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2025年問題に抗うホルミシス

「私を殺さないものは私を一層強くする」 
~フリードリヒ・ニーチェ~

自己奮起に役立つこの言葉は現代の科学で発見された「Nrf2」というタンパク質によって証明されたことになる。このタンパク質の働きを知れば、迫る2025年問題を見事に解決する可能性があるので、是非最後までお読み頂きたい。このタンパク質の働きを活かしたビジネスは既に始まっているが、実は落とし穴に嵌りやすいため注意が必要である。本記事ではNrf2の働きを中心に、我が国の未来を守る可能性のあるビジネスとその落とし穴について紹介したい。


Nrf2の発見

誰もが筋トレをすれば強くなれることを知っているし、勉強をすれば賢くなることを知っている。筋トレは筋肥大、勉強は神経細胞同士の連結によるもので、いずれも科学的根拠に基づいた見解だ。しかし、両者とも自己の努力を必要とする能動的な行為である。ニーチェの言う「私を殺さないもの」とは意味合いが異なる。あくまでも受動的な刺激によって強くなるという部分が重要なのだ。

この格言にぴったりな発見は『Nrf2(核転写因子関連因子2)』という転写因子だ。有害な活性酸素種(ROS)に暴露されることでNrf2が活性化して体内の抗酸化物質の量を増やすことができる。抗酸化物質はROSを見事に除去し、慢性疾患から我々の身体を守ってくれる救世主だ。ROSが過剰になると様々な慢性疾患を患うことになるが、少量のROSはNrf2を刺激することで我々を強くすることができる。まさに「私を殺さないものは私を一層強くする」を体現したタンパク質の発見である。

Nrf2が発見されたのは30年も前である。何度もノーベル生理学・医学賞の候補として登場するものの、未だに受賞はしていない。Nrf2はがん細胞が自身を守るために利用しているタンパク質でもあり、近年はがんとの関連で注目を集めている。この辺りの解明が進み、がん治療に貢献することができれば受賞の可能性はますます高くなるだろう。いずれにしても注目すべきタンパク質である。

2025年問題とホルミシス

Nrf2の働きが注目されるようになってから、関連する商品が市場に出回っている。クルクミンやレスベラトロールのようなポリフェノールサプリメントがその最たるものである。ポリフェノールは植物が害虫や紫外線から自身を守るために合成する物質であるが、ヒトにとっては微量な毒であり、ROSと同様にこれらがNrf2を活性化させる。これは『ホルミシス』と呼ばれる現象として知られている。微量な毒がかえって我々を強くするのだ。Nrf2はまさにホルミシスのメカニズムを証明したタンパク質であり、上手く利用すれば迫る2025年問題に対応することができる。

2025年問題は団塊の世代(1947年から1949年生まれ)の全員が75歳以上の後期高齢者となることを指す。これまで問題となっていた超高齢社会とはレベル違いの問題が起こることが予想されている。医療・介護サービスの需要増大、社会保障制度の財政悪化、労働力人口の減少など、様々な社会問題を引き起こすことが懸念されており、政府や自治体は対応策を講じているものの、十分な備えができているとは決して言えない。

何よりこの問題に直面するのは自分自身であることを皆が自覚していないことが重大である。健康を害して働くことができなくなれば、国を守るどころか足を引っ張ることになるのだ。もちろん自分自身の生活の質(QOL)が低下するということが本人にとっては最重要な問題であろう。国民全員が国や家族、何より自分自身を守る意識を持つことが重要と言える。ホルミシスによりNrf2を活性化させる習慣を身につけるだけで、2025年問題の多くの課題を解決するのに役立つはずだ。

ホルミシスで高まるロバストネス

医療の役割はレジリエンス(回復する力)を高めることであるが、2025年問題に対抗するのはロバストネス(予防する力)を高めることである。疾病を患う前に予防することが重要だ。そのためにホルミシスについて正しく知り、どんな習慣がNrf2を活性化させることができるのかを理解する必要がある。

