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Twitter での6年間 #6

(Twitter での6年間 5 からの続き)

2014年3月、グリーンカード、つまり永住権の申請プロセスをはじめることにした。そのときぼくは H-1B ビザで働いていたのだが、このビザには6年の最終期限がある。2010年10月からなので期限まで残り2年半しかなかった。一度期限が切れてしまうと、基本的には国外に出ていかなければいけなくなる。H-1B で働いていてこれからも US で働きたいと考える以上、グリーンカードを取得する必要があるわけだ。

6月の WWDC で、iOS 7 にシェアエクステンション機能が搭載されるとの発表があった。社内でそれを実装するために優秀なエンジニア2人のチームが結成された。この機能はアプリから独立した拡張として別プロセスで動作するので、iOS に標準搭載されている Twitter 連携機能を直接使う必要があった。そこでその問題について詳しいぼくが認証部分をチーム外から手伝うことになった。その機能自体がシンプルなこともあり、2週間くらいでリリースの準備が整った。

9月はじめになり iOS 7 の対応作業が一段落したころ、マネージャーから呼び出され、何だかよくわからないプロジェクトの手伝いを依頼された。何かのデモのためにコンパクトな Twitter クライアントを緊急で作らないといけないらしく、iOS 標準の Twitter 連携機能を使い、通知タブ、トレンドのデータを簡単に取得できるライブラリをできる限り早く、遅くても1週間以内に用意してほしいということらしい。さっそく作業をはじめる。とりあえず認証回りはシェアエクステンションのコードを流用できた。Twitter API を叩く部分もパラメーターを渡すだけなので難しくない。問題はモデルオブジェクトだ。ツイート、ユーザー、トレンドなどのモデルオブジェクトは既存のものを流用するより新しいものを最初から書き起こしたほうが速いと判断した。デモの内容は詳しく教えてもらえなかったので、普通これくらいは必要だろうという機能を実装することにした。2日目の夜にだいたい完成したので、マネージャーを経由してどこかのホテルに缶詰にされてデモを実装してるらしい同僚にコードを送った。どうやらその実装でよかったらしい。その後も毎日夜にマネージャー経由でやりとりがあり、相手の求めに応じて細かい変更を加えていった。週が明けて9月8日になると、金曜の時点のコードで十分だという伝言がマネージャー経由で届く。彼はいったい何を作っているのか。その答えは9月10日の Apple の製品発表イベントで明らかになった。そのイベントでは Apple Watch が発表された。彼は Apple Watch 上で動作する Twitter アプリを作っていたのだった。ステージ上で行われた Watch から Twitter を使うデモは無事にうまくいき、この小さなプロジェクトも成功に終わった。

(Twitter での6年間 7 へ続く)

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