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安土中学2年生の質問に勝手に答えました(2018年度版)。

2011年から毎年、母校である安土中学校に”人生伝承塾”の講師として地元の食材を使った調理実習に行っている。

テーマは”地産地消”。
安土はまだまだ畑もたくさんあるので直売所にもたくさん野菜が並ぶ。
そして同じく安土にあるショップマドレは米粉を自分たちで製粉している。もちろんお米は滋賀の農家さんが無農薬で育てたもの。
さらに、安土には養鶏場もあるし、はちみつ屋さんもある。
少し範囲を広げると、お隣の東近江市は「菜の花プロジェクト」発祥の地。
NPO愛のまちエコ倶楽部さんが圧搾絞り菜種油「菜ばかり」を地元の農家さんたちと協力して作っているので、油まで地産地消が実現できる。本当にありがたい。

なので、メニューは毎年変らず

・季節野菜の米粉グラタン
・米粉のパンケーキ(手作りのバター!)

の2つ。

グラタンはもちろんホワイトソースから作る。
もともとは豆乳で作るレシピなのだけれど、給食の牛乳(これも地元企業)が余るので牛乳でホワイトソースを作る。

でも、チーズは登場しないし、肉類は一切登場しない。
それはまぁ私自身が元ヴィーガンであり、ショップマドレのモットー「食べて地球にやさしくなる」を考えるとやっぱりどうしてもベジタリアンがギリギリラインになってしまうからである。
(ここ1、2年は外食で肉を食べるのが普通になったけど、いまだに料理しないし(たまに鹿肉が手に入ったら使うこともあるけど)、できないし(料理にはまったのがヴィーガンになってからだから)、肉を食べるということの意味はやっぱりたまにちゃんと思い出したいな、と思う。)

でも、バター作りは入れている。地産地消の枠組みからはどうしても外れてしまうのだけど、買うのが当たり前のものが実は自分で作れるということを体感してもらいたいというのもあるけれど、何よりもバター作りは楽しいからである。


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3年前にリニューアルしたレシピ。
マドレの初期2010年に作った地産地消マップとともに。


そんな人生伝承塾、だいたい毎年12月くらいなので2018年度の授業が終わって3ヶ月が経とうとしているのだが、ようやく先生から届いた生徒たちからの感想をしっかり読んでいる。

そしたらその中にいくつか質問があることに気づいた。

もう大分経ってしまったけど、自分勝手なペースで申し訳なくもあるけど、ここで答えてみる。自分の記録のためにも。

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1.グラタンの野菜は何でもあいますか?米粉の代わりは何でしたらいいですか?

>グラタンの野菜、割と何でも合うと思うけれど、食べたい季節はなんとなく秋冬なので、その頃に出回る野菜が合うように個人的には思います。
野菜を一種類だけに絞るのもおもしろいです。かぼちゃだけ、とか、じゃがいもだけ、とか玉ねぎだけとか。
白菜でグラタンは作ったことはないけれど、よく豆乳クリーム煮を作るので多分いけるだろうなぁ、という感じです。でもその場合はローリエはなんとなく入れず、ちょっと酒粕とブラックペッパーと檸檬の皮を入れたりするかな。食感にアクセントも欲しくなるのでいつも作り置きしている酒粕粉チーズを上にかけると思います(なかったらパン粉とかかな?)。

米粉の代わりは、小麦粉でいけると思います。作ったことはないけれど。というか、本来はむしろ小麦粉で作るのが一般的です。
でも、地元産の小麦粉は手に入れるのが難しいように思います。


2.なぜ米粉で商品をつくろうと思ったのですか?他にも米粉を使う料理はありますか?

>たまたま実家の会社である(株)東洋商会が米粉の製粉機を開発したからです。2006年頃?大学時代から家に米粉があるのが普通で、気がついたら家に小麦粉も片栗粉も存在しなくなっていました。まだ米粉が一般化する前に米粉の製粉機を開発したものの、結構たくさん大手の製粉メーカーに叩かれたりして、うちの製粉機ではおいしいものが作れないとか勝手に言われてしまったのがだいたい2008年〜2009年頃(私はオーストラリアWWOOF旅中)。だから、おいしいものがちゃんと作れることをわかってもらえるアンテナショップを作ろう、となり2010年に「自家製分米粉スイーツ専門店」ショップマドレが誕生し、お店が生まれたら趣味レベルを超えて、より本格的に米粉の可能性を研究しレシピが生まれてくる。どこまで米粉でいけるか、を探求していく結果、それが商品になる、という感じです。

米粉を使う料理はたくさんあります。
小麦粉でつくるおやつはほぼ全部米粉でも作れます。
麻婆豆腐とか、酢豚とか、チリソースとか、あんかけなどとろみをつけるときに、片栗粉の代わりに米粉を使ったり、唐揚げ・竜田揚げ・天ぷら・フリッター・フライなど衣としても使えます。
あとはお好み焼きとかチヂミとかいわゆる粉もの系。

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毎年なんだかんだで楽しいんだよな。
みんないい子。


3.おいしいものをつくるうえで気を付けていることはありますか?

