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舞台「呪術廻戦」-京都姉妹校交流会・起首雷同-感想


待っていました続編舞台

 劇団四季、宝塚、国内ブロードウェイ作品、その他劇団作品に加えNYブロードウェイ。色んな舞台を見てきた中で、原作を原作通りにやるのも好きだが、少し演出や脚本に遊びを入れてそのカンパニーにしか作れないものを作ってくれるのが私は好きだ。
 前回の呪術廻戦に関しては想像以上にその遊び部分が多かったと思う。このnoteで詳細は割愛するが、原作のある舞台としては珍しい程に前回の作品にはオリジナル要素を盛り込まれていて、生粋の原作大好きなファン達から受け入れられない様子だった。2,5次元舞台というのはそういう意味では原作を忠実に再現した上で舞台ならではのオリジナル要素をどれだけ原作理解度を高めて差し込むかというのが大事なのだと理解した。
 ファンが求めるものを、ファンに提供する舞台。これを作り上げることの難しさ。この重圧は想像以上だろうなと思いつつ、前回のまとめリンクを貼ってから、今回の舞台の話に入る。

前回の舞台U-NEXT視聴感想

 前回記事を読むと、私自身結構楽しんで見ている。
 そして、舞台を(U-NEXTで)見終わり、まとめも終えた後、私は心の中で決心していた。もし次があったら絶対に観たい。心に誓ったその矢先に、唐突に舞台の告知が出たのであった。


漫画で読んだ京都姉妹校交流会

 漫画で読んだ時やたらと登場人物が一気に増えて、呪術師という職種に就く東京高の子供達が一気に学生らしく華やぐ回だという印象を受けた。学友を亡くしたての伏黒と野薔薇の前に魅力的で頼もしい先輩達真希、棘、パンダが現れる。そして、京都高の中の嫌われ者東堂と真希の双子の妹——麻依。交流会当日に顔が出そろう京都高の面々。京都高の生徒の方はどうやら呪術師界の忖度と派閥の中で青春を大人の事情により踏みにじられていた。呪術師の若い子達をそうやすやすと平凡にはさせない芥見先生のねじ曲がった魂胆が浮き出ているような扱いに私は震えながらも、ページをめくったものである(褒め言葉)。
 そんな姉妹校同士のぶつかり合いで、呪術師という特殊な職種にありながらも、年相応に悩み、心の底で思っているものや守っているものを戦うことを通して同世代同士でぶつけ合うことで、各々が新たな発見や考えを見つけていく。拳で語り合い、心がすっと軽くなるような青春回。青春回といいつつ、情を持たせてジェットコースターで真っ逆さまに落ちる数秒前のような部分でもある。

舞台で描かれるそれぞれの関係と若人たちの痛いほどの心の叫び

 呪術師として大事なこと。それは誰の為に、何のために自分は戦うのか。
その覚悟が弱い者は呪術師として立つ資格などない。交流会前までの呪術廻戦の話の中で、主人公虎杖自身がその答えを模索し、迷い、そして自分なりの答えを見つけて強くなる姿が描かれていた。
 次は虎杖の周りの生徒達にスポットが当てられたのが今回の交流会だったと思う。そして、今回舞台では東京・京都姉妹校の学生達がそれぞれ戦う目的・心の奥底に眠る自分自身の思いと向き合うことでもっともっと強くなろうと決意する。これは成長の為の物語。そして今作の舞台で観客達に向けられたのは叫ぶような“願い”や“思い”だった。

