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できのいい子、ものわかりのいい子

変わった子、気難しい子、おとなしい子、内気な子、さまざまなことを言われてきたように思う。
幼い頃を思い出してみるとそれぞれ、思い当たる節はある。

一番言われてきて、一番引っ掛かっているのが
“できのいい子、ものわかりのいい子”というもの。
幼い頃から先生や周りの大人からそういう風な扱いを受けてきた。
これは自慢に思われるのかもしれないけれど、運動や芸術面は置いておいて、勉強に関してはさほど苦労しなかったように思う(高校の基礎レベルくらいまでは)。
大人の顔色をうかがって発言や行動をしていたので、(反抗期はあったが)基本的に大人を困らせるようなことはしなかったし、大人が“こうしてほしい”と思っているであろうことをくみ取ってその通りにしていた。
いわゆる“大人の事情”を理解していた、というと分かりやすいかもしれない。

授業中はろくに話を聞いていなかったけれど、やりなさいと言われたことはやったし、試験も特に問題はなかったし、うるさくしていたわけでもないので特に干渉されなかった。
先生と仲良くなりすぎると媚を売っていると言われるのも分かっていたので、先生と必要以上に関わりを持たなかった。
明るくて素直な、先生によくなつく子どもらしい子どもが好きな先生にはいい顔をされなかったけれど、きっと楽だったのだろう、何も悪いことは言われなかった。

いつもいつも、一歩引いたところから物事を見て考えていた気がする。

がむしゃらに頑張っているところを見せるのが大嫌いで、淡々と物事をこなしているのがかっこいいと勝手に思っていて(その発想がかっこわるい)、困ったことや分からないことがあっても人に頼ることがなくて、“できない”を隠すのが得意だったから尚更“できのいい子”と思われていたのだと思う。

どうせ大人はこうしてほしいと思ってるんでしょ、こういうことすると嫌なんでしょ、という冷めていて、ひねくれていた子どもだった。

正直、大人の思うように行動すると面倒なことに巻き込まれることが少なくて楽だった。でも、つまらなかった。

できのいい子、ものわかりのいい子、という風に見られるのは本当は嫌だった。
みんなのように素直に自分の気持ちをさらけ出してみたかった。
嫌われるのが怖かった。嫌だと思いながらも、できのいい子、ものわかりのいい子、を演じる矛盾している自分がいた。

「もっとわがままになっていいんだよ。好きなことをしていいんだよ」
中学3年生のとき、進路選択の時期に数学の先生に言われたこと。
その言葉で、私は他の先生方の反対を押しきって入りたい高校に入って陸上競技をすることができた。

「もっと俺に思ってること伝えてこいよ。悔しいとか、こういう走りをしたいとか、練習辛いですとか、何でもいいから。表面だけ綺麗にした言葉ばっかぶつけられたって何考えてるかわかんねえよ。俺にはかっこわるいとこ見せていいんだよ。いつも汗まみれ砂まみれになって走ってるとこ毎日見てんだからそんくらい何とも思わないよ。」
高校の部活の顧問の先生から言われたこと。
この先生の前なら言いたいことを素直に言っていいんだなと思った。
それまでは前向きな話題ばかり並べがちだったけれど、不安や自分の心の弱さも話せるようになった。

私はいまだに人に本音を話すのが苦手だ。
基本的におしゃべりが好きなのでくだらない話はたくさんするけれど、大事な話をするのが苦手だ。
必要以上に空気を読んでしまうし、タイミングをうかがっているうちに話さなくてもいいや、と思ってしまう。

“できない” を見せるのも苦手だ。
心の中で“できない” ということに対する恐怖があるのだと思う。
どこかで似たような経験があると何となくやってみて、何となくできてしまうし、やったことがないことは最初は教わるけれど迷惑をかけたくない意識から、一度教わったら上手な人の見よう見まねで頑張ってしまう。できているように見せてしまう。
迷惑をかけたくない思いで頑張るけれど、他の人がみっちり指導してもらっているのを見ると少し羨ましくなる矛盾。

「こうしたい!」という主張をするのも苦手だ。
波風をたてるのが怖い。
どういう風な立ち位置で、どのように動くことが求められているのか察してその通りにしてしまうから、自分の主張はほとんどしない。
それで褒められたこともあるけれど、損をしたことのほうが多い気がする。

本当はいい子じゃない。
心の中はどろどろしている方だと思う。
言わないだけで心の中で思っていることは人並み以上にあると思う。
言わないと伝わらない、そんなことは分かっているのに。
心の内を見せて深刻な空気になるのが怖くて、迷惑をかけず、ささっと色々なことができるようになれる人になりたくて、その場の空気を読んで求められていることをさらっとこなしてしまう人になりたくて。
一緒にやっていて負担が少ないって思われたいのに、なんだか、ちょっと寂しくなる、虚しくなる、矛盾。

いつまでも自己主張をあまりしない、できのいい子、ものわかりのいい子、として振る舞いたくなんてないのに、気づけばそんな風に振る舞っている。

もっと素直に、わがままに、なりたい、のに。
なかなかうまくいかない。

*久しぶりのnote、何も解決していないけれど、思ったことを書きました。
読んでくださってありがとうございました!

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