>とにかく素材選びです。当たり前だけど、美味しいものを作る一番の近道は、美味しいものを使うことです。野菜たちも、旬の時が一番気持ち良く生えていると思っているので、やっぱり旬の野菜が美味しい。野菜は農家さんたちから買ったり、直売所で買うのがおすすめです。
あとは塩と調味料系と油。塩はちゃんと自然塩をつかう。醤油や酢などは昔ながらの方法でまじりっけないやり方で作られたものがやっぱり結局美味しいのです。それは正しさとかそんなことじゃなくて、美味しいのだから、仕方がない。個人的には富士酢が好きすぎて、もう富士酢なしには私の料理成り立たんくらいに好き。オリーブオイルも美味しいものは本当に美味しくて、ドレッシングなんて作らずにオリーブオイルと塩だけかけたら美味しいサラダが作れる。
ヴィーガン料理に関して言うと、スパイス系をどうきかせるか。
あとは、おいしいものを食べまくることかな。これに尽きる。


4.どうやったら料理が上手になりますか?

>難しい質問だな、となりました。料理上手って何なんだろう、と自分の中に新しい疑問が生まれるからです。
”おいしいものを作る=料理上手”という線で答えると、美味しいものを食べまくることです。というか、自分の中での”おいしい”を見つけることです。私はヴィーガンの世界に入って、そしてオーストラリアで日本では出会ったことのないたくさんの食べ物に出会って、”おいしい”をたくさん見つけました。これまでの人生で食べてたくさんの”おいしい”の記憶が私の料理のレシピの元になっています。
”技術=料理上手”の線で行くと、調理師学校に通うと確実に料理上手になると思うし、そこまでは・・・という場合はとにかく作りまくると、なんとかできるようになります。
私は完全に独学なので、きっとプロの人がみたら間違いだらけなんだろうな、と思っているし、実際に包丁の持ち方はしばらく間違ったやり方で使っていて、驚かれました。正しい持ち方を教えてもらってからかなり野菜切るのが楽になりました。そんなものです。
大学時代にヴィーガンカフェでバイトしていた時も、どうしてもキャベツの千切りが美味しそうにできなくて、お母さん(実の母ではなくて、カフェのオーナー)にいつも注意されていて、「野菜の喜ぶ切り方をしなさい」と言われたものの、それが全然わからなくて悩んでいました。でも、もう一つのバイト先の中華料理のシェフにその話をすると、「キャベツの繊維に直角に切ったらいい」と言われて、実際にそれを試したら断然うまく切れるようになって、お母さんにも褒められました。そんなものです。


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5.米粉と小麦粉は料理するとどんなところがちがいますか?

>料理という定義が難しいけれど、米粉はグルテンが入っていないので餃子の皮とかは作るのが非常に難しいです。
ホワイトソースでいうと、米粉の方がちょっと軽めの仕上がりになる気はします。
パンやパスタは米粉だけだとまぁまぁ難しいし、というか個人的にはやっぱりパンもパスタも粉の味を楽しむものでもあると思っているのでそれ基準で考えるといいのかもしれません。
スコーンなんかは、やっぱり美味しい小麦粉の味を楽しむのがいい。米粉でも作れるけれど。
でも、天ぷらは米粉はどれだけまぜでもだれがやってもサクッと揚がるのでおすすめです。しかも、時間が経ってからもベチョっとなりにくい。



6.なぜ料理関係の仕事に就こうと思われたのですか?