本当は姉が大好きな真依

 京都姉妹校の漫画を読んだ時、私は泣かなかった。そしてアニメを観た時も、しかり。だけど今回の舞台で長谷川愛さん演じる真依は強い女の背中の中に、本当は怖いものも、力を望まずに持ってしまった運命も、そして自分の元を去ってしまった真希もみんな大嫌いだという思いが痛いほどに伝わってきた。真依は別に姉の真希のことが嫌いなわけじゃない。自分と一緒にいてくれない、去ってしまった姉のことが嫌いなだけ。
 私は一人っ子で、もし妹がいたらこんな風に喧嘩したり、罵ったり、だけどやっぱり根底的には大事な、そして大好きな家族っていう暖かい存在なんだろうなという、まるで東堂が乗り移ったかのような幻想まで見てしまう程の迫真の演技だった。
 そして、行かないでと泣き続ける長谷川愛さんに背を向け、それでも強くあろうとする禪院真希を演じる高月彩良さん──。泣き崩れる妹へ残す「ごめんな」の一言。その覚悟した姿の美しさたるや……。真依の説得もむなしくなおも、真希に振り返ることなく前を向く揺るがぬ覚悟。これが真希の強さなんだと見せつけられた。
 真依の心の内を知り、さらに覚悟を決め、一層燃える真希の心が舞台の上に確かに在った。
 お二人の演技があまりにも素晴らしく、とても人には見せられない顔で一人大泣きした。前半で泣かないだろうと思ってハンカチを鞄の中にしまっていた私はマスクに助けられたのでした。まじで過去に戻って自分にハンカチと、なんなら鼻セレブを前半から握りしめておけって言いたい。

メカ丸とパンダの芽生えた友情

 メカ丸は日の光を浴びることができない。生まれてからずっと縛りがあり、外も自由に動けずに下半身まひの状態で苦しみ続けている。対してパンダは人ならざるものでありながら、自分の意志で自由に外を歩き回ることができる。この皮肉にも対比された二人が戦った末に見つけた答え。
 一人でずっと悩んでいても見えないものが人にはあって、それをパンダは人ならざる存在として寄り添う。メカ丸の「普通の体を手に入れて、外を歩きたい。そしていつか生身の自分として京都高のみんなと一緒にいられたら——」今作ではこの願いの根本的解決には至らなかったが、多分メカ丸がこんなことを漏らして素直になれたのはパンダが初めてだったんじゃないかと思った。同世代の子とぶつかりあうことの意味はしっかりあって、無意味な戦いじゃないっていうのが二人の会話が終わる瞬間すんと落ちてくる感覚がとても心地良い。それを漫画で表現する芥見先生も怖いけど(褒めてる)、舞台で演じた寺山武志さん(パンダ役)、塩田康平さん(メカ丸)の演技にも涙しました。あとアンサンブルさんなのかな、メカ丸の本来の姿の演出もとても良かったです。あれ一瞬しか出ないのにかなり凝ってるし緻密だった……!
 加えて、南誉士広さん演じる夜蛾正道が二人が戦っている後ろで子供時代のパンダと会話しているシーンは可愛すぎて涙流しながら笑ってしまいました。なんだあのクオリティ高いパンダぬいは‼‼物販には売ってなかったぞおかしい。かわいかった。
(あと全然関係ないんですけどパンフ見てたら塩田康平さんと誕生日同じでびっくりしました笑)

竹内夢さんと三輪霞

 竹内さん一時休演が報じられとても心配しておりました。私の行った回では復帰されていてほっと安心……!舞台って本当に実現していることが奇跡のようで、竹内さんももしかしたらご無理なさってるのかもしれないけどそれでもこうして舞台でお会いできるのはとても幸せなことだなと思います。

 イメージぴったりの五条悟に恋する可愛い女の子。難しい顔しても一秒後には五条悟やっぱ恰好ええとなる若干我々オタク達にも通じるような子でありながらビジュアル良しな三輪霞。三輪ちゃんはやっぱどこからどう見ても可愛いし愛らしいし、いい子で、竹内夢さん演じるそこにさらに髪の毛のふわっと揺れる毛先一つまでもが演出されていて感動した。勝手なイメージだが、ふわっと綺麗に舞台上演出で髪を揺らすのって簡単そうに見えてかなり大変なんじゃないかなって思ったり。でもそういう細かい一つ一つの演技・演出が、印象的なキャラクター作りになるし、2,5舞台であればなおさら理想が実現された姿を見せてもらえて、やっぱ三輪ちゃん実物見ると可愛いなってなった。やっぱ可愛いよリアル三輪ちゃん……本当は存在しないのにちゃんと漫画から出てきてくれたよ。

