見出し画像

障害者の兄弟を持つあなたへ

このnoteを書こうと思った理由は2つ。
・「きょうだい児(=障害者を兄弟姉妹に持つ人)」自身が書いた記事ってそんなにない。→自分の経験を書くことで、誰かの力になれるかも?
・シンプルに今自分の考えていることを記録として残したい!

自分の経験が、何処かの誰かや未来の自分の知りたいことなら、と思いシェアします!

-----------------------------------------------------------------------

目次
・実際に経験したこと
・やってよかったなと思うこと
・最後に


あなたの周りに自閉症を持つ人がいたことはありますか?

いまだに自閉症は理解が難しい障害の一つです。(障害、と言うより特徴、と言ったほうがしっくりきます。)それがゆえに、自閉症患者の家族は孤立しがちです。

3歳違いの私の兄は、自閉症です。これまでいろいろなことを経験しました。
先が見えず不安だと思います。家族のことも、環境も、憎み、恨むこともあると思います。

辛さは、他の人と比べられるものではありません。

辛いなら辛いと言ってください。
できるだけ、周りの人に頼ってください。
もし、頼れるほど信頼できる人がいなければ、自分だけは自分を信じてあげてください。

必ず信じ続けてほしいことがあります。
あなたは幸せになるために生まれて来た、と言うことです。

・実際に経験したこと

一番辛かったこと。それは、家族が「自閉症」と言う名前を受け入れられず、兄を否定し続けたことです。
「働かない奴は飯を食うな」「大学に行かないのなら出て行け」「なぜ普通にできない」
両親は、大学に行けず、引きこもる兄を責め続けました。

兄は、大学に行かなかったのではありません。行けなかったのです。
親に友達を作れと言われ、サークルに入る。けれど、うまく人と話せない兄は無視されます。
どれだけ頑張っても、空回りします。見えている世界が違うのです。
「友達を作れ」と言われても、したくても、できないのです。
勉強も、周りの人とはスピードが違います。
IQ自体はとても高いのですが、偏りが大きく、周りと合わせることができません。

もし今あなたが思春期なら、学校で友達に知られるのが恥ずかしいかもしれません。そして、家族を恥ずかしいと思ってしまう自分が、とても嫌かもしれません。

誰も悪くないはずなのに、家族を周りに言えない自分、兄を憎む自分が嫌でした。
そして、弱音は家族にも吐けませんでした。両親は、兄のことでいっぱいいっぱいだったからです。
友達に話そうにも、話そうとすると喉につかえ、何も言えませんでした。

徐々に兄の状態は悪くなっていきます。
24時間家の中で歩き回る、独り言を言い続けるのは当たり前。前触れもなく物を壊す。叫ぶ。
兄が殴った痕で家中の壁が壊れていました。
周りから責められ、兄の心は行き場を失っていました。

兄が母を殴ったことがあります。
その日も、母は兄を責めていました。「いい加減にしなさい」「こっちがどれだけ苦労してると思ってるんだ」そんな内容だったかと思います。
突如兄がキレて、母を殴っていました。

兄の目は正気のそれとは違っていました。私は、どうしていいかわからず、仕事中の父に電話をして、帰ってきてもらいました。

とても怖かったです。殴ったこと自体もですが、兄が兄ではなくなったことが、です。
もともととても優しく、真面目な兄でした。暴言を吐くところも、それまで見たことがありませんでした。
年老いていく両親、力の弱い私。次に何かあったら、もうどうにもならないのではないかと、私は感じ始めました。

同時にお金のことも不安でした。
力で頼れるのは父だけです。頻繁に家に帰らないといけなくなれば、職を失ってしまうのではないか、と思っていました。

その後もいろいろなことがありました。
兄が椅子を振り回し、窓ガラスを粉々にしたこともあります。その時は警察が来ました。そのまま兄は、精神病棟に連れて行かれました。
その日は私の19歳の誕生日でした。

包丁は目立たないところに隠されました。
もちろん家族で出かけることなどありませんでした。
家族と仲がいい友達の話は、聞きたくありませんでした。

母は、よく一人で泣いていました。
私は、ずっと自分は辛くない、と思っていました。辛いのは父や母、そして何よりも兄だと思っていました。

・やってよかったなと思うこと

私が自分なりに「これは良かったな」と思うこと。それは、「様々な専門家に相談すること」「私が家を離れたこと」の二つです。

・合う専門家を探す
身近な障害ではないため、周りに相談ができません。特に、当時はインターネットもまだ身近ではありませんでした。
それ故、家族でなんとかしようとしていました。
誰にも相談できない。誰にも頼れない。その結果、不安と焦りばかり募り、家族で兄を責めると言う最悪の構図が生まれたと感じています。

結果的に兄の心に寄り添ったのは、カウンセラーの先生でした。
カウンセラーといっても、誰でもいいわけではありません。合う合わないがあります。ただ、大切なのは、「家族だけでなんとかしようとしない」ということです。

