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ゴールデンボンバー『女々しくて』(2009年/2011年)

演奏しないヴィジュアル系バンドとして有名になった、「金爆」ことゴールデンボンバーの皆様ですが、自分が彼らの存在を知ったのは、確か2009年ごろだったかと思います。

当時、前年の末に初めて就職したブラック企業をもはや失踪同然に辞めてしまった自分は、いわゆるフリーターをしながら、夜な夜なインターネットに明け暮れ、少しでも興味のあることはWikipediaや2ちゃんねるの過去スレを漁って調べまくり(どちらも書き込んだことはほとんどなかったけど)、さらに当時はまだ「著作権?なにそれおいしい?」状態の無法地帯だったニコニコ動画に違法アップロードされたアニメや、『創世のアクエリオン』MADなどを鑑賞しまくっていたのでした。

そんな引きこもりでダメな日々を送っていたある日のこと、ひとりのニコニコ投稿者を見つけました(当時はまだ、ニコ生主という言葉はなかったかと思います)。投稿者はチャラそうな金髪の男。目の周りが黒い。いかにもなヴィジュアル系ボーカリストだ。

アニメ『ドラゴンボールGT』の主題歌、FIELD OF VIEW『DAN DAN 心魅かれてく』を普通のカラオケ屋さんで朗々と歌う動画を投稿していた彼こそが、その後に大ブレイクするゴールデンボンバーの鬼龍院翔さん、通称キリショーなのでした。

ゴールデンボンバーといえば、白塗りメイクでよくおケツを露出なさる樽美酒(ダルビッシュ)研二さんの印象が強いという方も多いと思いますが、自分はダルビッシュよりもキリショーの存在を先に知ったため、キリショーの印象が強いのです。

バンドにしてもアイドルグループにしても基本的に「推しメン」がいない自分ですが、あえて金爆の推しメンを挙げるとしたら、キリショーですね。

自分と同世代のキリショーたちが演じる様々なアーティストのパロディーに、瞬く間に心を掴まれました。メンバーの方々は自分と同世代なので、楽曲のみならずPVなどの元ネタもほとんどわかってしまいました。著作権が限りなく黒に近いグレーだった時期のニコニコ動画から火が点いたのも自然のことでしょう。

中でも、タイトルからしてまあ……なんというかそのアレな……『TSUNAMIのジョニー』。特別ファンではなくともタイトルですぐおわかりいただけると思うのですが、あの超ベテランアーティスト様のパロディーです。最初のシャウトから見事なコピーっぷり。行ったことはありませんが茅ヶ崎の風景が見えてくるようですし、後ろで奥様が鍵盤を弾いていそうです。……ん?奥様?

こちらも特別ファンではなくとも、少なくとも自分と同世代以上の方々ならタイトルですぐわかるでしょう‥‥あの超大物ユニットのパロディー『Ultra PHANTOM』も秀逸で、長髪サングラスのギタリストが無表情で物凄く速いソロを弾いていそうな気がしますし、最後に「Hi!」と叫びたくなる感じです。


「ああこの人たちは、おかしい人たちなのだな」と思いました。

どうおかしいか、というと、「ウケ狙いでやっていますよ」感がほとんどなく、さも自分たちが作ったかのように堂々と振る舞っているからです。「モノマネだから本家より下手でも許してちょ」という逃げを感じないのです。お笑いバンドは数多く存在しますが、やってはいけないことをここまで堂々とやってのけてしまう人たちは珍しい……気がしたのでした。

もちろん、完全にパロディーではない楽曲もたくさんあります。完全にパロディーではない楽曲のひとつが、ご存知の方がかなり多いであろうヒットソング『女々しくて』です。



この曲、曲調そのものも、ダンスパフォーマンスも、全くもって、ヴィジュアル系の匂いがしません。そして、狙っているのかいないのかわかりませんが、どことなく戦隊ものの主題歌っぽい感じがしませんか?まあ実際に、この数年後に別の楽曲で戦隊ものの主題歌を手掛けるわけですが。テレビ番組で流れているのをなんとなくずっと聴いているうちに、勝手に覚えてしまうキャッチーさがあるのですね。

さて、そして時は過ぎ、『魔法少女まどか☆マギカ』の第3話がネットで騒がれていた頃にはもう自分は引きこもりオタの世界からは離れ、おめでたく社員登用され、夏の野外ライブフェスなどにも行けるようになりました。

「イナズマロックフェス」という、T.M.Revolutionの西川貴教さん主催のイベントで彼らのパフォーマンスを観ました(余談ですが、「T.M.Revolution」というのはチーム名であって西川さんの芸名ではないので「T.M.Revolutionの西川さん」という表記は誤りではありません。ちなみに「ZARD」も元々はバンド名だったはずなので、「ZARDの坂井泉水さん」という表記が正しいはずです。覚えていて役に立つかどうかは謎な情報ですが……)。

ギター……あ、違った。エアギターの喜矢武豊さんは、T.M.Revolutionのプロデューサーである浅倉大介さんのコスプレで登場しました。そういえば、『女々しくて』の間奏って浅倉大介プロデュースっぽいような。あれ?わからなくなった。

後のシングル『Dance My Generation』は浅倉さんプロデュースでしたね。演奏しないからこそ、むしろバックミュージシャンが豪華だという現象。これからも、絶対に演奏しないでほしいですね。

#エッセイ #ゴールデンボンバー



サウナはたのしい。