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サウナイキタイマガジンへ寄稿して

「ぷいさん、大垣サウナの記事書きません?」サウナイキタイのかぼちゃくんからそう声をかけてもらったのはもう去年の夏だったと思う。

声をかけてもらってからも何度か足を運び、また取材もさせていただいた大垣サウナ。行くたびに好きになる気持ちとは裏腹に、筆は一向に進まなかった。

サウナイキタイマガジンの質の担保の問題(今回は男性専用施設の話なので)、大勢の人に大垣サウナの魅力を知って欲しいという純粋な気持ちと、訪問客の増加によって秩序の均衡を壊すことになったらどうしよう、という気持ちが交錯し、思考停止状態が続いてしまっていたからだ。

(最近は少しリテラシーが低いと感じるサウナイキタイのサ活投稿も散見されるようになってしまったので、本当に難しいなあと感じている。)

加えて、サウナ愛の無いインフルエンサーの目に留まり、今まで大切に育てられてきた花壇を踏み荒らされることになったら・・・目もあてられない。大垣サウナは、言わば外敵(泥棒)除けの柵の無い作物畑と同じなのだ。

大垣サウナはもともと、常連の来客分で充分経営が成り立っている施設だ。

つまり、「発掘」などという視点で語るよそ者の正義感はそれこそおこがましいものであり、甚だお門違いなものになる。スタンスとしては、ただただ、「片思い」で在り続ける必要があり、バランスを保つのが非常に難しいものだった。
(当然、発掘されるべき施設はある。大垣サウナにおいてはそれは当てはまらない、という話)

それでも、確固たる信念と必要性のもと、自身を奮い立たせてなんとか書ききることができた。

この場を借りてサウナイキタイマガジンを読んでくださった皆様、サウナイキタイの皆様にお礼を申し上げたい。

アーカイブすることの重要性を考える

私が危惧していることの1つに、サウナは過去の情報の整理が全くなされておらず、惜しくも閉店していった数々のサウナ施設の情報を今インターネット上で調べようとしても、恐ろしいほどに情報が出てこないという事がある。

・サウナ東京ドーム(後楽園サウナ)
・新宿ビッグレモン
・新宿グリーンプラザ
・スパグランデ(ニュージャパン)
・ニュージャパン阿倍野
・サウナ言問
・文京シビックランド(銭湯)
・閉店した全国の健康センター、健康ランド、ヘルスセンター

等々・・・。上記はあくまで個人的な興味のある(閉店した)施設だが、試しに検索してみてほしい。訪問記録はおろか、写真などはほぼほぼ残っていないことがわかる。
(かろうじて、後楽園サウナとグリーンプラザは閉店を惜しむ熱いブログが残っている)

特に、後楽園サウナとスパグランデについては、未体験なことを本当に悔やんでいる。少しでもその残り香を嗅ごうと試みるも、全くの手ごたえのない状況に愕然とした。

インターネット(PC)が一般的に爆発的な普及を見せたのが1995年で、それ以後様々なジャンルのマニア(先駆者)によってポータルサイトのようなものが作成されていったが、サウナに関しては全くの皆無だったことがよくわかる。(2000年以前なら相当数のサウナが現存していたと思われるのに、情報が皆無なのは逆に面白い現象だ)まさに「サウナイキタイ」前と後の世界だと思う。

そのうち、スパプラザの記憶も記録もどんどんweb上からも消えていってしまうことだろう。だからこそ、きっちり書き残すことが大切だ。

そのような状況の中、大垣サウナの歴史を書き残すということに、とても歴史的意義があることを改めて認識し、マガジン執筆のモチベーションにつなげることができた。

(サウナの歴史編纂の必要性は改めてキッチリnoteに書こうと思う)

歴史を振り返って改めて認識する大垣サウナの魅力

「熱いサウナ、キンキンの水風呂」という表面的でキャッチーな言葉を意図的に使用してはいるが、やはり大垣サウナの魅力はホスピタリティだと思っている。

溢れる清潔感、居心地の良さ。愛情。絶妙なキャパシティ。矛盾のない空間設計。

ハード面の良さにかまけて清掃などを怠ってて空気が澱んでる施設が東京にはどれほど多いことか..

食べ物屋に例えると、めちゃめちゃうまい大衆食堂なのに清潔感に溢れてる感じ。大衆食堂ってうまいけど大抵テーブルとかペタペタしてて油っぽい空間なことが多いじゃないですか。それが全くないやつ。「大衆」なんて付けたら失礼なレベル。実際失礼なほど気品がある。そう、気品があるんです・・・

でも、そもそも食堂って抵抗ある、っていう人には不向き。あと、1人で閉じ籠るように過ごしたい人には不向き。おしゃれで前衛的な要素が欲しい人にも不向き。スピリチュアルさやオーガニック、北欧的センスが欲しい人にも不向きだ。

個人的には、「ロウリュができる」、とか「ヴィヒタがある」とか、トントゥやヒンメリをはじめとするアイテムが陳列されてるとか、そういったもの1つ1つは単なる記号に過ぎないと思っている。

ただロウリュをしたければテントサウナの方が好きなだけ気ままにロウリュできるし、北欧的な要素を目に焼き付けたいならムーミンバレーパークに行けばよい。
(これは概念的な話であり、嗜好を押し付けるものではありません)

本質は表層に宿ることはなく、根っこに宿るものだ。

目に見えない心遣いに気がつけた時、なんだか少し大人になった気になる。言葉じゃない手段で会話をする。そういう感覚がわかる人は是非足を運んでもらいたい。

最後に。サウナは有限なものだ。いつでもどんなときでも譲り合いの精神で、なるたけつつましく過ごしたい。

そして、大垣サウナは53年間地元の人に支えられ、充分新規顧客を獲得しなくても経営が成り立っていることも忘れないで欲しい。

願わくば、「聖地」などという修飾語で宣伝しようとする人間が現れることなく平和なまま大垣サウナが益々の発展をとげることを祈念して。

Special Thanks :タキオン(いち早く大垣サウナを紹介したのはこの人です)


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