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中国料理「宇宙」

このお店を知ったのは2年程前。自転車乗りの仲間がTwitterで「宇宙」という店がある、と呟いていた。変わった名前だなぁと思いつつマップで確認するとすごく魅力的な風貌のお店で、すぐに「行ってみたい」のピンを立てたのだった。

結局実際に足を運ぶことができたのは昨年暮れ、2023年の12月23日のことだった。
この日は早起きできたら奈良方面へサイクリングに行こうと考えていた。だが案の定というか金曜の夜更かしが祟り起きた時には既に昼前だった。
奈良方面へ行くのは諦めたものの、自転車で散歩したい気持ちはまだ生きていたので、どこか近場で行くところはないものかともはや緑のピンだらけで地図が見えなくなってきているGoogleマップを開きすいすいとスクロールしていった。
その時偶然目についたのが「中国料理 宇宙」だった。

家からそんなに遠くない場所だったが、道が少しややこしく少し迷った後にお店に辿り着けた。そこにはGoogleマップで見たままの、いやそれ以上に自分好みのお店が佇んでいた。

古き良き町の中華屋さんというのがしっくりくる外観、色褪せた食品サンプル、今の時代とは思えない価格設定、謎だがなんだか笑みが溢れそうになるロゴマーク、全てが心地よい雰囲気を醸し出している。


駅近でもないし昼時も少し外したし空いているだろう、と勝手に思っていたが意外にも前に並ぶ人がいて15分くらい待ってお店に入る。
メニューは結構たくさんあり、少し迷ったものの、初めてのお店なのでオーソドックスに普通のラーメンと焼きめしを注文した。

料理を待つ間に他のメニューも見てみる。ラーメンやご飯ものも多様だし、一品料理、揚げ物、スープなどもある。すごい。これは通い甲斐があるなぁだとか、次はこれを食べてみたいなとか、この時の私は呑気にふわふわとあるだろう未来を頭に描いていた。

ラーメンと焼きめしが来た。
しみじみと美味しい。なんだか優しく安心する味だった。お店の雰囲気とも合っていて、いつもは結構中華はサッと食べてしまうところをかなりゆっくり食べることができたんじゃないかと思う。
「また来よう」と思いながらしばし店内の余韻を楽しんだ後席を立った。
お会計をして一言二言何か言葉を交わした記憶があるが、何を言ったかははっきり覚えていない。
自分のことだろうから「美味しかったです」「また来ます」くらいのものだろうけど、後者は言ってなければ良いなぁと今になって思う。どうだっただろうか。言ってしまっていただろうか。

「宇宙」のフォントがかわいい

また行きたいと思いつつ、これを書いている3月になるまで行く機会がないままだった。そもそも近いとはいえあまり行かない方向にあったからというのもある。
osusume_spot記事に是非とも書きたかったが、もう少し色々なメニューを食べてからしっかり書きたいなという気持ちもあった。

そして今日、3月19日。それに気付きしばらく呆然としてしまってた。

え? としばらく思考が止まってしまった。しばらくしてTwitterで検索してみる。何かの間違いであれと思いながら……

中国料理 宇宙は2023年12月29日に閉店していた。
46年間、あの場所で営業していたらしい。

私が訪れたのは23日だからギリギリのタイミングだった。あの日、早起きできていればおそらく行けてなかっただろう。

悲しいような、でも一度でも行けて良かったような、なんともいえない気持ちで今これを書いている。
たった一度訪れただけの自分が残念がるのはなんか違うなという気もする。特に調べずに閉店予定を知らずに訪れた上に、その後また行こうとは思いつつも3ヶ月くらい行かなかったことも事実で、それこそ今日まで閉店したことすら気付いていなかった。大変失礼である。
それでも「また行きたかったなぁ」という気持ちがある。一度だけでも好きになったお店だった。自分で行ったり、友達に教えたり一緒に行ったりしたかったなと思う。

「推しは推せる間に推せ」とはよく言ったもので、良いと思ったお店や、お店に限らずなんでも発信すべきだなぁと改めて思った出来事だった。
このosusume_spotの記事も一応そういう想いで書いているので、今後も細々とでも続けて行けたらと思っている。

今回の記事は本来osusume_spotに載せるべきではないかもしれない。
でも確かにそこにあったおすすめのお店として、記録しておきたいと思う。

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