1208「絶対見とくべきだったのに」

いまや「世界の工場」と言っても過言ではない街である深圳を訪れるのは初めてのことなので、超楽しみにしていた。仕事の用も含め、さっそく、世界最大の電気街でもある華強北方面に向かった。仕事を済ませ、Seeedが出しているメーカーズ向けの深圳マップを手に華強北の電子ビルディングに向かった。

「どうせ秋葉原のラジオ会館のでかいやつみたいな感じだろう」と思っていたのだが、それはその通りで、全体的に秋葉原のラジオ会館のでかいやつな感じなのだが、思ってたんと違うのはその「でかいやつレベル」だ。百貨店のような大きさのでかい建物の中に、そういう類のお店が詰まりに詰まっていて、そしてその建物が何十個もあるような感じで、街全体、これでもかこれでもかこれでもかという具合に怪しい携帯から謎の部品のバルク売りまであらゆる電子製品・部品を売っている。とても1日で見て回ることはできない。ぜんぜん違うけど、そのスケール感という意味で、ルーブル美術館に似てると思った。

BASSDRUM(会社)の総会で見せるため、あるいはこういった電子ガジェットに目がないうちの父へのお土産いするために面白いものがあれば買っていたのだが、同時にそこに並ぶお店やそこで物を売る人々を観察した。そして、すごく大事なことに気づいたので「あ、これは日記に書こう」と思ったが、すごく重厚なテーマになりそうな気がしたので、「あ、これをFINDERSの連載に書けば良いんだ!(昨日の日記参照)」と思って、温存することにして、記事向けに写真と映像を撮りまくった。よかった。これで記事が書けるかもしれない。いわゆる日本人が深圳や中国を訪れると受けがちがカルチャーショックとはまた違う何かに気づいた気がする。

それにしても、子供の頃から電気屋というものが好きだ。電気屋にはいつも、最先端の新しい何かがあるし、工夫があるし、トレンドがある。画質が良いでっかいテレビがある。新製品の匂いがする。だから電気屋の祭典ともいえるラスベガスのCES(もともと国際家電製品見本市・最近はその略称ではない?)なんかはすごく好きなイベントだし、仕事にかこつけたりかこつけなかったりして、ここ2年連続で行っている。来年頭のやつにも、BASSDRUM全体で行くことにしている。自分にとっての深圳とは、CESにどさーっと立ち並ぶ海のような量の深圳ブースだ。

去年はCESのこんなレポートも寄稿した(むしろ、このへんの記事を書くという名目をでっち上げてCESに行った)。

深圳の会社のブースには、大手の商品を焼き直ししたものから見たことがない変な形状のおもしろ商品、OEM受注の商品や細かい部品に至るまで、様々なものが並んでいるが、1つ不満があるとすると、CESは見本市なので、物を買うことができないのだ。実際に、深圳ブースの人たちも深圳から在庫を持ってくるわけではなく、BtoBの新規顧客の開拓を狙ってきているので、CESではその必要はない。
しかしCESと同様に海のように店が立ち並ぶ本家の深圳では、当たり前だがそういったものが売り物として売られているので、購入することができてしまう。深圳ゆえに、支払いが全部キャッシュレスで簡単というのものあり、なんだか知らないうちにいろいろ買い込んでしまう。変な目のマッサージャーから、Appleのうどんイヤホンのパチモノ、バーサライトで映像表示するものまで、いろんなものを購入してみた。

さて、深圳というと、ここのところ話題なのが、複数のビルにLEDを仕込んで街全体で映像ショーを見せるというやつで、これはこの年内開催されている特別なものだ。いろんな人が話題にするので、私も仕事柄もあるし、めっちゃ見たかった。街全体で映像表現するとか、そっち系の企画の中でも妄想したことはあるし、実際に目にしたらめっちゃすごい違いない。
人様のYouTubeだが、これだ。

明日は上海に戻るので、今日が最後のチャンスだ。

ところが、私はたまにエラーを起こしてそういうことをしてしまうことがあるのだが、今回も悪い癖が出て、こんなことを考えてしまった。「こんな、みんなが見に行くようなものを見ても、他の人と同じことを感じて考えるだけだ。ここで『あえて見ない』ことによってそのぶん他の体験をしてこそ、自分はユニークになれるのではないか。いや、自分みたいなつまらない人間はそのくらいしないとダメなんじゃないだろうか」。
そんなことを自家中毒的に思い出すと止まらなくなってしまい、今を逃したら二度と見ることができないはずなのに、ずっと楽しみにしていたのに、見なかった。かなり後悔している。見たかった。

みんなにも読んでほしいですか?

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