映画の話

「ロッキー5」と「ロッキー・ザ・ファイナル」

#映画

ぷらすです、こんばんは。

今回は、映画「ロッキー」の話です。

「ロッキー」は、世界中で大ヒットしたボクシング映画で、自堕落な生活を送っていた三流ボクサーのロッキー・バルボアが、エイドリアンにふさわしい男になるために一念発起し、「当て馬」として組まれた世界戦を戦うという物語です。

当時、役者としてはまったく無名のシルベスタ・スタローンが自ら脚本を書いてプロダクションに売り込み、脚本だけを買い取ると言ったプロダクションと交渉の末に自ら主演の座をもぎ取った本作が大ヒット、スタローン自身も大スターになった事実とも相まって、ロッキーとスタローンはアメリカンドリームの象徴的存在となり「ロッキー」は本作も含めて六本のシリーズが作られることになります。

二作目では、一作目で惜しくも敗れたチャンプ、アポロとの再戦で勝利して世界チャンプになり、三作目では最強の挑戦者と戦い一度は負けたもののリターンマッチで見事に勝利し、四作目ではソビエト連邦最強の男ドラゴと死闘を繰り広げ勝利しました。

もちろん、ただ強敵と戦うだけではなく、その間にも奥さんになったエイドリアンが倒れたり、トレーナーのミッキーが亡くなったり、世界戦のあと親友になったアポロがドラゴとの対戦で亡くなったり、家族や近しい人々と諍いが起きたり、その度に心が折れそうになったロッキーは、周りの人たちの叱咤激励に奮い立ち、再びリングに向かうのです。

つまり映画「ロッキー」シリーズはロッキー・バルボアの人生そのものを描いてきた、大河ドラマと言えるシリーズなんですね。

そんな長期にわたるシリーズだけに「ロッキー」は、観客の世代によって熱量や評価に差があるように思います。

というのも、スタローンはロッキーのヒットで人気を得たあと、並行して「ランボー」というベトナム帰りの男のシリーズをスタートし、さらに多数のアクション映画に主演、出演しているので、僕よりも若い世代の人たちにとって、スタローンは「筋肉バカ映画の人」的なイメージが付いてしまっていて、遡って「ロッキー」や「ランボー」といった作品にも、そのイメージが定着してしまっているんじゃないかなと思うんです。

まぁ、それ自体は当たらずとも遠からずではあるんですが、ただ、ロッキーを始めとしたスタローンの映画を観ている人が言うならともかく、観ていない人が上記のようなイメージだけで、彼の作品を半笑いで語るのは、「ロッキー」直撃世代の僕としては業腹ではありますが。

閑話休題。

で、1986年に公開された「ロッキー4」から四年後にシリーズ完結編として公開されたのが「ロッキー5」です。

一作目の監督を務めたジョン・G・アヴィルドセンが再びメガホンを取り、「最後のロッキー」して大々的に宣伝されたものの、評価は散々でした。

ロッキーはドラゴ戦のダメージでパンチドランカーになり引退、会計士の不正で破産。息子は反抗期になり、トレーナーとして育てた選手トミー・ガンには裏切られ、何もかも失ったロッキー。その後トミーはチャンプになるけれど、恩師ロッキーを裏切ったと評判は散々。逆ギレしたトミーはロッキーを罵倒し試合を要求、それを聞いた義兄ポーリーとトミーが激しい舌戦の末、トミーがポーリーを殴り飛ばし、怒ったロッキーはトミーとストーリーファイトでトミーに勝利。全てを失ったロッキーだが、誇りと家族の愛を取り戻すというストーリー。

いや、悪くはないんです。悪くないんですが…、全体的にスッキリしないというか、ロッキーファンにとって、この「ロッキー5」の

コレジャナイ感

が、ハンパないワケですよ。

ファンにしてみれば、熱い想いを寄せてきたロッキーの最後がこれだけ不遇っていうのは、いわば今までの自分自身が否定された感じになっちゃうというか。

で、この作品の失敗と前後するように、スタローン自身も低迷期に入ります。(これは、スタローンがどうこうというより、ハリウッド映画の流れ自体が変わってきたという事ですが)

そして時は流れて2006年、スタローン自らの監督脚本主演で撮られたのが、「ロッキー・ザ・ファイナル」です。

こちらでは、ロッキーはすでに引退し、地元でイタリア料理店を経営する地元の名士になり。息子は独立し、店は繁盛。

亡き妻エイドリアンとの思い出に浸りながら悠々自適な生活を送るロッキーですが、リングへの思いが断ち切れず、モヤモヤした気分で毎日を過ごしています。

そこで、再びライセンスを取り、地元の小さな試合で復帰を考えていた頃、テレビ番組で最強と言われる現チャンピオン、メイソン・ディクソンとロッキーのデーターを使ったバーチャル試合が話題に。

そこで、プロモーターが現チャンピオンの「当て馬」として、ロッキーにエキシビションマッチを打診。最初は渋るロッキーでしたが色々あって、再びリングに上がり……というストーリー。

ハッキリ言えば、映画の出来としては「ロッキー5」の方が上だし、ストーリーも「~ザ・ファイナル」の方はご都合主義すぎるというか、あまりにもロッキーが神聖化されてて、正直バランスが悪いです。

ただ、映画としては間違っていても、「ロッキー」としてはこれが正解なんです。

なぜなら、「ロッキー」はただのボクシング映画ではなく、「ロッキー」というジャンルの映画だから。

そこには、ロッキーがファンと積み重ねてきた30年という年月と、「ロッキーはこうあって欲しい」というファンの願いが乗っかているわけです。

つまり、「ロッキー」はある種の英雄譚でもあり、ヒーロー映画でもあるわけですね。

当初、「ロッキー」から三十年経って制作されたこの映画は、イベント的な、それこそボクシングで言えばエキシビション的作品と誰もが思ってましたが、蓋を開ければ大ヒットとなり、この作品をキッカケに、スタローン自身もその後「ランボー最後の聖戦」や「エクスペンタブルズ」など大ヒット映画を制作、主演と完全復活。その勢いは今尚続いています。

そういう意味で、ロッキーは映画の枠を超え、現実のシルベスタ・スタローンの人生とも非常に深くリンクしているという、なんとも不思議なキャラクターだなと思ったりするわけです。

ではでは。







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