1129「ここ数年で一番うまかった食い物」

朝から飛蚊症みたいなミジンコピンピンが激しくて悩ましい。面倒だけれど病院に行かなければならない。明日病院に行こう。気になるが、あんまり気にしすぎると仕事にならないのでがんばるしかない。今日は朝からロンドンのPR会社の人が来ていて、今後の英語圏での営業に関してヒアリングをしたりした。例によってブリティッシュ英語なんで、たまにわからなくなってしまって落ち込んだ。

私は放っておくと過食になってしまうところがあって、なぜ食うのかというと、食っている間は他のことを考えなくて良いからなのだと思う。人と食事をするような場合は、家族以外だと、基本的には何を食っているのかよくわからなくなる。人との会話がメインになるので、味だのなんだのは副次的なものになってしまう。
なので、人との食事は、私にとっては食事ではない。
もちろん人と食事をすることはある。それが嫌だというわけではない。ただ単純に、一人の状態で集中する食事と人との会話の副次演出としての食事は、ジャンルが違うのだ。

というわけで、とにかく1人で食ってしまう。1人で食う飯はうまい。ついでに言うと、1人で飲む酒もうまい。なんていうか、飯であれ酒であれ、向精神薬的なものだと捉えると、1人で摂取している方が薬効がある、という感じがする。
日本に帰ったとき、地元の桜新町の安い焼鳥屋なんかで1人で唐揚げとかを食いながら、隣でしゃべっているサラリーマンの上司の愚痴とかを聞きながらハイボールを飲ったりするのは最高にうまい。

しつこいようだが、「あのときの飯とか酒はうまかったな」というのは、基本的に1人で食ったり飲んだりした場合で、他の人と食ったり飲んだりした場合は、主体が飯とか酒じゃなくて、「あの人と飲んで楽しかったな」とかになる。あるいは、もうめっちゃいい酒を飲んでいるような場合、たとえば「森伊蔵・洞窟仕込み」みたいなレジェンダリーな焼酎を飲っているような場合でも、一緒に飲んでいる人がずっと自慢話ばかりしていたら森伊蔵も洞窟仕込みもあったものではない。この野郎、洞窟に謝れ、と思う。

この数年で食ったうまいもの、といえば、これだ。
上海出張に行ったとき、外灘の場末のバーみたいなところで1人で飲んでいたら、45歳くらいの売春婦の方がしつこく話しかけてきたので、逆に相手が面倒くさくなるまで質問攻めにしようと思って、筆談で彼女が安徽省から来たとか、家は農家だのなんだの聞きまくって、狙い通り諦めてもらったのだが、その後にその売春婦は隣にいたドイツ人のところに移動して、ドイツ人を誘い始めた。

そのドイツ人が、その売春婦に「しっしっ」みたいな感じで邪険な態度を取った。その段階で私はわりとぐでんぐでんに酔っていたので、なんか怒りがこみ上げてきてしまって、そのドイツ人に「この人を邪険に扱うな! この人は安徽省から出てきて苦労して・・・お前安徽省がどこにあるかわかってんのか」みたいな感じで説教をし始めた。で、そのドイツ人が「こいつやべえ」みたいな感じで逃げて、なんか知らないけど売春婦の方も店から追い出されて、私だけが店に残されたときに、お店の人が出してくれた「何かの食い物」がめっちゃうまかった。

酔ってて何を食ったのか全く覚えていないんだが、「うわーこれうめええええ」って思ったところから記憶がなくって、目覚めたらホテルの床に倒れていた。食感も味も何も覚えていないが、とにかくおいしかったことだけが残っている。

翌日は数年に一度レベルの二日酔いで、空港に行くリニアモーターカーが高速すぎてめちゃくちゃ気持ち悪くて空港のトイレで2回吐いたのを覚えている。たぶん、その吐いたものの中に、あのめちゃくちゃうまかった何かが含まれていたに違いないのだが、今となっては確認する術もない。

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