虎杖悠仁役の佐藤流司さんは今作も安定オブ安定

 前回の舞台ではなんだこれミュージカル、いや、ライブ? 歌うますぎてこれがライブだと言われても違和感ないし歌声耳に残る……と思ってたけど今回も安定の歌うますぎ問題。私未だに前回の舞台の歌、歌えます。それくらい耳に残るお声……。安定の安心の歌声今回もお願いします!!と思って臨みましたがやっぱり上手い。佐藤さんはまじで外さないなって思う。
 さて今作は冒頭からかなり観客達に笑いの嵐を盛り込んで下さいました佐藤さん。アドリブ入れれば黄色い声が舞台中から聞こえます。凄い人気です。愛されてる。愛されすぎている。

 東堂葵役の小柳心さんの演技は絶対見るべし

 東堂葵役の小柳心さん。これ役作りめちゃくちゃ頑張ったんだろうなというくらい漫画から飛び出してきたアグレッシブさ。そして体を張った演技。すごいんですよみんな会場中から笑いが漏れて——人を泣かせるのは簡単で笑わせる方がずっと難しいというけれど、小柳さんは本当に終始面白い。
 言葉の堂々さ、東堂はありもしない無き日の思い出を浮かべる。大体コンマ数秒の世界で。東堂だけがあたかもその遠い日の記憶が実際にあったかのように胸に抱きしめているのが本当に面白い。それをしらけることなく演じ切る小柳さん。この役者さん本当に凄いと思う。言葉の間合い、天井へ顔を向けて幻想を見るしぐさ。その一つ一つがどれも洗礼されていて無駄が無く、演技に嘘が無い、ホンモノがいた。こうして素晴らしい演技のお陰で、東堂の懐かしさ故の涙は観客達の笑いへ繋がり昇華された。
 そして高田ちゃん役小貫莉奈さん、登場からキレッキレのアイドルダンスキメてくれた上に東郷と並んだ時の身長の高さも、可愛らしさ、ツインテの似合い度ももう全てが高田ちゃんすぎた。
 身長どれくらいあるんだろうって思って調べてみたら170センチ……!いいぞ、いいぞ……。
 この舞台東堂と高田ちゃん観に行くだけでも行く価値があると思う。前回の舞台で納得できなかったファンの方にこれは見なきゃ損だぞって私は言いたくなってしまう……見てほしい。役者さん達本気だよ。本気で舞台仕上げてきてるよって。なんでチケットが余ってるんだよおかしいよ……。当日券も売ってるし今からでも行ってきてくれ……頼みます。

 舞台終わりでも高田ちゃん推しがぶれない小柳さん面白すぎる。



新キャスティングされた野薔薇ちゃん

 今回野薔薇ちゃんを演じた山口乃々華さん。どんな風に演じるのだろうと見ていて、前半の京都姉妹校では先輩リスペクトな力強い野薔薇ちゃんがそこにいて、安定の野薔薇ちゃんだわと思っていたところ、山口さんの真骨頂は後半だった。
 起首雷同。これは伏黒の過去と向き合う物語でもある。
 話の中で野薔薇ちゃんが芻霊呪法『共鳴り』を連発し最後『簪』で勝利する展開の中で、多分山口さんゾーン入っちゃってるんじゃないかなってくらい迫真の演技をされていた。セリフに思いがこもっていて、ここでもまたしても泣いてしまう私……。やっぱ好きだわ野薔薇ちゃん……。


