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演劇調異譚「xxxHOLiC」の舞台感想

一年前、私の大切な家族がある日突然、半身不随になった。

家族は私にとって大事な存在で、時に理解者であり時に喧嘩相手でであった。
私達二人の共通の趣味は漫画、アニメ、ドラマ、映画、宝塚、観劇に海外旅行などなどたくさんあったが、中でも私が物心つく前から英才教育のごとく教え込まれていたのがCLAMP作品だ。
CLAMP先生の世界観が私の道徳であり、教訓であり、時に美意識の基準となっていたと思う。
そんなCLAMP作品の中でももっとも私達が好きだった作品がxxxHOLiCだった。
※以下、レイアースコメンタリーに投稿した際のツイート。

家族が半身不随になってから、毎日が忙しく、仕事と家族のリハビリや通院、日常家事すべてがのしかかってきた。そしてまるで戦場のような日々が過ぎていく。

そんな生活に最近少しずつ変化が訪れた。相変わらず半身不随の家族だが、体調は徐々に良くなり、少し生活に余裕がでてきたのだ。ふと、少しずつ自由になる時間の合間に、そういえばxxxHOLiCの舞台、観に行けなかったななどと思いながらネットサーチを始めた。
そして見つけてしまったのだ。舞台のBlu-rayを。

前述した通り、私は演劇を見るのが好きだ。宝塚や劇団四季や、時には飛行機に乗ってNYのブロードウェイまで行って舞台を見に行くこともある程に。
そして宝塚を例外として、ほとんどの舞台はBlu-rayの発売をしない。
舞台は生ものであり、映像に残さないことが暗黙のルールだと思っていた。
だから推しを見るのもその一瞬、次の年には引退し、もうそのお芝居は記憶の中でしか見ることができないなんてざらだったりする。悲しき儚き舞台の性だ。

しかし、私はそれを見つけてしまった。
一瞬目を疑った。しかし、これもまた現実であり、必然だったのだと思う。


前作のBlu-ray視聴

自宅に届いたBlu-rayの封をすぐさま開け、Blu-rayレコーダーに差し込む。
そして私と家族はその美しい世界に夢中になった。

漫画から飛び出てきたような、なんてそんなセリフしか出てこない自分が悔しい。だけどその通りだった。

美しく妖艶な侑子さん。着物の細部までもが凝っていて、そして煙管を持つ指先までもが涼しげで、凛としていた。
四月一日のはつらつとした動きに思わず笑い、そうだったこういう子だったと懐かしく思いながら、なんでリアルに生きてるんだろうと脳がバグを起こした。私の目の前に今、侑子さんが、四月一日が生きている。マルモロがその小さい手足で飛び跳ねている。百目鬼が四月一日に弁当の注文をつけている。その横で仲良いねとひまわりちゃんが笑う。
座敷童は照れながら、その細身の背中を見せつつ四月一日に背を向けて逃げていく。雨童子はフリルたっぷりのワンピースに、これまたフリルたっぷりのゴシック傘をくるくると回し毒を吐く。女郎蜘蛛は瞳をゴクリと食らった。
これが、現実……本当に?
思わず目を疑った。二度目のBlu-rayもやはり現実で、これを生の舞台で見れたらどれだけ凄いだろうか。その舞台の空気を私も感じたいと思った。

Twitterで感想を叫んでいると、ふとフォロワー様が教えてくれた。
「xxxHOLiC、続編の舞台もうすぐ始まるらしいですよ」
──え? 続編? え!? もしかしてこれは、観にいけちゃう……?
調べてみると確かに舞台初日があと数日と迫っていた。
──って、流石にこの時期じゃチケット取れないよな。
もうコロナ禍で三年もの間生の舞台を見れていなかった私。
家族も回復してきたとは言え、舞台に耐えられるだけの体力があるのかもわからないし、一応Blu-rayも販売されるみたいだし、今回はやっぱり見送ろうか。そんなことを考えていた矢先だった。
数年前にブロードウェイで観たウィキッドの音楽が流れてきた。
ウィキッドはオズの魔法使いのお話で、主人公が自分の手で未来を切り開いていく非常にアグレッシブな作品だ。
まだ、諦めるのは早いんじゃないの?
ふとそんなことを思い、チケット情報を調べる。久々すぎてチケットの取り方すらあやふやで、だけどとりあえず公式HPを見れば万事解決する。
一縷の望み、棚ぼたのような気持ちで見たチケット情報はなんと、まだ空きがあったのだった。

