見出し画像

かすがいを見た今夜

夫と喧嘩した。
とても些細なことなのだけど、軽い気持ちで相談したことに対する夫の返答があまりにも心なく響いたのだ。近頃の体調不良に加えていつもの家事に育児に少し疲れていたのだと思う。受け皿の方のコンディションも良くなかったのかもしれない。
むっとするくらいで済めばよかったのだけど、もやもやはイライラに変わりイライラは涙になった。
目に涙をためて夫を突き放した。

こんちきしょう、ぜったいに熟年離婚してやる。熟年まで待てるか。無理だ。なるはやで離婚だ。もう顔も見たくない。
頭の中は煮えたぎってくらくらするほどだった。
怒りに任せて部屋を片付ける。
部屋の隅に落ちているレゴを拾う。
テーブルの下から折り紙を集める。
本棚へ本をしまう。
どんどん部屋が片付いていく。
なんだか少し思考がすっきりするけれど、それでも怒りはおさまらない。

夕飯を終えて、末っ子とお風呂に入っていると息子がやってきた。
「パパとお話してあげてよ。ごめんねって言ってもママがいいよって言ってくれないって言ってるよ」
かわいい。息子かわいい。息子に免じて許そうか、とちらつく。
曖昧な返事で濁して、しばらくすると今度は長女がやってきた。
「ママ、パパと仲直りしてよ。パパはごめんねって言ったんでしょ?」
言った。言ったけど。
「だってさ、パパが最初に、お話しするのは時間の無駄になるって言ったんだよ」
「そうかもしれないけど、なんでも自分が好きなようにはならないんだよ。とにかく、パパのお顔見たらママも謝ること!わかった?」
ぐむ。正論だから「はい」としか言えない。

お風呂からあがってみると、反省したらしい夫は残りの台所の洗い物を終え、子どもたちのお薬や歯磨きなど諸々も済ませ、子どもたちに絵本を読んでいた。
やればできるじゃないか。

しばらくするとまた娘。
「パパとママがお話しないとさみしくなっちゃう。大好きだから結婚したんでしょ?」
切ない顔で言う。
もう仲直りしないわけにはいかない。
「ごめんね」
この一言で長女も息子もとても安心した様子だった。とってもいい笑顔。
心配かけてごめんね、子どもたち。
でも、ママも人間だから喧嘩もするし腹も立つしかなしくもなるんだ。

それにしても、ちゃんと問題解決に向けて動ける子どもたち、純粋にすごいな、と思う。
私が子どもだったらただ傍観してたはず。
嫌なことをいやだなぁって受け止めるだけにしないこと、とても大事なことだよね。


また読みにきてくれたらそれでもう。