冥冥が私のハートを打ち抜いた

冥冥、格好いい守銭奴女……私の推し……でてきました。
まあ見てくれこの美しい冥冥さん(立道梨緒奈さん)もう背中で語ってるんですよね……私がこの世で一番美しいって。冥冥さんの自信に満ち満ちた物言いとたっぷりと安定感のある頭の良さ。セリフの一言一言から読み取れました。そして、冥冥さん役さぞベテランの女優さんなのかなと思ってみたら若……若いよ立道さん……。そのご年齢で大人な女性の魅力たっぷり出せるの凄いと思います……好き。そしてどうしてこんな立ち居振る舞いや立ち方、座り方がお美しいのって思ったらダンサーもされている。ご自分の魅せ方を十二分に熟知されているんだなと思いました。好き。


感想が終わらない

 キャストさん全員のお名前あげてここが好き、あそこが好きって言いたいのにもう書ききれない。熊沢 学さんは今回代役として伏黒役をされていましたが力強い演技に声量、そして歌うま……呪術廻戦キャストあるあるの歌が上手すぎる。あと髪の毛のつんつんが地味にワックス少なめ(?)で好きでした。このくらいがちょうどいいなって思ってた。定本楓馬さん演じる狗巻棘先輩、個人的には棘先輩も大好きなんですけど、割と話の中では主要として語られるのが少ないのでもうちょっと活躍の場が今後増えるといいなって思いつつ、見逃さずにオペラグラスで追っていた。もっと棘先輩を下さい‼ 加茂憲紀役梅津瑞樹さんは血の繋がりに苦しみ、西宮桃役の久家 心さんは可愛く空を飛ぶ。空、飛んでたよ、舞台上で。しかも宙にぶら下がるんじゃなくて別演出されてたよ、すごい。声も可愛かった。壊相役の青柳塁斗さんは今作一、色気むんむんなダンスを披露されていらしたし、庵 歌姫(平湯樹里さん)は相変わらず五条悟に振り回され合コンセッティングに泣き、交流会挨拶で辱められ、楽巌寺嘉伸役陰山 泰さんは五条悟に言いたい放題されながらもイケオジギターを奏で、組屋鞣造役の北村 海さん、重面春太 役の益川和久は呪術廻戦には欠かせない帳を下して敵役を努められ……とにかく全員が一丸となって作られた素晴らしい舞台でした。今回の作品上で上げた箇所以外にも見どころ満載で、カンパニー箱ごと大好きだなって思います。続編を作って下さったことも、前回は見れなかった生の舞台を見れたことも、とても幸せです。
 今回、呪術廻戦を観たことが無い家族も連れて行ったのですが、その家族もとても喜んでおりました。特に野球メリハリのある遊びの部分がイイと言っていたのでここに記します。内容わからずとも楽しんでいてくれたようなので私もとても嬉しかった。初見にもわかりやすく冒頭部分で虎杖役の佐藤流司さんが第一話目からのあらすじを語って下さったのもとてもありがたかったです。やっぱり旬のジャンルといえど初見の観劇者にも配慮して下さるのはとても嬉しいです。……ということで急遽当日券追加したおかげで私も人生初のボックス席に座ることができました。ボックス席って舞台の裏側もちらっと見えたりしてかなりマニアックな席なんですね!!!!いい経験した。

最後に

 五条悟の術式順転・蒼、術式反転・赫、虚式茈。これ見れるなんて誰が想像した……。
 しかも三浦涼介さん、客席降りした……悟、降りてったよ……。
 ちょっと五条悟の女達、息できないよ……舞台行きましょう……。

 今回多々あるアクションで、斜めになっているセットを上り下りする演技が多かったと思います。キャストの皆さまお足元お気をつけて頂きどうかお怪我だけは注意して最後の千秋楽まで完遂できますようにと願っております……!
 ということで最後の方駆け足になってしまったのですが、2023年最後の観劇とても幸せでした。
 素敵な舞台を本当にありがとうございました。

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