知能検査・発達検査の現在

毎週水曜日が基本お休みなので、水曜更新にしていく所存です。
前回MMPIと他の性格検査を比較しましたが、他の心理検査すなわち知能検査・発達検査との比較は述べませんでした。まず性格検査と知能検査・発達検査の立ち位置を考えたいと思います。神経心理学的検査はだいぶ違うので横に置いておきます。

知能検査・発達検査の現在

知能検査といえばウェクスラー式知能検査をまず挙げる人がほぼ100%でしょう。すなわち最新版だったらWAIS-IV(2018年)やWISC-V(2022年)、WPPSI-III(2017年)などです。非常によく改訂されており一般に心理検査といえばこれ、といった感もあるほどになっています。
それからビネー式知能検査も歴史が古いですね。知っている範囲で見る限り今は田中ビネーが主流かと。あとは一般的なのはKABC-IIぐらいでしょうか。
発達検査は近年の発達障害ブーム(ブームというの良くないが)とともに増えてきている感がありますが、その中でもしっかりしたものを見極める必要が出てきていると感じます。
歴史が古い伝統的なものだと遠城寺式乳幼児分析的発達検査(1960年)がありますし、新しく広く使われているものだと新版K式発達検査(2001年,2020年改訂)があります。発達障害の特性別評価法・MSPA(2012年)、Vineland-II適応行動尺度(2014年)、さらに海外では発達評価の基本とされているADOS-2(2015年)と近年出版が相次いでいます。

知能検査や発達検査で性格はわかるのか

SNSを始めインターネット上は、きちんとした有資格者から見ると嘘だろうという情報であふれています。特にウェクスラー式知能検査で何でもわかるようなことを言う人(そういう人に限って聞いたことがないような資格しか持っていなかったりする)がいます。
そもそも心理検査は、きちんと研修を受けていない人が解釈するとすぐ誤った結果を導きます。WISCの指標得点の凸凹があるかないかで発達障害の診断ができる!と言い切った時点でもう間違いと言えるでしょう。SNSを見る人は言い切る人を信じないでいただきたいと願うところです。
さらに進んで知能検査や発達検査を使うことで性格がわかるという人も中にはいます。なぜこうなるかは何となく予想がつきます。欧米と異なり日本では、心理検査に高いコストをかけて複数の検査を実施することができないからではないかと。
例えば米国だったら知能を見るならウェクスラー、発達を見るならADOSかADI、性格を見るならMMPIと、しっかり時間をかけて3つぐらいは検査を実施することもよくあります。日本だったらウェクスラーはやるとしても、ADOSの代わりにAQでスクリーニング、MMPIの代わりに短めのTEGかYG、それかロールシャッハもしかしたらバウムかも、といった感じでしょう。
それを突き詰めていけば、コスト的時間的にウェクスラーしかできない→ウェクスラーは発達もわかる→もしかしてウェクスラーで性格もわかるかもしれない、いやわかる!という不思議な現象が起きるのではないかとみています。
それがなぜナンセンスであるかは次回にします。

今回のまとめ

  • 一番有名で使用率も高い心理検査は(ご存じ)ウェクスラー式知能検査

  • 発達検査は近年すばらしい検査が増えている

  • コスト的時間的理由から、ウェクスラーで発達も性格もすべてわかるという誤謬が起きる


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?