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ビンの中身が溢れて涙になった

ものすごく些細なことがきっかけで泣いてしまうことが時々あります。

後から考えてみると、「なんであんなことで涙が出たんだろう」と首を傾げるような些細なことで。



よく、感動的な映画や小説の感想で「感情が溢れた」という言葉を耳にします。

この言葉をきくと、嬉しいとか、素晴らしいとか、切ないとか、いろんな感情が頭の中から口を通って出てこようとしている情景が浮かんでいました。


けれど最近、私がよく泣いていた頃のことを思い出した時から、「感情が溢れる」と聞いて思い浮かぶ情景が変わったんです。

頭の中から外に溢れ出そうとする感情たちじゃなくて、
水がなみなみと入ったビンに、バケツから新たに水が注がれて、中身が溢れ出てしまう。
そんな情景です。


表面張力でぎりぎり保っていたビンの中身。

本当は少しずつ蒸発するはずだったのに、雪崩のように流れ込んできたものによって、溢れてしまった中身。


一度溢れてしまったものは、もうどうにも止まらなくて、気づいたらガラスの瓶は、脆くて弱い紙コップに成り果てている。

そして、一度ぐしゃぐしゃになって濡れてしまった紙コップは、もう何も含むことができなくて

ただただ、上から注がれるものたちが周りに飛び跳ねるだけ。
相変わらず、水は溢れ出たまま。


そして私は、涙を止めることができない。


傷ついたこと、ストレス、漠然とした不安。

それらがいっぱいに詰まったビンに、たった一滴でも新たに加わったら、途端に溢れて止まらなくなる。

ビンが大きければ大きいほど、一度溢れたらすぐには止まらなくて、ジャムのビンみたいにフタがあったら良いのに、と思ってしまう。

蓋を閉めても、中身は減らないのに。


年齢を少しずつ重ねて、ビンの大きさも変わってきました。

でも、大きくなったから溢れることが少なくなったというよりは、普段からビンの中にある水の量が増えたという方が適切だった。

抱えるものが増え、吐き出す機会が減ったのです。



ビンの中に水が並々と入っているとき、
ほんの少しでも水が加わるような出来事があれば

途端にビンの中身は溢れ出して、止まらなくなる。


そんな光景を思い浮かべて、早く水が蒸発してしまえばいいのにと思いながら、涙を流します。

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