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【新聞奨学生という良さげな制度】ワシの若き日の思い出

初恋に続いて、今回の関西旅行で思い出した甘酸っぱい話をログのために残そうと思う。

昨日、2年ぶりに新幹線に乗って大阪に訪れた。大好きな川崎フロンターレの優勝を見届けるため。試合には負けるも優勝争いしていたサンフレッチェ広島も負けたため、フロンターレが優勝することとなり、見事優勝を見届けることが叶った。これは人生における嬉しい思い出の一つとなった。

で、今回の旅行はフロンターレの優勝以外にももう一つテーマがあった、それは和歌山県に訪れること。

ここ1-2年で全県制覇しようと思っていたのだが、あと残りが9県。

和歌山県
島根県、鳥取県、山口県
佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、鹿児島県

効率良く回りたいところだが、和歌山がどうにもポツーンと残っててネックやった。

で、今回大阪遠征が日曜帰りより月曜帰りのが都合良さそうなので、和歌山に上陸することにした。楽しみたいのは、

和歌山ラーメン(^^)

お宿のあった大阪の天王寺方面から、和歌山までは快速で1時間ほど。電車に揺られながら、ふと思い出したのは、

高木さん!

初恋物語の記事で触れたが、ワシは高校時代の大学受験で軒並み落ちまくり、

・就職
・専門学校
・浪人

のどれかを選ばねばならなくなった。
・実家はギガント貧乏
・頭はギガント馬鹿
なので、普通に考えたら「就職」となる。高校は一応普通科だが偏差値40くらいの、商業高校や工業高校よりレベル低いとこなので、普通の進路は就職。進学とは専門学校へ行くことを概ね指していた。

ただ、その時のワシは、家族・教師・同級生の「無謀なことやめたら?」という圧力に抵抗した。「世の中的に、大学行くとか、キャンパスライフとかしてみてーよ!」とあらがった。少し楽しげな浪人生活、夢のキャンパスライフ、バイブル「冬物語」に出てた普通の生活を俺もしてーよと思ってた。そう俺の夢は

普通になること

ただ、浪人もクソも銭が無い。冬物語に出てたような、モグリで予備校に通う度胸も無かった。

そんな中、たまたま見たのが進路指導室にあった「新聞奨学生」の制度。
新聞配れば、
・予備校代免除
・無料の寮完備
・給料まで出る
という、夢のような神制度。
藁にもすがる思いで、東京大阪名古屋の色んな新聞社の奨学会に問い合わせをし、最初に電話をくれた日経新聞の大阪奨学会に行くことに決めた。

大学全部落ちて、家族からも色んな大人からも同級生からも、みんなの冷ややかな目で見られてた時、親身に電話で、

「いつから来れる?明日から来れる?頼りしとるで!」
と言われ、なんか舞い上がってた。

こんなワシでも必要としてくれる人や場所があったなんて。

しかし、今ならわかる。真面目に新聞配る新聞奨学生は、新聞販売所からしたら金の卵。1秒でも早く囲って人員確保しないと、死活問題。とにかくまともな人材が慢性的に不足してるのだ。他所を出し抜いて、いの一番に電話して来たってことは、この日経新聞の大阪奨学会は、

メチャンコ人材に困ってたのだ

あとから、色んな奨学会から電話の嵐が来るも、
「大阪の日経に決まったので」と断る。
「うちのが楽だよ」「君と同じ浪人生いるよ」「うちで浪人して◯◯大学受かった人いるよ」とか言われるも、パンチ佐藤のごとく
「自分の心は、日経の大阪です!」と一途だった。、ただ最初に電話をくれたという理由だけで。

大阪である必然性はほぼ無いんだが、

・地元の愛知いたら地元の友達と遊んじゃう(←そんな友達おらんのに)
・俺の生まれは神戸!(←産みに行っただけで、思い出無し)

と、大阪がワシの場所に相応しいと自分を説得してた。

大阪の吹田市にある日経の専売所に配属されたワシ。ワシには専売所の上にある三畳の部屋があてがわれた。布団敷いて机置いたら隙間無し。後で聞かされたのだが、その部屋は前住んでた人のオイタで、ウジが湧き、ワシが来る直前に消毒したとのことであった。。

各部屋にはインターホンがあるのだが、これがメチャ恐怖。音がけたたましく、

パーッ、パーッ、パーッ

と鳴って、インターホン出るとお決まりのセリフ

福島くん、不配やで

新聞配達用語で、東では不着、西では不配、ようは配達漏れである。1日で500戸ほど配るのだが、日経新聞取る人なんてそんなには居ないから、配達範囲が他の一般紙と比べて広いのです。原付でメチャ急いで配らないと時間指定のある人の家に間に合わない、焦る、急いで配る、ミスが起こるのスパイラル。そして、勉強の時間も確保出来なくなる。

