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走れ! Purveyors Trip at Shima①

不朽の名作『走れメロス』が実は作者である太宰治の借金問題に取材しているという逸話はご存知でしょうか?

旅館の宿泊代が払えなくなった太宰は友人を人質に残し金策に出て行ったそうですが、それきり一向に帰って来ない……あぐねた友人が太宰を訪ねると、なんと井伏鱒二と呑気に将棋を指していたというから驚きです。

それをなじられた太宰の台詞が「待つ身が辛いかね。待たせる身が辛いかね」。

井伏に借金を頼みたくてもなかなか言い出せず、ついつい将棋の相手などしてしまっていたそうですから待たせる太宰としても針のむしろの気分だったかもしれませんが、その時のまんじりともしないような体験が『走れメロス』に繋がっているというお話しです。

なぜいきなりこんな話しをするのかって?
それはね、情趣ある温泉宿で、思わず文豪気分になってしまったからです。

改めまして、吾輩は…じゃなかった、私、スタッフのKCです。

先だってパーヴェイヤーズのスタッフで社員旅行に行ってまいりましたので、今回はその旅の報告をしたいと思います。

さて、僕たちが向かったのは群馬県内の四万(しま)エリア。

イベントでの移動や個々人での旅やキャンプはあってもスタッフ皆での旅行は初めてというのは少し意外ですが、たまたま四万ブルーと呼ばれる四万湖の景勝を知って「じゃあ、来週行っちゃう?」と決めてしまうあたりがやはりパーヴェイヤーズらしさかもしれません。

冒頭で『走れメロス』に触れましたが僕たちの旅路は至ってマイペース。待つことも待たせることもありません。

午前中で仕事に切りをつけて、荷物を積んで、カヌーも載せたらお昼くらいに出発です。

僕たちのホームタウン桐生から四万までは車でおよそ2時間足らず。新緑の木陰を縫う気持ちの良いドライブ路の果てに、第一の目的地 四万湖が見えてきました。

今回の旅の目当ては大きく2つ。
1つは歴史ある温泉宿でゆっくり骨休めすること、そしてもう1つはカヌー遊びをすること。

先ずは四万湖で翌日のカヌー遊びのリサーチをして、それからホテルにチェックイン。
いやはやこの積善館という宿が素晴らしくって…

元禄4年に建てられたという本館は現存する日本最古の木造湯宿建築で群馬県の重要文化財にも指定されているですって!
『千と千尋の神隠し』の舞台のモデルになったことでも有名だそうですよ。

この趣き深さ。ここでは誰もが文学的な情緒に…

何はともあれ小説家風の田中店長の写真をどうぞ。

上は和風、下は洋館。この和と洋の、モダンと伝統の混淆が溜まりません。極めつけはなんといつてもお風呂。

湯屋まで続く渡り廊下はまるで異界へのトンネル…

写真元:四万温泉協会

その先にあるのが昭和初期に設けられた洋風の湯殿になります。もともと日本では大風呂につかる習慣がなかったらしく、整然と並べられた小さな浴槽が洒落てますね。

この風趣をローマの公共浴場テルマエに例える人もいますし、アール・デコと見る人もいます。僕はウェス・アンダーソン監督の映画『グランド・ブダペスト・ホテル』の1シーンを思い出しました。

(オーナー小林は文豪というよりは維新志士?)
ちなみにここ、旅室ではありませんのでご安心を

志賀直哉は温泉宿に滞在し、小さな生き物たちの死から生命の儚さへの思惟を深め、その反省を『城の崎にて』にものしました。
僕も倣ってひとときの沈思黙考を…とはいきません。

KC! KC! ねぇ KC! 
そうです。今回のトリップには子供たちも同行、もう元気なこと元気なこと。
おや、仮面ライダーごっこですか? あら、こちらはウルトラマン!? えぇ、僕が怪獣ですか?

どんなに怪獣役が吹っ飛ばされようとも、ここにあるのは生の横溢ばかり。人生を儚んでいる暇はありません。

でもせっかくの楽しい旅行、当然元気な方が良いですよね!パーヴェイヤーズは子供たちが元気なお店です。

どうぞご家族連れでお越しください。
店舗3Fテラスで遊んでいただくこともできますよ!

さて、日も暮れてお腹も空きました。
かつて温泉宿に宿泊していた夏目漱石は大量の血を吐き、その療養中に口にするのは重湯に牛乳に…ってそろそろ文豪気分もしつこいかしらん?

何はともあれ僕らの食欲は全開、おいしい晩ご飯に舌鼓を打ったら、この日は散会。

めいめいの時間を過ごし明日に備えます。
僕は同室の田中店長と熱い裸の付き合いを…温泉で身体が火照るまで語ります。

部屋に戻った我々を待っていたのは不自然なほど、それこそ重なり合うくらい隣り合わせに敷かれた布団。

何ゆえ?
中居さん、そういう関係に見えました?

温泉宿を題材にした作品の代表といえばやはり川端康成の『伊豆の踊子』でしょうが、川端には『少年』という少年同士の淡い恋を扱った自伝的小説もございます。

そういった恋心を語るなら三島由紀夫の『仮面の告白』も忘れてはなりませんね。三島には『雛の宿』という作品があったかな…

誘われて入った寝室には裸の少女が臥していて…川端にも『眠れる美女』という裸の少女が眠るエロチックな物語がありますが、何より脳裡に浮かぶのは三島の『禁色』、

女性に裏切られ続けた小説家が同性愛者の美少年を使って…

まぁ、宿の夜もふけました。そろそろ電気を消しましょうか…❤️


翌日に続きます。

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