お金を貸した話

私は滅多にお金を貸すことはないのだけれど、最近珍しく人にお金を貸すことがあった。今日はその時の話をしたい。

家に帰り夕食の準備をしていると、祖母から突然
「ひみちゃんはお金ある?」
と聞かれた。お金がないのを心配してくれているのかと思い、お小遣いでもくれるんだろうかと少し期待しながら
「お金ないよー」
と答えた。すると祖母は
「じいちゃんとばあちゃんは金欠病や」
と何度も繰り返し始めた。
「そっかぁ」と答えると、
「ひみちゃんはお金あるの?」
とまた尋ねられた。
「ないよ」と答えるとまた、「ばあちゃんたちは金欠病やわ」と繰り返す。
「……どうしたの?」
私がそう尋ねると、祖母は
「食費が足りないから、ひみちゃんから借りようかと思ったんやけど、ひみちゃんもないなら仕方ないね」
と言う。
しかし、「仕方ないね」と言いながらも、何度も何度も、「金欠やわ」と私に聞こえるように繰り返すものだから、私は自分の部屋に戻り、財布から1万円札を取って戻った。
「はい」
1万円札を祖母に渡すと、祖母は遠慮がちに
「いいの?」
と私に聞いた。
「うん」
祖母にはいつもお世話になっている。別に返してもらえなくてもいいだろう。この瞬間まではそう思っていた。
「お父さんに言う?言わない?」
「え?」
私が聞き返すと祖母は
「お金貸したこと、お父さんに言う?」
祖母はしきりに私が父にお金を貸したことを言うか尋ねてくる。
「言わないよ」
私がそう言うと、祖母は安心した顔をした。
「ひみちゃんから借りたなんてばれたら、お父さんからやけらるる(怒られるからね)、絶対言わんとよ、やけらるるからね」
 なんか、わざわざ口止めされると嫌な感じ。
「使わなかったら返すからね」
 続けてそう言われて、祖母はどうやら私から1万円をもらったと思っているらしいことに気づいた。本当に図々しい。元々は、貸すという話ではなかっただろうか。
さらに祖母は聞いてもいないのにいらないことをどんどん話し始める。
「パチンコはね、じいちゃんのボケ防止に行かんといけんからね、じいちゃんにやけられたらぼくじゃわ(怒られたら大変だ)」
聞いてもいないのにパチンコに行く言い訳にもなっていない言い訳をしないでほしい。
「財布にいれとくと使うから、ここに入れとくわね」
と祖母は台所の引き出しに1万円を入れて、なにやらぶつぶつと言い訳しながら出ていった。

以上が私がお金を貸した時の話だ。本当に馬鹿だった。感謝してもらえるかもとか期待した私が馬鹿だった。もう一生祖母にはお金を貸したりしないと、私は心に固く誓った。最初から返ってくることなんて期待してなかったけれど、こんな嫌な気持ちになるくらいなら貸さなければよかった。本当に本当に、もう絶対に祖母にはお金を貸さない。

ちなみに、貸した1万円は後で5千円とすり替えておきました✌

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