自分の身体はわからない

猫派は困っていた。

(う〜ん、時々右膝が痛くなるなあ)

動けなくなる痛みじゃないんだけど、
普段の使い方が悪くて こうなっている気がする。

放っておくと、10年後とか おおごとになってそうだな。

一応90歳まで人形劇やりたいと思っているからさ
これは1回ちゃんとみていただこう。


人形と一緒に、猫派は深夜バスに乗りこんだ。

目指すは三重県多度駅にある えにし治療院(構造動作トレーニングの先生の施術が受けられる場所)


(しくじった…朝食難民になってしまう)

多度駅前にコンビニはなかった。
駅から徒歩6分のところにファミマか。
治療院と逆方向だな。う〜む。

(朝ご飯はあきらめよう)

治療院に向かって歩きだすと、お米屋さんが開いていた。

(菓子パンとかおいてないかな)

お店に入ると、やさしそうなおばあちゃんが出てきた。

「朝ご飯探しとる?」

「ハイ」

私はアイスモナカをゲットした。


「ここで食べてきなさい」

お店の中のテーブルとイスがイートインコーナーになった。


おばあちゃんは、えにし治療院の場所を教えてくださった。

「どこから来たの?」

私は、東京教室でお世話になっているので、今日来院したことを話した。

「それで、あちこち出張なさってる?中村さんは」

「はい。先生です、先生」

アイスモナカをモグモグしながら、たっぷり先生の事を褒めておいた。

これで来週は、噂に尾ひれがついて
越境して患者がおしよせる もの凄い治療院という
話になっているに違いない。

「あら、中村さん通ったよ」

先生がお店の前を通って行った。

(散歩でもしてらっしゃるのかな)

後でお聞きしたら、治療院に向かっているかに見えた私がいきなり姿を消したので、探してくださっていたそうなんだけど

私は御礼を言ってお店を出た。


問診を受けて、パーソナルの施術が始まった。

びっくりしちゃったよ。

私、身体の右半分しか使っていなかった。

ありえないだろって思われるだろうけど
左半分、全然使ってなかった。

先生に指摘されて、改めて観察すると
ものすごく歪(いびつ)な身体だった。

自分では左右均等に使っていたつもりだったのに。

左右の腕の長さも激しく違っていた。


逆に感動を覚えたね。

へえ〜、人の身体って ここまで偏れるんだ〜。

感動している場合じゃないけど。


足元から骨格ポジションに沿った運動方向を教えていただく。

「ここ」「この方向」

ことごとく はじめましての場所だった。

使ったことないです、この場所の筋肉。


でも 面食らいながら動かしていたら
足元とお腹がつながってきた。

脚がまっすぐになって、左右の脚がピッタリついた。

(つくんだ、私の脚)

いつも左右の膝の間が空いちゃって注意されるし
つけようとしてもつかないから
そういう骨格なんだと思ってた。


あと、子どもの頃から側弯症と言われていて

健康診断の紙に毎年「側弯症」と書かれてたら
自分の背骨や肩甲骨は曲がっているものなんだなって思うじゃないですか

その曲がりが消えちゃった。

(私の場合はさほど歪んでいなかったからだと思います。全ての方の側弯症が消えるわけではありません)


足元から順に上に上がってきて
首のところを働かせた瞬間

自分の中にぶれない軸ができた。


「この首凄いです!」

首に大騒ぎする私に、先生は おっしゃった。

「首だけじゃ こうならんよ」


そうだろうな。

足元からつながってきた2本のライン

このつながったラインがあるから、首で身体が
変わるんだ。


右膝痛の原因は

右半身しか使えないことによる右過重

内股のラインが使えず、常にガニ股のラインで
動いてきたことによる膝への過負荷

(ガニ股ラインに入りこむ要因は、足首をこねる癖があるから)

だった。


先生は、内股ラインの運動方向を丁寧に教えてくださった。


(ずっと、折れ曲がった筆で書を書こうとしていたんだ)

パーソナルを受講して、そう感じた。

ぐちゃぐちゃに折れ曲がった筆のような身体で、
まっすぐな線を引こうとしていた。

引けるわけがない。


でも、自分の身体がぐちゃぐちゃな筆になっているって、自分ではよくわからないんだよ。

歪んでいるんだろうな、癖の強い使い方しているんだろうなとは思っていたけど


(えーーーっ!? ここまで歪んでますか!?)

って感じだったもの。


しかも、施術終わったら、
即、身体は元の歪めた使い方に戻ろうとするし。

そっちじゃないっつーの。


長い戦いになりそうだな。

でも、この施術終わりたてほやほやの身体が
必要なんだ。

帰りの電車の座席で、先生に教えていただいた動作をしながら

はじめましてのラインを身体に覚えさせている。


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