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太陽光パネルのリサイクル技術②

前回の記事では、太陽光パネルのリサイクル技術をガラスの剥離方法に着目し、化学的処理法、熱処理法、機械的剥離法として分類を紹介しました。
通常これらガラス剥離の前にはアルミ枠を分離する工程もあり、リサイクル装置メーカー各社が製品を開発しています。

今回はその中でも機械的剥離法として、実際に製品化されているリサイクル技術とアルミ枠分離技術を紹介していきます。

機械的剥離法

機械的剥離法は薬品や熱を使用する必要が無く、ガラスの剥離技術に多くの方式があるため、実際の太陽光パネルのリサイクル設備として最も普及が進んでいます。
装置構成やリサイクル後の材料の活用方法など、導入価格を含めて設備を導入する処理業者に選択肢が多いことも特徴といえます。

以下ではそれぞれの方式の概略を紹介していきます。
(技術名称に定義はなく、便宜的に紹介しています)

ローラー式剥離法

表面に特殊な形状の刃を持つ2本のローラーの間にパネルを通すことで、ガラスのみを剥離する方式です。
ローラーでガラスに圧し潰すことなくガラスを掻き取る(剥離)ことで、粒の大きいガラスが得られます。

国内トップシェアで既に10台以上(*)が設置されており、剥離後のガラスがエコマーク商品として扱えるなどの特徴があります。

(*2022年12月時点、PVリサイクル.com調べ)

ローラー式破砕法(圧砕法)

表面に凹凸形状を持つ円筒(ロール)2本を対にし、太陽光パネルがロールの間を通過することで、パネル表面のガラスを破砕します。
破砕されたガラスは必要に応じ、ふるい機や風力選別機により混入したセルやバックシートの破片等を選別されます。

ハンマー式破砕法

ガラスとセルを貼り合わせているEVA樹脂を剥離しやすくするため、太陽光パネルを加熱しながらガラス分離機に送られ、ガラス分離機内のハンマーでガラス部分が破砕されます。
ガラスはカレット状で回収され、発泡ガラスの原料としても用いられる様です。

ホットナイフ分離法

加熱したナイフでEVA樹脂層を溶融しながらセル・バックシートをカバーガラス表面から剥離します。
ガラスを破壊することなく分離することができ、高い純度でガラスを回収することができます。

本装置は国内だけでなく、最近は海外(フランス)へも輸出されています。

ブラスト法

粒状の投射材料(ブラスト材)をガラス表面に吹き付けて、ガラスを剥離する方法です。
剥離したガラスとブラスト材は分離選別されとともに、ブラスト材は装置内を循環し再び投射材料として利用されます。

両面受光型や住宅向けの矩形以外の太陽光パネル、ガラスが破損した太陽光パネルなどに対応できるとあります。

アルミ枠分離装置

太陽光パネルのリサイクルでは、ガラスとセル・バックシートの分離技術に着目されてきました。
一方で実際の処理おいては、ガラス剥離の前工程としてのアルミ枠や電極の除去が処理能力(生産性)に影響します。

国内外で多くのメーカーがアルミ枠分離装置を商品化しており、太陽光パネルのリサイクル装置の導入を検討する際には、重要なポイントになります。


まとめ

太陽光パネルのリサイクルでは、既に多くのリサイクル技術開発が進められており、多くのメーカーが実際のリサイクル装置として製品化が進んでいます。
各社のリサイクル装置・システムには特徴や強みがある一方で、リサイクル装置を導入する企業のビジネスモデルとの相性も、検討にさしては考慮する必要があります。

今後は装置の導入価格だけでなく、リサイクル率や消費電力、資源循環ビジネスとしてのスキームなど、新たな判断基準がリサイクルメーカーおよび処理業者に求められることになると考えられます。


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参考資料