新聞奨学生で、寮付き・学費付きってのは、基本的に置屋の遊女と変わらない。逃げれない住居あてがわれて、借金背負った状態でスタート。そんながんじがらめな状態で、辛くて一年持たずに辞める子もいる。辞めた子は、クレイジーな世界から脱してシャバに戻っただけなんだが、残った人らからしたら、
「あいつ根性無かったな」でおしまい。

朝2時に起きて、チラシを新聞に同梱する作業して、配達へでる。6時には終えてて、朝飯食って、原付で代々木ゼミナール大阪校へ。9時から予備校の授業。昼になったら、原付で専売所戻って夕刊の配達へ。翌朝はまた2時起きだで、22時には寝ないと体持たない。

この生活を1年やったら、もう身体ヘトヘト。夕刊の無い日曜はオアシスだし、たまにある休刊日はホンマに天国。

で、周り回って、高木さん。

専売所には新聞奨学生以外にも、学生を兼務してない専売員ってのがいる。彼らはなんちゅうか、カイジとかアカギに出てくるリーダー格で、経験と地位と小金を持ってる。

そんな地位を利用して、健全な浪人生から返すあての無い借金ばかりする自称ミュージシャンなんてもいたり、まぁ、人種のルツボなのだが、高木さんはメチャンコ良い人。優しいし、たまに飯奢ってくれるし、背が高くてサングラスしてて、専売員の中でもリーダーの中のリーダー。ボソボソって話すんだけど、とにかくワシを気にかけてくれてた。

専売所には、同期で入った子が5人
・兵庫出身、理系志望の浪人生
・奈良出身、文系志望でコテコテの関西弁使う浪人生
・大阪出身の夜間の理系大学生
・熊本から来た文系志望の浪人
・鹿児島から来た、音楽学校生

で、兵庫理系浪人生は、イケメンで遊び人。奈良のコテコテは群れるようで群れず正体不明。大学生と音楽学校生は、たまに遊んで息抜きしないといけない。そして、熊本文系は陰気。

そんなわけで、
・群れるグループ:イケメン、音楽、夜学
・群れないグループ:コテコテ、陰気
に分かれ、ワシはどちらともそこそこ仲良くしてた。
皆に共通してたのは、

全然勉強してない

ってとこ。

そんな中途半端だし、ハイブリッドなワシは、なんか高木さんに物凄く気に入られてた。その理由は、ワシが高校時代からやっていた、

競馬

高木さんは、新聞配って稼いだ銭を、競馬とパチンコに注いでた。

ワシは、大学進学の足を引っ張る地元の人たちから旅だって大阪に来たのだが、大阪で得た人脈は、そんなにイケてなかった。
でも、なんか悟った。

世の中広い、なんでもありだわ

って。ちょうどこの年に阪神大震災も味わい。新聞配達中に被災したが、なんとか怪我せずに済んだ。

で、高木さんなんだが、
貴重な日曜日は、

夕刊が無い貴重な休息の日、勉強できる曜日

であると同時に、

競馬で目玉な良いレースが行われる曜日

でもある。


朝刊配り終わって、束の間の二度寝したり、勉強してると、

ドンドン、ドンドンふくしまくーん、競馬いこーや
ドンドンドン、福島くん、夏競馬いこーや、ツインターボ出るで

って、毎週誘ってくれるの。
ほんまに、毎週毎週。

ただ、高木さん悪魔じゃないから、流石にインターホン使ってまでは、起こしてこない。アレの恐ろしさは彼も、知ってるので。高木さんも昔は寮にいたけど、専売所の借り上げマンションに住めるという、超特権階級でいらしたのだ。

で、覚えてたことが、

高木さんは和歌山出身

ってこと。なんか垢抜けてなくて、少し愛くるしさもあり、悪魔に魂売ってないことと、和歌山出身ってのが、妙に納得感あったの。根拠ゼロだけど。

そんな、長々と書いた高木さんと新聞奨学生のこと。
ワシは新聞奨学生なければ、大学生にはなれなかったし、早稲田に入ることなんて、夢のまた夢だった。ガッツや執念あるヤツにはセーフティーネットになると思う。

ただ、ホンマにハードだから、直ぐ辞める奴が大量発生する。で、真面目に続けるヤツにしわ寄せが来るから、真面目くんの負荷がかかるので、1度仕事納めたら二度としたくなくなる。これは、ブラックな職場の典型でもある。

未来の若者のために、学べる環境をもっと整えてあげたいし、整えて欲しいと思うよ。

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