確かに、学校に行けない期間は不安だと思います。友達ができなければ、心配すると思います。
一人で考えていたら、沼にはまって出てこれません。結果、矛先が弱い人に向きます。その矛先は、同時に自分の心も傷つけます。

もし学校に行けなくなったとしても、大丈夫です。人生は長いです。
当時私も、「このまま兄はどうなるんだろう」と思っていました。
けれど、今はなんとかなるだろうと思っています。
障害者が働ける施設はあります。家族以外で、助けようとしてくれる人はいます。

もちろん、全員ではありません。施設で、兄が心を開き始めた職員の方がいきなり辞めたり、「努力が足りないだけだ」と言われたり、一歩進んで二歩下がるようなこともたくさんありました。
しかし大切なのは、家族だけで背負いこまないことです。障害を持つ人が生きていくには、社会と関わる必要があります。
いろいろな人に頼って、相談してください。
いきなり誰にでもいうのは無理な話です。突然家族が自閉症だとわかって、オープンに周りにいうにも時間がかかります。当たり前です。
できる範囲でいいです。掲示板に匿名で書くのでもいいです。
まずは、自分が辛いことを認めてあげてください。自分を大切にしてください。周りに頼って欲しいです。

ガスが抜ける逃げ道を作ってあげれば、世界が広がり、少しずつ希望が見えてくるはずです。

・兄弟が家を離れる
私、つまり妹が家を出たことはかなりのキーポイントでした。理由は①親の負担が減った②問題を客観的に見れるようになった、の二つです。

一つの家で4人暮らし、怒鳴る両親と暴れる兄、私も家族に当たってしまうことが毎日ありました。
両親は私に対して「申し訳ない」と思っていて(いつも両親は兄の問題を親だけで解決しようとしていて、私はそれが不満だったりもしました)、家にいた時は私の生活のことも考えてくれていました。
それが、私が大学に入り一人暮らしをはじめ、実家は兄の生活に合わせてカスタマイズされたりしました(細かいところは省きますが…)。

そして②つめ、「問題を客観的に見れるようになった」こと。これは、私が母の相談役になれるようになった、というのが大きいです。
家にいた時は、私自身もいっぱいいっぱいで、話を聞けるだけの余裕がありませんでした。
しかし、家を離れて数年経つと、母の話を「うんうん」と聞けるようになりました。そして、兄や自分自身を責める母のよき話し相手に、徐々になっていきました。(例えば、兄が買い物に行って財布を忘れ、母が怒っていた時、「買い物に行こうとしてくれたことはシンプルに嬉しいことだよね」など。)

これらは全て、「距離をとったことで精神的な余裕が生まれ、外部からのサポートが可能になった」からではないか、と思っています。
やはり、子供にとって大切なのは親との関わりです。親が余裕を保つために、兄弟である私が家を出たことは、結果的によかったと思っています。

・最後に

一つ、大事にしてほしいなあ、と思うこと。周りの人を大切にすることです。

私は人生にはフェーズというものがあると思っています。
中学生の時、まだ10代だった私は、人から優しくされても素直に受け取れませんでした。自分がいっぱいいっぱいの時、周りを大切にしようと思ってもなかなかできないものです。
けれど、人生のポイントで、思いがけず自分の糧になる出来事に出会うことがあったりします。

その時、できる範囲でいいので、周りの人を大切にしてください。
信用できない人ばかりだと思います。何もわかっていないくせに、と思うかもしれません。
けれど、人と生きることは、あなたの人生に色を与えてくれます。
まずは、自分を大切にしてください。次に、できる範囲でいいので、周りを大切にしてください。
振り返った時、築いたものがあなたにとっての進む力になるはずです。

もちろん今、全てが解決したわけではありません。課題だらけです。
兄も調子のいい時ばかりではありませんし、やはり一歩進んで二歩下がるの毎日です。
それでも、兄が施設の同級生と話したり、みんなで劇をやってみたり、何かできることが増えていく兄を、私は誇りに思います。

兄が一人暮らしができる日が来るのでしょうか。自分で生活ができるくらい、お金を稼げる日が来るのでしょうか。
そうなればいいな、と思うけど、今はまだわかりません。
たくさん遠回りをして、たくさん兄を傷つけてきました。自分がしたこと、できなかったこと、今でも責任を感じます。それは、この先も背負っていくものだと思います。

誰にも言えないこともありますよね。私も、兄が犯罪を犯すんじゃないかということが、一番不安でした。行き場のない葛藤や不安が、いつか外に向いてしまったらどうしよう。そんなこと、誰にも言えませんでした。

味方になってくれる人は、全員ではありません。けれど、あなたが探し続ければ、必ずいます。

どうか、世界は終わりだと思わないでください。
見捨てられたと思わないで。
あなたが、少しでも明日を楽しみにする日が来ることを、心より願っています。

------------------------------------------

本を買います、って言える知的な人になりたかった。多分あれこれ使い道を夢見たあとに貯金します。