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CDレビュー 見知らぬ君でも、死ねばおれは悲しい リンキン・パーク ワン・モア・ライト (約900字)

リンキン・パークは1996年に結成されたアメリカのバンドです。ウィキペディアによると21世紀で一番売れたバンドで、世界中に熱心なファンがいます。私も大好きなバンドで、スタジオアルバムを全部持っていて、よく聞いています。

ワン・モア・ライトは2017年に発表されたアルバムで、同じ年にボーカリストのチェスター・ベニトンが自殺しました。このアルバムはそれまでのリンキン・パークの作品とは異なっていて、ファンや評論家から強く批判されました。それがチェスターの自殺の原因の一つになったのかもしれない、と思っています。

リンキン・パークの音楽は暗く重たいものが多く、自分が抱えている痛みや苦しみを爆発させるようなチェスターの叫びが、大きな魅力になっています。でも、ワン・モア・ライトは優しく穏やかな曲が多くて、昔のような音を期待したファンの多くは、失望したのかもしれません。

私はこのアルバムは好きです。リンキン・パークがこれまでと違うことをやろうとしている意気込みが伝わってきて、心を揺さぶられました。何度も聞くと彼らの音楽の激情は決して消えたのではなく、個々の曲の底に流れているのが分かります。良心的なアーティストは売れた曲を拡大再生産することはしません。常に新しい境地を目指します。そのことは、リンキン・パークにも当てはまります。

このアルバムの中では、何と言ってもone more lightが名曲です。「夜空には多くの星があって、その中の一つの光が消えたしても、誰が気にするだろうか?いや、おれは気にかける」と言う部分が好きです。自殺しようとしている人に呼びかけている気もします。

多分、これはチェスターの心からの叫びです。この曲のPVがあるのですが、その中で彼はコンサートでもみくちゃにされながらも、ファンの一人一人と心を通わせようとしています。この姿勢は何度見ても胸が震えます。

生きることは辛いことや悲しいことが多く、人間は結局ひとりぼっちです。でも、チェスターのような人が生きていたと思うだけで、私は救われた気持ちになります。チェスターは死んでしまいましたが、本当の優しさはこの世から消えることはありません。多くの人の胸に光をともし続けます。






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