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右脳の冒険

自分にとって、心地良い感覚を優先する。
そんな単純なことが、人間はなかなかできない生き物だ。

心のままに生きようとすると、即座に左脳が騒ぎ出す。

そんなことしたら、○○はどうなるのか。
自分勝手なことをして、周りに迷惑をかけるのではないか。
その時はいいけれど、もし○○になったら、どう責任をとるのか。

未知への恐怖。
「自分勝手」は他人に迷惑をかける、という思い込み。
自分が幸せになることへの、謎の罪悪感。

伸びやかに羽を伸ばして飛びたとうとする右脳に、左脳が縄をくくりつけて、引っ張り戻そうとする。

現状維持が無難だよ。
冒険なんてリスクだらけだよ。
所詮、自分が傷ついて、他人を傷つけて終わるのが関の山さ。

右脳は、自分の足に絡み付いた縄をじっと見つめながら、こうつぶやく。

それでも、私は、行きたいんだよ。
だからもう、離して。

左脳はますます縄をきつく絡ませ、こう囁く。

やめときなよ。
絶対、後悔するよ。
きみには、そんな能力も、甲斐性もないんだから。

右脳はちょっと空を見上げて、大きく息を吸い込んだ。
手に握られたハサミの刃を、縄にあてる。

じょき、じょき、ちょきん。

何度目かで、縄がはらりと落ち、身体がふわっと軽く舞い上がる。
どんどん地上が遠くなり、口をあんぐりあけて、切れた縄をもった左脳が、どんどん小さくなる。

やってみれば、あっけないことなのだ。
少しの勇気と、自分を信じる気持ちと、他責にしない覚悟。
それさえあれば、いつだって、どこへだって行ける。

結果は、気にしなくていい。
どんなことになっても、後悔はしない。
自分が精一杯、選んだことを信じる。
それが、最高の選択なのだから。



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