ホルミシスは微量な刺激であることが重要である。その刺激が過剰になると有毒となるのだ。つまりポリフェノールのサプリメントや過剰なROSを発生させる生活習慣には注意が必要である。タイムリーな話題として紅麹サプリメントの事件があるが、有効成分のモナコリンKは2022年8月に欧米で規制が強化されている。理由はモナコリンKがロバスタチンという薬と同じ分子構造をしているからだ。さらに、ロバスタチンは体内で活性化されて働くのに対し、紅麹に含まれるモナコリンKの一部は初めから活性型となっている。つまり、薬と同等かそれ以上にコレステロールを下げる働きがあり、コレステロールが少し高いからという自身の判断で飲むにはリスクが高すぎるのだ。事件の真相はまだはっきりとしていないが、微量であれば有効であるが、過剰な用量は有害であることを知る必要がある。Nrf2の活性化も同様に、微量なポリフェノールやROSが有効であるのであって、決して過剰であってはならない。運動も同様である。

効果的にNrf2を活性化させる方法は下記の通りである。

  • 1日20分の有酸素運動

  • 1日350gの野菜の摂取

  • 1日200gの果物の摂取

  • 1日150gの青魚の摂取

  • 1日20分の日光浴(紫外線)

  • 1日8時間の睡眠枠(7時間睡眠)

  • 夕飯を早めに食べる(12時間の断食)

  • 過剰な糖質を避ける

こうした習慣がNrf2を活性化させ、有害な環境毒からミトコンドリアやDNA、細胞を守り、身体機能や認知機能を高めることにつながるのだ。加えて1日に必要な水分の摂取を意識することも重要である。男性は2リットル、女性は1.6リットルが推奨されている。こうしてみると、どれも当たり前の健康的な生活習慣である。多くの人が知っている。しかし、多くの人が実践していないだろう。それはおそらく理由を知らないからだ。ホルミシスとなるNrf2の働きを理解することができれば、これほどメリットのある習慣はないことが分かる。

大きなビジネスチャンス

超高齢社会がピークに達する昨今、真に意味のある健康ビジネスにはチャンスがあることは間違いない。闇の深いサプリメントの話ではない。正しく生活習慣を助言できる人材やAIのパートナーが必要なのだ。すでにヘルスコーチやパーソナルトレーナーといった人材の育成は盛り上がりをみせている。AIの発展が目覚ましいのは連日ニュースになっている。個人に合わせたホルミシスを適切にアドバイスすることができれば2025年問題に対処し、それ以降の日本の未来を変えることができるだろう。

最近注目されているAI(ChatGPT、Gemini)にホルミシスやNrf2について尋ねると、論文でレビューされている内容をほとんど間違えずに回答してくれれる。しかし、あたかも本当のことであるように誤った回答をすること(AIハルシネーション)もある。これは重大な問題である。大部分はAIを使ったサポートに任せても良いかもしれないが、最終的にアウトプットするレポートには人間による微調整が必要であり、ニュアンスに関しては人間が直接指導するといった体制が必要である。また、人の温かみはAIやロボットにはできない重要な要素である。悩みを傾聴し、心の支えとなることができる人材が必要だ。

ニーチェの言葉「私を殺さないものは私を一層強くする」というのは現代人であれば誰もが実感している事実であろう。そしてそれを証明するようなタンパク質Nrf2も既に発見され、広く研究されている。ホルミシスと呼ばれるこのタンパク質の持つ働きは、環境毒の多い現代社会を生き抜くために必要不可欠な能力である。ホルミシスは疾病を予防する力であるロバストネスを高めるが、多くの人がホルミシスを高める健康的な生活習慣を実践していない。そこでAIの活用が期待されるが、AIには悩める人に寄り添う心がない。こうした現状から、「正しく健康的な生活習慣を指導できる人材の育成」こそが大きなビジネスチャンスとなると言える。

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