。守秘義務を守るし、相談された内容をTwitterでツイートするようなバカな真似も決してしません。相談内容をツイートするような倫理的意識の低いカウンセラーにあたる心配がないのです。

また、AIには名前も住所も伝える必要がありません。身だしなみも時間も気にせず、いつでも好きな時に相談できます。

もちろん「ヒトに話を聴いて貰いたい」というニーズは残るでしょう。

しかし、もはやそのニーズの根本である「ヒトかAIかの区別」が、ヒトには難しくなってきているのですから、何のお守りにもなりません。

ココロ(感情)を扱う仕事は、AIには代替されにくい。

それこそ「思い込み」でしかありませんでした。もう、AIがカウンセリングを担う時代は、すぐそこに来ています。

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