>たまたまです。気がついたらこうなっていた、という感じです。
でも、大学2年の時に1ヶ月間アメリカに留学した時に訪れたアーミッシュ村で食べたチキンとグレイビーソースとライ麦パンがあまりにも美味しくて、アーミッシュ村からの帰りの車の中で、いかに料理が美味しかったかを他の留学メンバーとしていたら、当時就活中だった一人が「将来食関係の仕事に就いたらいいと思う」とは言われていました。
そして大学卒業後のオーストラリア旅の初期・シドニー時代にヴィーガンケーキを焼きまくって人に配りまくっていたら、これがなかなか好評で「近くのカフェに委託で置いてもらったら?」とか「マーケットに出てみたら?」と言われて、マーケットに出店応募をしていました(結局出店はできなかったけど)。
シドニーでの都会生活の後1年間は、自給自足的な暮らしをしている家やコミュニティをWWOOFで巡って、その中の一つが、鶏200羽・牛6頭飼って自分のところでチーズ作ったりパスタ作ったりマヨネーズ作ったりしつつ、パンやジャムやグラノーラやおやつや瓶詰の保存食系など(そしてむっちゃ素敵な手作りのアンティーク調の家具)をマーケットで販売していて、”自給自足ベース+マーケットで収入”が自分の中でひとつのモデルになったのは確かです。
そしたら旅の終盤頃、たまたま、家の会社がアンテナショップを立ち上げるから帰ってきて手伝ってくれないかという話になり、帰って手伝うことになり、ショップマドレを立ち上げた、という流れです。
(ちなみに、小学校の頃は絵を描くのが好きだったから”画家”になりたくて、中学時代はうぐいす嬢か国語の教科書とかで朗読する人かバスガイドかアナウンサーになりたくて(画家の夢を失ってコロコロ変わった時期)、高校時代はあまり記憶がないけど英語が好きで海外で生活したかったのもあり(洋楽しか聞かなくなった頃)国際結婚が夢で、大学時代は自給自足に憧れるようになってヒッピーになりたかった。就活はホテル系ばっかり。どこにも料理の仕事は登場しないのだ。)

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シドニー時代に焼いたケーキ。
2〜3日に一回くらい焼いていた気がする。
ホームステイ時代はボウルがなくて、
かっこいいでっかい大理石みたいな柄の大皿をボウル代わりに使っていた。
いつも全粒粉(Wholemeal flour)だった。


7.野菜のおいしさの見分け方を教えてください。

>もし、目の前にいくつかのブロッコリーが並んでいたとしたら、私はどれが美味しいのか見分けができません。いつも、農家さんから直接買っているからです。ごめんなさい、見分け方は分かりません。
解答にはならないけれど、そんなわけでお気に入りの農家さんを見つけるのが一番簡単です。
あとは、さっきも書いたけど、とにかく旬のものが体にもいいし、やっぱり美味しいです。そして当たり前だけど、海外産のものは採れてから日本に届くまで結構な日数がかかるのでそれだけでも鮮度はガタ落ちです。これはもう物理的に仕方がない。
例外を除いて、採れたての野菜はやっぱりおいしいものが多い。これも、仕方がない事実です。
自分で育てるのが一番鮮度抜群なものが食べられるけど、野菜を育てるのは結構難しいです。私はむっちゃ苦手です。向いていないし、野菜の気持ちに寄り添えない。でも、やってみたらハマる人もいると思うので、鮮度抜群のおいしい野菜を目標に挑戦してみるのもおもしろいかもしれません。
全然、解答になっていないですね。

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これは2017年のお節の時に集めた野菜たち。
みんな周りの農家さんたちからの野菜。
小林ファームさん(近江八幡)、野菜と旅するさん(東近江・愛東)、
村上農園さん(東近江・愛東)、百菜劇場さん(近江八幡)、
ゆたかマン(東近江・愛東)、のびぃ(近江八幡)、
猫のひたい塩谷さん(近江八幡)、他。
みんな、できるだけ農薬や化学肥料に頼らず、
土に優しいやり方で野菜を育てている人たち。
(おいしいよ。)


8.どうして地元の野菜にこだわって料理を作っているのですか?

>おいしいものを食べたいから。私は選ぶのが苦手なので、せっかくおいしい野菜を育てる農家さんが周りにいっぱいいてるのに、わざわざスーパーで美味しくない可能性の高い(鮮度の低い)野菜に賭けをしたくないし、選ぶことに労力をかけたくない、というのもあります。
それに、せっかくお金を使うんだったら、知っている人のところにお金を落としたい。誰が作ったのかわからないものにお金を払うよりも、どんな人がどんな気持ちでどんな場所でつくったのかがわかるものにお金を払いたい。自分自身もそうやって近くの人たちからお金をもらって自分が作ったものを買ってもらって生きているから。

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私が通っていた時はテニスコートだったところに、今は茶室がある。
ちゃんとにじり口から入る本格派。


これで質問は全部。
美味しいものはすぐそばにたくさんあるはず。
”美味しい”は人それぞれだけど、それぞれの”美味しい”が見つかったら、気がついたら料理が好きになっていると思う。
好きこそものの上手なれ。
好きになったらきっとおいしいものが作れるようになるはず。


<おまけ>

オーストラリア旅時代に何度も見た「ファイトクラブ」は、ちょうど私が中学2年の頃に公開されたのだと知る。なので今回はファイトクラブといえば!のこの曲。The PixiesのWhere is my mind?
いくつになっても、この曲を聴くとなんだか胸がえぐられるような、なんとも言えない気持ちになり続けるのかな。でも好き。
The Pixiesはなぜか年に1度自分の中で必ずブームが来る。


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