いざ観劇へ

天王洲アイル。昔、ここら辺に仕事先があり、よく通っていた場所だが降りたのはおそらく片手ほどしかない程度。銀河劇場まで車いすを引きながら二人歩いた。前日から楽しみで眠れなかった反動でしっかり昼寝もすませた家族と共にいざ、舞台へ。

事前に車いすが一人いることを伝えてはいたが、劇場に車いすで行くなど、初めてのこと。ドキドキハラハラしながら劇場に向かうと、スタッフの方々がスムーズに案内してくださった。
家族もすごく親切で優しいと感動していました。スタッフの方々ありがとうございました。
※車いす席は事前に電話が必要で、同行者もチケットが必要です。各公演でルール等違うと思いますので車いすの方、同行者の方は必ず公式HP確認を推奨します。

車いすごと座れる席とその隣に座り、ふといつかNYブロードウェイでシカゴを観た時のことを思い出した。日本でチケットを買わず、現地で購入して案内された席がちょうどこういう車いす席の付近だったこと。
その日はちょうど車いすの女性と同行者の男性のお二人がいて、隣に座る私達に微笑んでくれた。あの笑顔と今か今かと開演を待っている家族の笑顔が重なった。

今日この日は必然

貴方がここに来たのも必然。
その一言でぐっと観客を引き込む侑子さん(太田基裕さん)。
そしてオールキャストが舞台上に次々に現れていく演出。
生きている……。私の小さな頃から見てきたあの美しくも怪しい世界と登場人物達が目の前で動いている。泣かずにはいられない。

個人的には原作から百目鬼が大好きで、目の前で動いている百目鬼(松島勇之介さん)が現れると思わず目で追っていた……。だって推しが、推しが動いてるんだもの……。これが、2.5次元舞台なのか……もっと早く2.5ってやつを観に来るんだった。すぐさま自分の人生を後悔したのだった。

2.5次元舞台アニメを生で観たのは今回がおそらく生まれて初めてで、早いストーリー展開ながらもすごくわかりやすく舞台演出が脚本が組まれていることにとても驚き、感動した。
2.5次元の他の舞台を観に行ったことが無いので全くの初見感想になってしまうのだが、原作ファンとしてもとても話の流れがわかりやすく、シーンの切替は舞台の左右とスポットライトを使って表現されていたり、目からうろこの演出だった。ダークな展開の合間合間に座敷童子や雨童子、猫娘が面白おかしくアドリブを入れているのも一息のティータイムといった感じで丁度良い! 
これは原作を研究しつくした舞台だ……そう小さく心の中で叫んだ。

家族はとても涙もろい。私よりずっと。だから開演前に言った。
泣く時はこのタオルで、口元を抑えて思いっきり泣くんだよ。
隣を見る。めちゃくちゃ声抑えてガン泣きしていた。私もつられる。やめてくれ。涙で推しが見えないじゃないか。
そして思ったのだ。ああ、頑張ってきて良かったな。この舞台を私とそして何より家族と一緒に見れて、良かったなあ。

人生と共にずっとあり続けているCLAMP作品

昨晩の舞台を見終えて、今この記事を書いているのだがまだ舞台の感動が冷めやらない。冷めないうちにと思ったが、まだ夢の中のようで頭がぼうっとしている気がする。この感覚を忘れずにと思うのだが、不思議なもので、すべてを文字に起こすのにはまだもう少し時間がいるかもしれない。それくらい語りつくせない舞台だった。早くBlu-ray発売されないカナ。

昨日の今日で家族もますます元気になって、やる気に満ちている。
今日は夕飯の時に、なんだが足がムズムズすると言い出した。どうしたんだろう。そう思って二人で片足をもんだりしていると、なんと、少し動く。
今まで自由の利かなかった足が初めて自分の意志で動いた。

これはもう昨日の演劇でパワーもらっちゃったな!!
こんな風に、生きる力になっているCLAMP作品。これからも色んな形でお目にかかれたらファンとして幸せです。



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