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一番の友達

親友と呼べる人が私にいるのだとすれば、それは確実に彼女だと思う。

高校の陸上競技部の同期の女の子。
高校3年間と、浪人して予備校に通っていた1年間をともに過ごした。
大学進学とともに彼女が地元を離れて5年半、気づけば隣にいた時間より離れている時間のほうが長くなっていた。

大学に進学して、卒業して、お互い働き始めてからも連絡を頻繁に取り続けて1年に1度は必ず会っている唯一の友達。
友達の少ない私にとって彼女は私の恥ずかしい過去を一番知っている人であり、私が表向きには見せていない影の部分をたくさん見てきた人である。
陸上競技のことで私がちょっとばかり名前を知られていた時期も、大学に進学してどん底に落ちた時期も、どちらの時期も私の心に寄り添って見守ってくれた人。
良いときも悪いときも私たちは、離れた場所にいようとずっと一緒だった。

仲良くなったきっかけははっきりと覚えている。
高校1年生のころ、朝練のメニューがフリーだったとき、たまたまジョグを始めたタイミングが一緒で話しながらジョグをしたのだ。
そのときに彼女がシーブリーズの話題を振ってきて、コスメの話に発展した。
そのジョグが終わるころにはすっかり仲良くなり、それからは練習で顔を合わせるたびにおしゃべりをしていた。

コスメは二人とも大好きだったし、価値観や考え方も似ている部分はあったけれど、共通の趣味がたくさんあるわけではなくて、時々意見が合わないこともあった。
それでもお互いの趣味や意見を押しつけ合うことはなく、特に大喧嘩もせず、一定のテンポで穏やかな関係を保ってきた。

陸上競技はもちろん、家族のことも、勉強のことも、悩みは真っ先に打ち明けていたし、一緒に悩んで一緒に解決方法を考えてくれた。
彼女も同じように私にたくさんのことを相談してくれたし、私も彼女がしてくれるように一緒に悩んで一緒に考えた。
嬉しいことも悲しいことも一緒に喜んだり悲しんだりした。

陸上競技部では彼女は私より先に引退したけれど、3年生の総体は一緒に同じ種目に出て一緒にアップをしたのが今でも大切な思い出だし、インターハイのときも全力で応援してくれた。
インターハイが終わってからは二人で進路指導室の前の廊下の自習スペースで隣り合って下校時刻まで勉強した。
暑い日も寒い日も、バス停で立ち話をしてから帰っていた。

二人とも第一志望の大学に落ちて、彼女が「はるえと同じ予備校に行く!」と言ってくれてコースやクラスは違ったけれど1つだけ同じ授業をとっていたので週に1回顔を合わせていた。
浪人した年は二人とも第一志望の大学に合格して、そのあと二人で頑張ったねと言って出かけた。

大学に進学してからもほぼ毎日連絡を取り合っていて、いつまでも話題は尽きなかった。
彼女も私も大学に入って恋愛をして、その話ばかりしていた時期もあるし、将来のことについて真剣に話をしていた時期もある。
その他にもコスメの話や、その日にあったちょっと面白いことなど内容は様々。
大事な話はもちろんくだらない話も二人ですればなぜか真面目になってしまう、そんなところが面白いなと思うし私たちはそれを楽しんでいる。

彼女の全てを知っている、なんてことは言えないし、それはきっとお互いさまだとは思うのだけれど、ずっと連絡を取り合っていても、ずっと一緒にいても、疲れや負担に思う気持ちが出てこないのはとてもすごいことだと思う。空気のような、いつもそばにいるけれどかけがえのない大切な存在。

私たちは会うときに特別なお店に行くわけではない、そのときの気分に合わせて行く場所を決める。
そういえば、あれ気になってたんだよね、ああ私もちょっと見てみたいな、食べてみたいな、そんな感じで過ごしている。
直接顔を合わせて話すからといって気合いを入れて話題を選ぶわけでもなく(時々LINEでは説明が難しい話をすることはある)、普段連絡を取り合っているときと特段変わらない。
お互い無駄な力が入らない状態で、互いを気遣い合いつつ、自然体で過ごしている。
ちょっと恥ずかしい話も彼女にならできるし笑って聞いてくれるし、その逆ももちろんある。
こういう友達は後にも先にも彼女しかいない。

今回彼女が帰省してきて会ったのだけれど、少し前に彼女がフェイススクラブを探していて、私がたまたま見かけたネットの記事を見せたら彼女が興味を持った商品があり、彼女の住んでいるところには売っているお店がなかったのでこちらで買おうということになっていた。
お店に行ってみると3本セットでの取り扱いしかなく、まずはお試しで使ってみたいから3本は多いかな、という彼女。
その商品は私も気になっていたので、彼女に一緒に買おう、まず1本ずつ分けて、今月(彼女の)誕生日だから、私が少し多く出して、残りの1本はプレゼントとして受け取ってもらえる?と提案した。
彼女はそれを受け入れてくれた。

他の友達だったらそんな提案はできなかったと思う。
相手が彼女だからできたのだ。
別の友達だったらそんな提案をしても気を遣って断られてしまっただろうし、そもそも2人でセットで販売している商品を分け合おうという発想にならなかったと思う。
(私も気になってるから1本ちょうだいなんて言えないかもしれない)
ちょっぴり変わっているかもしれないけれど、私としては、彼女との関係性を象徴するできごとだった。

これからも、離れた場所にいても距離を感じない関係でいたいね。

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