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とっても大事!肩関節の固有感覚について。。。


1.英文紹介

Lubiatowski P, Ogrodowicz P, Wojtaszek M, Romanowski L. Bilateral shoulder proprioception deficit in unilateral anterior shoulder instability. J Shoulder Elbow Surg. 2019 Mar;28(3):561-569. doi: 10.1016/j.jse.2018.08.034. Epub 2018 Nov 28. PMID: 30502033.

2.目的

 肩関節不安定症と健常肩の関節位置を自動運動によって再現させて固有感覚を調べることを目的とした。さらに、関節位置覚と上肢挙上角度の相関を評価することである。

3.対象と方法

 一側の外傷性肩関節前方不安定症41名(女11名:平均27.1歳、男30名:平均25.0歳)とコントロール群27名(女17名:平均24.0歳、男10名:平均23.6歳)を対象とした。
 →不安定症群の取り込み基準: ①少なくとも2回の片側前方肩関節脱臼または亜脱臼の病歴があり、そのうちの1回目は外傷性であった。全身の関節弛緩性、腱板断裂、神経学的障害を有する患者は除外した。
 →コントロール群の取り込み基準: ①既往歴に肩関節外傷や慢性疼痛がないこと、②検査所見に肩関節の異常や弛緩の徴候がないこと、③年齢が30歳以下であること。
 肩関節の固有感覚の測定は、我々が開発した高精度測定機器を用いて行った(下記図)。

固有感覚の測定前に、軽い肩関節のウォームアップ運動を行い、皮膚受容器への刺激をなくすため、患者の上半身を脱がせ上腕と肩関節が椅子の要素に接触するのを最小限にした。試験中の視覚情報を除去するため、頭部と胴体は固定され、目隠しを行った(上記図参照)。 肩関節の固有感覚は、関節位置を再現する能力を評価するため、プロトコールは、基準となる上肢の位置を他動的に動かして、その位置を自動運動で再現することで行われた。基準となる角度と再現角度の差は、関節位置感覚の再現誤差(以下:EARJP)として評価した。EARJPは、両肩関節の屈曲および外転60°、90°、120°、内旋・外旋30°、45°、60°の12種類の位置で測定した(上記図参照)。すべての測定は各ポジションで5回繰り返した。各ポジションの平均EARJP値は、5回の測定から算出した。
 なお、肩関節不安定症の患側(以下:不安定肩)および健側(以下:安定肩)、コントロール群の3群で比較検討した。

4.結果

 A:屈曲、B:外転、C:内旋、D:外旋の図である。縦軸に誤差角度、横軸に上肢挙上角度ならびに3群を示している(上記図参照)。
 不安定肩でも安定肩でも固有感覚障害が認められた。両肩のEARJPは、ほぼすべての角度の外転と屈曲および45°と60°の外旋の際にコントロール群と比較して同様に大きかった。特に、顕著であったのは、外転60°であった。EARJP値は以下の通りである。 コントロール群では5.1°、安定肩で8.3°、不安定肩で9.5°であった。不安定肩では、ほぼすべての測定方向と上肢位置(30°内旋を除く)において、安定肩と不安定肩の間で関節位置のEARJPに有意差は認められなかった。さらに、不安定肩では、不安定肩と安定肩の外転または屈曲の角度が大きくなるにつれて、EARJPの平均値が明らかに減少することが観察された。

 上肢挙上角度60°と90°の間(P=0.012とP=0.0004)加えて、角度60°と120°の間(P=0.002とP=0.005)で、不安定肩の外転と屈曲におけるEARJP値に統計的に有意な差があることが示された(上記図参照)。

5.興味深い点

 関節不安定症の患者の患側のみならず健側まで固有感覚の定価を認めるというのは、おもしろいなと思いました。他の先行研究でも膝関節などにおいても外傷などによって怪我をすると健側への固有感覚の低下も同時に認めるといった報告が散見させる。また、それを手術によって修復すると固有感覚も改善するといった報告も成されている。そういったところからも考えられるのは、怪我をすると中枢神経筋制御の障害を来たし健側へのネガティブな影響を示唆しているのかもしれない。
 もう一点面白いなと思ったのは、肩関節不安定症の患側および健側ともに挙上角度が増加するとEARJP値が小さくなる。つまり誤差が少なくなる。これは、肩甲上腕関節が挙上角度が増すと関節包などの軟部組織が伸張されややtightな状態になるため、感覚情報が増すためだと思われる。
 固有感覚障害を呈しているのであれば、理学療法において、どんな工夫が必要であるだろうか。それを補うために視覚的な情報の入力やセミクローズに近い状態での運動療法などが有効なのかもしれない。


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